伸びるアンテナなぜ消えた? 時代の変化でシャーク式主流に! アンテナの存在理由とは

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 クルマの歴史とともに変遷を遂げてきた「ラジオアンテナ」。
 
 かつては、手で伸ばすタイプのものが主流でしたが、現在は「シャークアンテナ」と呼ばれるタイプのものに変化しつつあります。その理由はどこにあるのでしょうか。

かつては主流だった伸びるアンテナ。とくに電動式は高級車の証ともいわれた

 あるときは愛車でのドライブを彩る音楽を車内に響き渡らせ、またあるときはドライバーにとって必要不可欠な情報を提供してくれるカーラジオ。現在では多機能なディスプレイオーディオのひとつの要素となっていることが多いカーラジオですが、いまだに根強い人気を誇っています。

【画像】現在でも棒アンテナを採用するのは? あの大人気スポーツカーだった!(11枚)

 そんなカーラジオに欠かせないのがアンテナです。いうまでもなく、ラジオは電波を拾わないと聴けません。高いビルや山などの遮蔽物の間を走る際や、高速走行時でも、安定して電波を拾うために感度の良いアンテナは必須です。

 かつてカーラジオそのものが高級品だった時代は、ルーフやリアボディからそそり立つラジオアンテナは高級車の象徴的存在でした。バブルの頃は「ブーメランアンテナ」と呼ばれる大型のものが一部で流行するなど、アンテナは愛車を彩る重要な要素のひとつだったのです。

 そんなクルマのアンテナですが、近年ではその形状も変化しつつあります。

 かつてもっともポピュラーであった、運転席側のAピラーに格納されドライバー自身が手で伸ばす「のびーるアンテナ」(正式名称はロッドアンテナ)は、いまや商用車や一部のモデルの廉価グレードを除いて、ほとんど見かけることがなくなりました。また、1990年代から2000年代にかけて高級車を中心に見られた電動格納式アンテナも、現行車種では採用が皆無です。

 それらに代わって近年台頭しているのが「シャークアンテナ」もしくは「シャークフィンアンテナ」と呼ばれる、その名の通りサメの背びれのような形状のものです。

 2005年にレクサス「IS」で採用されたのを皮切りに、高級車を中心に一気に浸透し、現在では軽自動車でも採用されているものもあります。

 シャークアンテナのメリットとして挙げられるのは、「デザイン性」と「多機能性」です。

 シャークアンテナについて、国産メーカーの担当者は次のように説明しています。

「最強のカーアンテナに求められるデザイン要件は『小型』です。従来のアンテナにありがちな洗車・駐車時の取り外しや折り畳みといったユーザーの手間をなくすとともに、簡略化・小型化によるデザイン性の向上などを目的としています」

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 ロッドアンテナのような「いかにもアンテナ」というデザインは見た目も美しくないばかりか、その先端がボディサイズを超える場合には高架下や駐車場などで引っ掛けてしまうおそれもあり、さらには、空気抵抗を受けやすいために静粛性などにも影響します。

 その点、シャークアンテナであれば、ボディにマッチしたデザインにできるとともに、固定されていることから破損の心配も皆無です。加えて、空気抵抗も抑えられるために、静粛性や燃費性能という点でも有利です。

 しかし、シャークアンテナのもうひとつのメリットである「多機能性」は、これからのクルマにとってより重要といえます。

アンテナはもはやラジオのためではない?

 多くの人は、クルマのアンテナは基本的にはラジオのためのものと考えているかもしれません。

 しかし、クルマそのものが多機能化している昨今では、アンテナに求められる機能も高度・複雑化しています。

 近年のトレンドとなっているシャークアンテナが初めて採用されたのが2005年のISであることは前述しましたが、実はこの時点ではラジオ用のアンテナではありませんでした。

 当時レクサスが提供していた専用のテレマティクスサービス「G-Link」用の通信アンテナとして用いられていたのです。

 その後、ラジオアンテナ専用のシャークアンテナも開発されましたが、現在では多くのシャークアンテナが複合的な機能を持った多機能アンテナとなっています。

 前述の担当者は次のように話します。

「デザイン面の小型化以外に最近のアンテナでは『広帯域』も重要な要素です。現在のシャークタイプは、さまざまな周波数帯の電波に対する安定した受信性能を確保しています」

 つまり、デザイン性も重要な要素である一方で、通信システムなどの多機能化によって、従来型のロッドアンテナではそれらの役割を果たすことができなくなっているというのも、シャークアンテナの採用が増えている背景といえるのです。

最近では軽自動車にも採用されているシャークフィンアンテナ(画像はホンダ「N-WGN」)

 一方、シャークアンテナにもデメリットは存在します。もっとも大きな点は、コストです。

 複雑な構造を持ち、なおかつボディカラーに合わせた塗装も必要なシャークアンテナは、シンプルなロッドアンテナに比べて数倍のコストがかかります。そのため、コストパフォーマンスが重視される商用車や軽自動車ではシャークアンテナはほとんど採用されていません。

 また、そもそものアンテナの役割である電波の受信という点についても、シャークアンテナはその構造上、ロッドアンテナよりも不利であるとされています。

 そのデメリットを補うため、シャークアンテナには受信感度を増幅するアンプが搭載されていますが、それは同時にコスト増にもつながります。

 自動車業界の関係者は次のように指摘します。

「ラジオはもとより、さまざまな通信機能を持つ現代のクルマにとって、アンテナは必要不可欠なものです。

 一方で、デザイン性や機能性、燃費や走行性能などを考慮すると、ボディラインからはみ出すような突起物は取り付けたくないというのが、自動車メーカーの基本的な考えです。

 シャークアンテナはそれらの妥協点を探った現実解とも呼べるものですが、近年ではリアウィンドウなどにはりめぐらされるフィルム式のアンテナなども開発されています。

 コストパフォーマンスを含めた総合的なメリットを考えると、突起物であるシャークアンテナも淘汰されていく可能性が高いでしょう」

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 クルマとともに進化してきたアンテナですが、時代のニーズに合わせて日々進化を続けているようです。

 ただ、近年トレンドとなっているシャークアンテナも、近い将来にはフィルム式のアンテナへと移り変わる可能性も高く、いずれは「昔のクルマ」の象徴的な存在となるかもしれません。