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幅広い意味でスリリングなクルマ

text:AUTOCAR UK編集部translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

今回は、パフォーマンスの頂点に君臨し、世界で最も速く、最も高価で、最もパワフルなクルマを取り上げる。

【画像】頂点のハイパーカー【各モデルを写真でじっくり見る】 全116枚

市販車の速度記録を更新したり、価格や最高出力で未知の領域に踏み込んだりしているものもあれば、エキゾチックなボディで見る者を釘付けにするものもある。


触れることすらためらわれるクルマたち。いつかお近づきになりたいものだ。

従来の燃焼エンジン車だけでなく、電動モデルも取り上げている。いずれのクルマも、技術と速度におけるスリリングな記念碑となっている。

1. フェラーリ・ラ・フェラーリ

フェラーリが誇るハイパーカー、ラ・フェラーリは、自動車が到達した最大かつ最もセンセーショナルな頂点に他ならない。最高出力800psの6.3L V12エンジンを搭載し、さらに163psの電力を後輪に直接供給することで、パワートレイン全体で963psという驚異的な出力を実現している。

AUTOCARはこのクルマの性能を試す機会を得られなかったが、フェラーリによると、0-100km/h加速はわずか2.4秒、300km/hまでは15秒で到達できるという。


フェラーリ・ラ・フェラーリ

しかし、その圧倒的なパフォーマンスと気の遠くなるほど複雑なメカニズムを持ちながら、ハンドリングは穏やかで制御しやすく、サーキットでの運転は想像以上にエキサイティングなものになっている。

価格は100万ポンド(1億5000万円)以上で、500台のみ(2015年に最後の1台)が生産された。ラ・フェラーリは、フェラーリの記念碑的な存在であり、今でもハイパーカーの旗手として君臨している。

2. マクラーレンP1

マクラーレン・オートモーティブ初の「アルティメット・シリーズ」は、世界的な名声を築いた伝説の名車「F1」の流れを汲む必要があった。

しかしマクラーレンは、単なるF1の複製に走ることなく、915psのハイブリッド・パワートレイン、2シーター、最新のサスペンション技術、軽量構造、レース用のエアロダイナミクスなどを採用し、最高に速く、最高にエキサイティングなパフォーマンスカーを実現。道路でもサーキットでも同じように前代未聞のスリルを味わえる「P1」を作り上げた。


マクラーレンP1

P1がもたらすスリルは特別で、レーシングドライバーだけが経験できるレベルの走りを見せつける。一方の公道では、驚くほどおとなしく、運転しやすいクルマである。しかし、これ以上に技術的に優れていて、反骨精神にあふれ、目的意識の高いパフォーマンスカーは、世界のどこを探しても存在しない。

3. マクラーレン・セナ

人々から尊敬され、悲劇的な運命をたどったF1レーシングドライバーの名前を、最新の「アルティメット・シリーズ」に採用したとき、モータースポーツ界と自動車業界は一斉に息を呑んだ。

アイルトン・セナという伝説的な人物の記憶を呼び覚まし、それを使って新車を販売するというのは、(例えどんなクルマだとしても)良いアイデアだとは思えなかった。セナの名前は本当にマクラーレンが使うべきものだったのか?


マクラーレン・セナ

そのことについては、多くの読者もすでに意見をお持ちかもしれない。ただ、マクラーレンが生み出した最速、最先端、かつ最もエキサイティングなサーキットマシンである、驚異的なハイパーカー「セナ」に乗ることで、考えが変わる可能性は否定できない。

セナは、排他的なサーキット性能を持つクルマだ。ピーク時には約800kgのダウンフォースが発生し、V8エンジンは800ps弱を発揮する。パワーに関しては最強というわけではないが、2018年にサーキットで試乗した際には、ラップレコードを1秒半も更新したほどの驚異的なグリップ力を備えている。

サーキットでは神経をすり減らすような走りを楽しめるこのクルマが、公道でのんびり走れるはずがないと思われるかもしれない。だが、そんなことはない。

セナは、試作のレーシングマシンのようなスピードを出しても、フィードバック、安定性、ドライバビリティであなたを守ってくれるだろう。肉体的な試練と同時に、精神的に忘れがたい喜びを与えてくれる。

同価格帯のハイパーカーと比較すると、使い勝手の良さでは劣るものの、直径4kmの円を描くようにして高速で走るという積極的な姿勢には、まったくもって魅了される。

4. ロータス・エヴァイヤ

電動ハイパーカーは、一瞬で壁にぶつかってしまいそうなトルクによって、燃焼エンジン車に対抗しようとしている。英AUTOCAR編集部は、ヘテルにあるロータスのテストコースでエヴァイヤのプロトタイプに試乗した。

EVであろうとなかろうと、このクルマの性能は偶然の産物ではない。70kWhの駆動用バッテリーと4基のモーターを搭載したエヴァイヤの重量は約1700kgだが、ピーク時には約2000psを発揮する。ピレリPゼロ・トロフェオRタイヤを履くと、0-300km/h加速をわずか9秒で達成すると謳われている(ブガッティ・シロンよりも4秒以上も速い)。


ロータス・エヴァイヤ

試乗したプロトタイプでは、低速からの発進時にはドラマチックが感じられないものの、160km/hを超えると容赦なくスピードが上がり、全輪駆動にもかかわらずロータスらしいバランスのとれたハンドリングを実現していることがわかる。

5. ブガッティ・シロン

フォルクスワーゲン・グループの最高級ブランドであるブガッティは、2005年に世界最速の市販車を世に送り出し、歴史に名を残した。W16エンジン、1000ps、4輪駆動のヴェイロンは、400km/hの壁を突破したのだ。

そして、2016年に登場したのがシロンだ。ヴェイロンではアルミニウム製のスペースフレーム構造を採用していたが、シロンではより軽量なカーボンファイバー製のモノコックを採用している。


5. ブガッティ・シロン

ヴェイロンが最終形態で1200ps程度だったのに対し、シロンは1500ps近くまで高めている。また、最高速度はヴェイロンが431km/hだったのに対し、シロンは1600psの「スーパースポーツ」として、市販車の世界最高速度記録である490km/hを達成している。

記録的なスピードを簡単に達成できるハイパーカーを求めるなら、このクルマが最適だ。ブガッティの16気筒エンジンは、確かにターボラグがあり、クルマというよりはホバークラフトや特急列車に近く、サウンドも甘い響きではない。しかし、いざエンジンが動き出すと、節度というものをまるで知らない。

乗り心地は硬く、ハンドリングはほんの少しだけ物足りないかもしれない。しかし、シロンのように驚異的なスピードを手に入れることができるというのは、非常に大きな功績であり、まったくもって驚くべきものだ。

6. ポルシェ918スパイダー

ポルシェ918スパイダーは、電気モーターと大容量バッテリーを搭載しており、21世紀のゼロ・エミッション技術をライバルよりも有効に活用し、ドライバーズカーとしての魅力は比べ物にならないほど大きい。

電気エネルギーだけで約25km走行することができ、自宅での充電も可能だ。運転に関しては昔ながらのポルシェのスーパーカーという感じで、718ボクスターよりも難しい。


ポルシェ918スパイダー

しかし、モータースポーツ用に開発されたV8エンジンは9000rpm近くまで回転し、エキサイティングな走りを見せてくれる。4輪駆動で、124kg-m以上のトルクを持つ918スパイダーは、猛烈な勢いで加速する。

重量はあるが、サーキットでは非常に速く走ることができる。ラ・フェラーリのように息を呑むような美しさはなく、P1のようにル・マンの予選を通過したような気分にさせるパワーもないが、918を駆る喜びは特別なものだった。

7. ケーニグセグOne:1

ジェットエンジンも空対空ミサイルも搭載していない、スウェーデンのエンゲルホルムで生まれた最速マシン、ケーニグセグOne:1の価格は200万ポンド(約3億円)だ。

エタノールを燃料とするターボチャージャー付きのV8エンジンは、1300ps以上を発揮する。適切な条件のもとでは、静止状態から400km/hまで20秒以内に到達できるとされている。実際に運転してみると、ブーストをかけなくても十分なトルクを発揮し、普通の速度で運転するのは意外と簡単だ。


ケーニグセグOne:1

アクセルペダルを床まで踏み込み、ターボチャージャーが回転して、ハイギアでもトラクションが不足しがちな後輪にどんどん力を送り込む音を聞くと、まさに白熱した走りが楽しめる。しかし、200km/hを超えてようやくエアロダイナミクスが機能し始めると、それはまさに別世界と呼ぶにふさわしいものとなる。

8. アストン マーティン・ヴァルカン

過剰な性能を持つハイパーカーには過剰なスタイリングがつきものだが、アストン マーティン・ヴァルカンはまさに過剰だ。One-77のシャシーとエンジンを流用して製作された、最高出力831psのサーキット専用ハイパーカーは、118dBの大排気音を奏でる。

ヴァルカンはサーキットを走るには最高のクルマだ。不気味で、鮮やかで、挑戦的なボディに身を委ねるのは肉体的にも過酷であり、そのダイナミックな作りは隅々までレーシングカーのように感じられる。


アストン マーティン・ヴァルカン

他のクルマにはない没入感と素晴らしさを持つヴァルカンのハンドリングは、思いのほか親しみやすく、非常に忠実だ。

9. パガーニ・ウアイラ

パガーニは、かつてローマ司教の祝福を受けた革製のドライビング・アクセサリーを販売していたほど、希少でエキゾチックな自動車メーカーである。

2012年に発表されたウアイラは、当時、1本の駆動軸に730psと101kg-mのパワーを通すことは馬鹿げているように思えた。メルセデスAMG製の6.0L V12ツインターボを搭載したウアイラは、昔ながらのハードなドライバーズカーである。


パガーニ・ウアイラ

しかし、その一方で、見事なまでのコミュニケーション能力と誠実さを備えており、どの速度で運転しても、その没入感と特別感に完全に酔いしれることができるのだ。ホラシオ・パガーニが後期に開発した、軽量化と出力向上を図ったBCバージョンはまだ試乗していないので、試乗した際にはウアイラの評価が上がっているかどうか注目してほしい。

10. ランボルギーニ・センテナリオ

アヴェンタドールを1台用意する。6.5L V12エンジンの出力をかつてないほどに高め、目を見張るようなカーボンファイバー製ボディを採用し、ランボルギーニの量産車で最も空力性能の高いモデルとする。最後に、創業者フェルッチオ・ランボルギーニの生誕100周年を記念して命名すると、「センテナリオ」が出来上がる。

ランボルギーニは2016年のジュネーブ・モーターショーでこのクルマを発表し、40台の限定生産で、価格は160万ポンド(約2億4000万円)にすると発表した。試乗できたのは非常に短い時間だけだが、その走りは本当に素晴らしかった。


ランボルギーニ・センテナリオ

非常に騒々しく、贅沢で、注目を集めるセンテナリオは、まさにランボルギーニが得意とする分野をすべてクリアしている。最新のハイパーカーのようなスピードや技術的な進歩には及ばないものの、非常に速く、特別なドライブができることは明らかだ。いつの日か、このクルマをもっと知ることができることを願っている。