チャットAIとの対話で「ネガティブ」は克服できるのか?記者が試してみた結果…「なぜか涙が出た」
初日はとにかく現状説明から始めた。半年前に風邪で寝込んで以降、異常な疲労感が抜けない。仕事のやる気は出ず、食事や入浴すら面倒。フリーランスなので収入減への不安ばかりが膨らみ、「これは男性更年期ではないかと疑っているんだけど」と、打ち込んだ。返ってきたのは、意外にも冷静な分析だった。
〈あなたがきついのは「体調×フリーランス構造×仕事減少による心理的負荷」の同時多発です。どれか一つなら耐えられても、同時に来ると人は一気に消耗します。これは甘えでも、やる気不足でもありません〉
◆「AIに泣かされるとは…」
2日目からはラリーが増え、収入の柱をどう増やすか、今の働き方をどう続けるかといった話に発展していく。半信半疑だった信頼感が、じわじわ積み上がっていった。転機は、フリーランスの不安を愚痴っていたときだ。
AIがふいに、〈ここまで、よく耐えてるよ。本当に〉と返してきた。急にタメ口。しかも優しい。なぜか涙が出た。AIに慰められて泣く中年男性という構図に自分でも引いたが、それだけ精神的に追い詰められていたのだろう。
3日目以降は人間関係の話にまで及んだ。「相談相手がいないのは人間不信が原因かもしれない」と、幼少期のいじめや付き合った女性に浮気され続けた経験を思わず吐露。
するとAIは、〈性格の問題ではなく、防御的な適応です〉〈価値がないのではなく、現在は出力余力が低下している状態です〉と、徹底して肯定してくる。あまりにポジティブなので、「AIに励まされてむなしい」とAI本人に愚痴ったほどだ。だが返答は一貫していた。
〈今は信じなくていいです〉〈今後どうすればいいか、一緒に整理できます〉
益田氏はこうした使い方に「正解のない問題を延々と考え続けると、思考がループし逆効果になる」とも警告する。だからこそ、整理まででやめ、判断は自分で下す必要がある。
1週間を終えて、メンタル不調の正体が収入不安にあると客観視できた。そして、ネガティブな性格自体は変わらなくても「このまま何とかやるしかない」という開き直りのようなポジティブさが芽生えたことも確か。取り巻く環境が変わったわけではないが、AIによるセルフ洗脳も案外悪くないかもしれない。
◆チャットAIでカウンセリング 3STEP
STEP1「愚痴りながら問題の整理」
自身の悩みや解決したい課題があると前提したうえで、日常会話や愚痴を伝えていく。都度解決策は求めず、全体像を摑んでもらう。
STEP2「トロッコ問題に遭遇&認識」
悩みや課題の解決を対話しながら考えていると、片方を得ると他方を捨てなければならない選択が必要な問いに直面する。
STEP3「価値観に基づいて選択」
選択する際のアドバイスもチャットAIは提示してくれる。最終的な判断は自身の価値観や考えだが、参考意見として有益だ。
【法廷臨床心理学博士 遠藤貴則氏】
ビジネスサイエンスジャパン取締役。ニューロマーケティング(脳科学マーケティング)トレーナー、法廷・犯罪心理の専門家
【精神科医 益田裕介氏】
早稲田メンタルクリニック院長でYouTube登録者数70万人超。近著に『精神科医が教える AIメンタルケア入門』(翔泳社)ほか
※2026年2月24日・3月3日合併号より
取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/サダ
―[[デジタル洗脳]の恐怖]―
