バレー米国主将がLGBTQを公表した理由「全てを知ってもらうべきだと」 何年も悩み…取材で告白、怖さから自信へ
米国の主将エリック・ショージは6月にクィアであることを公表
本当の自分を知ってほしい。男子バレーボール米国代表の主将、35歳のエリック・ショージは先月、性的マイノリティ(LGBTQ)のクィア(Queer)であることを公表した。千葉ポートアリーナで開催中の「買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2025 千葉大会」で20日に日本と対戦予定。カミングアウトした理由や、同じような境遇にいる人たちに向けたメッセージを聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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「自分がクィアであることを世界に伝えるために、私はここにいます」
性的マイノリティの権利を啓発する「プライド月間」にあたる6月、ショージはカメラに向かって打ち明けた。クィアとはもともと「風変わりな」「奇妙な」といった意味を持つ言葉で、かつては性的マイノリティに対する蔑称として使われた。しかし、今では性的指向が異性愛に限らない人や、性自認が身体の性と一致しない人などが肯定的に自分を表現する時に用いられる。
米国では各プロスポーツチームが「プライド月間」に啓発活動を行うなど、徐々に理解が広がりつつあるが、今年1月にドナルド・トランプ氏が大統領に再就任。DEI(多様性・公平性・包括性)政策の見直しとともに、性的マイノリティにも逆風が吹いている。
そんな中、ショージは男性スポーツ界ではまだまだ少ない告白に踏み切った。「怖さと同時に、解放感も感じています」。自身のTikTokやインスタグラムで公開した動画は、約1か月で15万を超える「いいね」を集めた。
怖さもあったというカミングアウト。質問するこちらの緊張を感じ取ったのか、3大会連続で五輪に出場しているベテランは「聞いてくれてありがとうございます」と柔らかい笑みを浮かべてから、経緯を語り始めた。
「私の全て、ほぼ全てを知ってもらう時間を作るべき時だと思ったんです。五輪チームでプレーし、キャプテンを務める中で、自分に正直になり、自分の望むように生きることが選手にとって重要だと考えるようになりました。それが私の決断でした」
自分がクィアであると自認し、100%受け入れるまでには何年もかかった。「それを世界に向けて話すのはさらに次元が違うものでした」。悩みに悩んでから、勇気を持って握ったマイク。本当の自分をさらけ出した動画の反響はポジティブなものばかりだった。「1か月ほど経ちましたが、何も変わっていません」。周りは今まで通り、そのままのショージを受け入れてくれている。
ロールモデルとして「若い人たちに見せたい」姿
代表のチームメートには、同性愛者であることを公表しているメリック・マクヘンリーもいる。「みんなが優しく、支援的なんです」。今季から初めてキャプテンの大役を任されているが、「このチームのみんなと一緒にここにいられることにとてもワクワクしています」と、年下ばかりの仲間への信頼は厚い。
ありのままの自分を誇れるようになった35歳の表情は晴れやかだ。「悪く聞こえるかもしれませんが、正直に言うと私はもう気にしていないんです。自分に力強さを感じていますし、自信を持てています。私という人間や私の考え方が、誰か一人の意見に左右されることはありません」。今度は世界最高峰のアスリートとして、同じような境遇にいる人たちのロールモデルとなることを目指す。
「これはプロスポーツ界、特に男性ではまだあまり話題になっていないテーマだと思います。人々が話したがる主要なものではありませんし、世界には受け入れられていないところもたくさんあります。本来の自分に自信を持ちつつ、一番高いレベルでプレーできると示すことが私にとって重要なことだと考えています。自分が望む自分でいながら、クールなことができると若い人たちに見せたいんです」
日本もまだまだ性的マイノリティがカミングアウトしやすい環境とは言い難い。「日本の状況はわかりませんが……」と前置きしつつ、ショージはかつての自分と似た悩みを抱える人たちにエールを送った。
「誰もがありのままの自分でいることを安全に感じるべきですし、もしそうでないなら適切なコミュニティを見つける必要があります。バレーボール界はとても寛容で、愛のあるところです。私を見てくれれば、あなたを愛し、サポートしてくれる私のような人がいるとわかってもらえると思います。あなたがあなたらしくいられることを願っています」
リオとパリで2度五輪の銅メダルを獲得した名リベロ。優しく芯のある言葉と、恐怖を乗り越えた堂々たるプレーで“仲間”へとボールをつなぐ。あなたは決して一人じゃない、と。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
