後半、足の止まったフェイエノールトに対し、スケールの大きな塩貝のアクションは効果てきめんだった。チームメイトは試合後、「健人のような爆発力、スピードを持ったFWを、自分は見たことがない」(MFシェリー)、「健人くんの能力は練習から見てきているので、今日のゴールは、自分は驚かないです」(佐野)と述懐した。

 今から1か月前の塩貝は浮かない表情をしていた。舞台はKNVBカップ1回戦。アマチュアチームのラインブルフセ・ボーイズ戦で、4試合ぶりの出場機会を得たが不発に終わった。

――あの試合後、「メンタルがキツイです」と言ってました。

「あそこで完全に落ちちゃった。あの試合が自分にとってラストチャンスだと思っていた。リーグ戦で4試合出てなかったし、控えストライカー(エル・カチャティ)も活躍していた時期だった。『慶応(大学)を辞めて、横浜F・マリノスの内定を蹴って、ここに来たのに、アマチュア相手に点を取れなかったら、オランダにいる意味もない』と思ってました。しかし、あの試合で彼(エル・カチャティ)が負傷したことで、自分のチャンスがまた回ってきた。やはりチーム内での序列を変えるのはけが人が出たときとか、調子の悪い選手が出たときとか。色々と重なったことで今日は2得点できました。パーフェクトではないですが、上出来だったと思います」
 
 1年半前のNEC入団時。「エールディビジの得点を狙います」と宣言した塩貝は、フェイエノールト戦後、久しぶりにその思いを口にした。

「次のスパルタ戦は、相手にまた日本人選手(MF三戸舜介)がいます。そこでまた結果を残したい。今、2試合連続でゴールを決めているので、先発・途中出場関係なくゴールをまた決めて、得点ランキング1位を目指したい。今、自分は5得点なので1位(13得点の上田)とはだいぶ差がありますが、そういう選手もどこかでペースが落ちるはず。自分は270分ほどの出場で5ゴール(およそ55分に1点のペース)。このペースをもっと上げて、スタメンで試合に出て継続的にゴールを決められるようになれば、1位が見えてくる」

 その思いの向こうには来年のワールドカップがある。
 
「目指しているところはワールドカップ。その覚悟を持って慶応を辞めてマリノスの内定も破棄してこっちに来た。こっちの一人暮らしは大変だから、誰もなにも言わないんだったら、日本に帰って慶応に通っていた方が楽です。でもやっぱりワールドカップのためだけに頑張れるし、それを応援してくれる家族もいる」

「慶応が2部に落ちてしまいましたが、みんなから刺激をもらってました。僕はいろんな人の思いを背負ってこっちでやっているので、ワールドカップに出ることが恩返し。ワールドカップだけではなく、個人としてもステップアップしていく必要もある。まずは3月、日本代表に呼んでほしいです。3月の代表戦で結果を出して、ワールドカップに行く。そして、呼ばれるだけではなく自分が主役になる――。そのことを毎日、イメージしています」

 オランダリーグ2シーズン目の塩貝は通算9ゴール。データに詳しいバルト・フラウス記者は「塩貝がエールディビジにデビューしてから決めた9ゴールはすべて途中出場によるもの。これはリーグ新記録」とSNSに挙げた。

 今回はフェイエノールト相手に、昨季はPSV戦でゴールを決めた塩貝は「自分はどちらかと言うとビッグゲームに強いと思います」と言い切った。このストライカー、背丈は高くないが、スケールは大いにある。

取材・文●中田徹

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