イラク戦に出場した鈴木彩艶【写真:ロイター】

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ドラゴン久保のアジアカップ・日本―イラク戦分析第1回

 サッカー・アジアカップカタール大会は19日、グループリーグ第2戦で世界ランク17位日本が同63位イラクに1-2で敗れた。歴代最長の国際Aマッチ連勝記録が「10」で止まり、決勝トーナメント(T)進出はお預け。2022年のワールドカップ(W杯)カタール大会で独自の解説がひそかに話題となった元日本代表FW久保竜彦が今大会も東京・中目黒のTHE ANSWER編集部を訪問し、試合を分析した。全3回の第1回。2試合で4失点し、課題が指摘されるGK鈴木彩艶に「21歳なんやろ。まだまだ若い。これからよ」とエール。数々の名守護神と対峙した元ストライカーの目線で、次代のニッポンの守護神候補に愛の檄を飛ばした。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 引き分けくらいあるかなと思ったけど、こうなるとは思わんかったね。森保さんもいろいろ試しとるのかもしれんけど、勝たんとやってるやつが一番悔しいやろな。ただ、そのくらい今日のイラクが強かったんやろ。

(日本の)フォワードを見よったけど、(守備に)穴がなかったもんね。(途中からDFが)5人のラインになってたし、穴がなかった。センターバックも伊東が裏突けんかったし。裏をえぐれるやつがおらんかったね。

(2失点した)鈴木はこの2試合でいろいろ言われとるんか。

 確かにキーパーは1度ミスすると、出足が遅くなるんよね。どうしてもビビッてしまうから。(1失点目の場面は)なんで捕らんかったん、なんで弾いたんって思ったけど、21歳なんやろ。まだまだ若い。

 ただ、気になるんは(192センチの)体がちっちゃく見えるんよ。(体の)使い方が。

 デカいけど、デカく見せてないというか。もうちょっと意識して、腕の使い方とか覚えていったら良くなると思うよ。今は本能で、瞬発力でやっとると思うけん。どう効率的に動かすか考えて、方法を覚えて。それができたら大きく見えるし、それを掴ませるように経験させとるのかもしれん。

 特に今、日本にGKがおらんけん。(控えの)前川黛也にも期待しとるけどな。

「ぱっと見た瞬間に『あっ』と思ったら、もうダメやけん」

 それこそ(前川の)お父さんの前川和也さん(現役時代に広島でチームメートだったGK)はヤバかったよ。

 ゴールがちっちゃくなって、見えんのよ。それが前川さんやったし、松永(成立)さんも上手かった。あとはやっぱ、楢崎(正剛)やな。何点も決めとるけど、嫌なGK。身長・体重より大きく見えるっていうことよ。

 FWからすると、ぱっと見た瞬間に「あっ」と思ったら、もうダメやけん。

 その時点で、ほぼ入らん。確率が減る。(一瞬でも)なんか思ったらダメ。うまいキーパーには逆を突くんやけど、(シュートの)間合いに入ったときに「あっ」と思ったら入らん。そう思わせるのも、キーパーとして大切なことよ。

 鈴木は21歳なんやし、全然まだまだこれからやと思うよ、俺は。あれだけデカくて、こういう大会で2試合連続で使われとるというのは絶対、何かあると思うから。外から見てる限りでは、わからんことやけど。

 逆に、試合前にイラクを見ていて、これは怖いなと思った場面があったよね。

(第2回へ続く)

■久保 竜彦 / Tatsuhiko Kubo

 1976年6月18日生まれ。福岡・筑前町。筑陽学園高を経て、1995年に広島加入。森保監督(当時選手)とは7シーズンプレーした。2003年に横浜F・マリノスに移籍し、リーグ連覇に貢献。1998年に日本代表デビュー。ジーコジャパンとなった2003年以降は日本人離れした身体能力と強烈な左足でエースとして活躍したが、腰や膝など度重なる怪我により、2006年のW杯ドイツ大会は落選。以降、横浜FC、広島などを渡り歩き、2014年に引退。J1はリーグ戦通算276試合94得点。日本代表は国際Aマッチ通算32試合11得点。引退後は山口・光市に移り住み、コーヒー焙煎や塩作りなど、異色のセカンドキャリアを歩む。来月、初孫が誕生予定。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)