孫が綴る佐藤愛子さん102歳の姿「祖母の期待する《佐藤愛子の娘》の役割を果たそうとし続けた母。佐藤家の情念の強さは受け継がれ…」【漫画】
102歳を迎えた作家の佐藤愛子さん。100万部突破の『九十歳。何がめでたい』(2016年、小学館)をはじめ、ユーモアエッセイで長く人気を博しています。百寿者とは思えぬ仕事ぶりの一方で、家族からみた佐藤愛子さんの姿とは。孫の杉山桃子さんがコミックとエッセイで描く『婦人公論』の連載「うちのばあさん102歳」。第14回目は「母の願い、娘の願い」。
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母の願い、娘の願い
母の祖母に対する感情は非常に複雑なもののようである。祖母は自分の尊敬する父である佐藤紅緑になりたかった。
紅緑になるために、祖母は娘に「良き妻」で「かわいい娘」かつ「世話焼きのばあや」であることを求めた。
一つ屋根の下、たった一人の家族である。母親しか知らない母は、求められる役割を果たす生き方しか知らなかった。

私を産むまでの母の人生を見ていないからあくまで想像だが、結婚した時に母は「佐藤愛子の娘」以外の自分がいることを知ったのだろう。
「杉山響子」は「佐藤愛子の娘」がいかに「佐藤愛子の娘」以外の自分を奪われていたのかに気づいた。母は祖母の横暴を嘆き、時には恨みの言葉を吐いたが、それでも母親のそばを離れなかった。
佐藤家の荒ぶる血
祖母は「佐藤家の荒ぶる血は情念の強さだ」といったことをよく言ったものだが、その情念は母にも親子の情という形で引き継がれたようである。
自由を奪い続けた母親を恨みながらも、苦難を共に乗り越えてきた母親を突き放すことはできなかった。
母はギリギリまで、祖母の期待する「佐藤愛子の娘」としての役割を果たそうとした。

祖母の介護施設への入居というのは、母にとって「佐藤愛子の娘」から「杉山響子」になるための通過儀礼だったのかもしれない。
それでもなお、「佐藤愛子の娘」である責任は強く感じているようであるが、母は佐藤愛子の娘である以前に杉山響子である。
母親の人生の《養分》として生きるのではなく、自らの人生を生き切ることがこれからの親孝行であると思ってほしい。それが子としての私の願いである。
