そう長谷部監督は振り返ったが、74分には攻撃に彩りを加えていたボランチの山本悠樹に代えて強度を高められる橘田健人も投入。ひとり少なかっただけに仕方ないが、守る川崎と、攻める柏という構図はより色濃くなっていく。

 一方、かさにかかって攻める柏は、疲労などを考慮して切り札として控えさせていた仲間隼斗らさらに攻撃のカードを切っていく。結果的にリカルド・ロドリゲス監督の采配はズバリ当たった。

 73分に仲間、77分に細谷に決められてトータルスコアで同点に追いつかれた川崎は、キーマンたちを下げていた影響で攻撃の形を作れなくなり、後半アディショナルタイムに再び細谷に決められて力尽きた。

 川崎にとっては苦しい台所事情も影響したと言える。春にサウジアラビアで開催されたACLエリートでは決勝で敗れ、その後の過密日程で川崎に疲労はたまっていた。

 柏との準決勝・第1戦ではフル稼働していた左SB三浦颯太が怪我に倒れ、復帰戦となった10番のMF大島僚太も再び負傷。さらにCB陣はベテランの丸山祐市が長期離脱中(右膝内側半月板損傷)で、ジェジエウ、車屋紳太郎も不在。夏には高井幸大がFW山田新とともに海外挑戦を決め、その穴をカバーするためにキーマンたちへの負荷は高まっていた。CB佐々木も今回の柏戦の終盤は足を引きずるような姿も見せていた。

 そのなかで課題も修正できなかった。佐々木は柏との準決勝・第1戦を3−1で終えたあと、警鐘を鳴らしていた。

「結果的には良いスコアで終われましたが、内容はずっと押し込まれていましたし、後半は自分たちのやりたいことはできていなかったので、(準決勝・第2戦では)相手のホームは良い雰囲気ですし、このままだと圧倒されてしまうと思う。自分たちのやるこべきこと、やりたいことを改めて整理して2戦目に挑む必要があるのかなと思います。

 耐える時をしっかり耐えられるようにしながら、自分たちがしっかりボール握る技術だったり、判断を高めないといけないと感じます。もう少し一人ひとりが勇気を持って、ボールを欲しがるところなどは強い気持ちを持ってやっていきたいです」

 ただ、ショッキングな第2戦の敗戦後、改めて佐々木は悔しそうに語った。

「(リーグを含めて直近で柏と)3試合やって、同じような展開というか後半押し込まれてしまうところで、何も自分たちで修正できなかったなと。もったいなかったなと感じます。

 自分たちがもっとボールを握るとか一人ひとりがボールを欲しがるとか、勇気を持って運ぶとか、そういうことをやっていかないと、ずっと相手ボールで守備をしていて、そういう状況では少し難しいゲームになってしまいます。自分たちの良さを出していかないといけないなと感じました」

 自分たちの良さ――。今季は長谷部監督の下で守備面の強化に力を入れてきたチームは、組織的に手堅く守りつつ、大ブレイク中の伊藤達哉や、マルシーニョ、エリソンら前線のタレント、ボランチの山本悠樹のひらめきなど、“個”の力で状況を打開し、リーグトップの得点数(60)を誇るが、リーグで7番目に多い失点(45)も喫している。

 そのなかで昨季まで積み重ねてきた技術力を何よりも大切にし、相手を見て逆を取るパスサッカーの色は薄まっている。

 多くのタレントが海を渡るようになった昨今、戦力維持、サッカーのクオリティの維持はかなり難しくなっている。もっとも現状を憂いても何も始まらない。大事なのは川崎がクラブとして、今後、どう指針を示していくかだ。

 鬼木達前監督体制の最終シーズンとなった昨季に続き、無冠の可能性がかなり高まった現状で、川崎は自らの方向性を改めて考える時に来ているのだろう。どういったサッカーを目指すのか、大切な岐路だと感じる。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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