PS4大作『The Last of Us Part II』発売。 攻略以前の基本レビュー & 序盤ガイド #ラスアス2
プレイステーション4の大作、『The Last of Us Part II』がついに発売を迎えました。先行プレビューに続いて、購入前・遊ぶ前の予備知識と、序盤を不要なストレスなく進める基本をまとめます。
気になるけれど前作未プレイだったり難しそうとためらっているかた、Z指定の表現は自分的にアウトなやつか知りたい人や、始めたけれど育成や探索で後から困る要素はあるのか知りたい、オプション設定が膨大すぎて意味が分からないといった場合の参考にどうぞ。
前半は自分向きのゲームか判断するための仮想QAなので、すでに購入したかた、前作プレイ済みの場合は飛ばしてください。
(通常難度の設定で一周クリアした時点で執筆。可能な限り正確を期しますが、いずれ知識が蓄積されれば変わる点、エラー等が含まれる可能性があります。)
まず最初に2点。
買い?どこが良いの?
トレーラーで気になったら買い。ゲーム好きなら、テーマや物語は措いても技術・演出・物量で圧倒される。
ステルスや戦闘アクションとしての楽しさに加え、ポストアポカリプス世界の作り込みで、廃墟探索ゲーとして空前の出来。
米国を崩壊させたパンデミックから25年、朽ちてゆく建造物と浸食する自然、水に沈むシアトルの鮮烈なビジュアル、雨の冷たさや湿度まで伝わる空気感、気が遠くなるような密度で再現される劇場、博物館、ホテル、ゲームセンター、水族館といった遺構の描写は圧倒的で、ただ歩くだけでも無限に楽しめる。フォトモードも充実しており、スクショフォルダがあっという間にギガ単位になる(※個人差があります)。
ナラティブ。ゲームを通じて物語を体験させる手法のひとつの到達点でもあり、ライフサイクル末期のゲーム機ならでは、大作続編ならではの凄まじさを堪能できる。
暴力表現アレルギー、ダークな物語アレルギーでさえなければ、大作映画のようにお薦めできる。買える本数や遊べる時間的に悩む場合は下のゲーム仕様を参考に。
(蛇足。主人公が10代女性で、ガールフレンドと廃墟を巡りつつお互いや世界について語り合うパート、いい感じの隠れ家を見つけて仲良く葉っぱをキメるといった描写で、一部界隈から「超エモい百合ゲー」とも評されるはず。
「世界の終わり」後に生まれた少女同士の関係性は前作DLCから扱われており、必ずしも不当な表現ではありませんが、しかし非常に多面的な作品なので、少なくともジャンル百合の安心感を期待するとトラウマになります。どっちかいえば超暴力女ゲー。)
前作やってないんだけど。
回想で説明されるのでまあまあ大丈夫。この質問、開発者やメーカーは初動で売るために当然大丈夫と言い、ファンも布教のための方便として不誠実に答えがちなので、遊ぶ側としてはあまり信用できませんが、通しでプレイしてみて、単品でも成立していると判断しました。
もちろんパート2なので、余裕があれば前作から遊んだほうが厚みが増すのは当然。特にジョエルへの感情移入の点では有利です。しかし前後編として書かれたわけではなく、後から企画された続編なので、前作未プレイで???となることはありません。逆に2のあと、気に入ったら前作リマスターを遊んでもまた違った楽しさがあるはずです。
それでも予備知識として手短に説明されたほうが安心できる人のため、末尾に「超簡単なワンポイントあらすじと因縁」を置きます。前作ネタバレ注意です。
The Last of Us Part II ってそもそもどんなゲーム?
ラスト・オブ・アス パート2 (ラスアス2)は、人間を怪物に変えてしまう菌類のパンデミックで崩壊した近未来の米国を舞台としたサバイバルアクションゲーム。
2014年にPS3で発売された前作は多数の賞を獲得し、世界で1700万本以上を売り上げる大成功を収めました。
開発は『アンチャーテッド』や『クラッシュ・バンディクー』シリーズで知られるNaughty Dog。ソニー傘下のPlayStation Studios でも特にPSを限界まで使う最新技術と、膨大な人員を投入した大規模ゲームで定評あるスタジオです。
具体的にはどんな系統のゲーム?仕様は?
・主人公を背後から見下ろす、いわゆるTPS(三人称視点) アクションがメイン。
・「感染者」や生存者との戦闘や広大なステージの探索と、シネマティック(カットシーン)の繰り返しで進む、ある意味オーソドックスなスタイル。
・オープンワールドではない。基本は一本道で進み、後に戻れない。
・(序盤〜中盤にかけて広い街区を順不同で探索するオープンっぽいセクションはあるが、そこだけ例外)
・「サバイバル」と称するものの、食料の確保やセーフハウスづくりといったシミュレーション要素はない。リアルタイムの時間経過もない。
・シングルプレーヤー専用。対戦も協力もなし。
・クリアまでは目安として20〜30時間程度。人により大きく変わる。戦闘や探索がメインなので、進め方でいくらでも伸びる。
・残り時間で先が読めない、尺で予測が難しいことがゲームというメディアの良いところなので、「いま全体のどのあたり」や章立てをネットで確認しないことを強く推奨。
・戦闘も探索も、難度は柔軟に設定可能。 難しすぎて詰まる可能性は、基本的な操作ができるならば考えにくい。プレイアビリティは『アンチャーテッド』最新作からさらに進化。詳しくは後述の「難しい?」へ。
ストーリーと演出はどんな感じ?
・キャラクター描写とストーリーの体験が主眼のゲーム。プレーヤーが主人公を操作できる状態のまま会話や物語が展開する演出を多用。
・操作を奪うシネマティックもゲームプレイとシームレスにつながるため、「カットシーン始まったからコントローラ置いて一休み」的な受け身の映像にはない緊張感があり、退屈させない。
(逆に「ムービー全スキップで戦闘だけ」繰り返したい場合はあまり向かない。)
・ストーリーは長大な映画に近い感覚。主人公エリーは前作からメインキャラで人間関係も過去もあるため、「白紙の主人公=プレーヤー」ではない。
・プレーヤーの判断で物語が大きく変わる系のゲームではない。操作キャラクターと一体感はあっても選択や判断はあくまでキャラクタードリブン。「主人公が自分の考える正しい行動をしないバカなのでイライラ」な人はイライラしてください。
要注意な表現は? 暴力とか犬とかグロとか
・Z指定の大人向け。暴力表現が理由。 ポストアポカリプスの残酷な世界の復讐譚で、開発者がテーマに暴力の連鎖を掲げるほど。「敵」にもそれぞれ名前があり表情と声があり、戦闘も痛みを伴う演出。
・ポストアポカリプスものではあるものの、頭空っぽにゾンビを薙ぎ払う系ではない。暴力表現もブラックユーモアや突き抜けたスプラッタではなく、生々しい。
・馬や犬が登場。生存者どうしの抗争では乗り物や武器として使われるため、必然的に動物が暴力の対象になることもある。ただし、大半の戦闘は隠れてやり過ごすことも可能。
・個人的に。「動物の扱い」は難しいところで、そうした描写が苦手という程度の動物好きにはむしろ負荷を承知で体験して欲しい。ただ、犬が少しでも痛い目に遭う映画はネタバレ覚悟で調べて全部避けるレベル、見ると一週間寝込むという方は厳しい。
・「感染者」はキノコ人間。ゾンビの死体っぽさや人体損壊が苦手でもこちらはOKという人もいれば、顔面がキノコ栽培の原木のような人間が奇声をあげて突進してくるほうが無理という人もいるので、難しいところ。ホラーアクション程度には生理に訴える。ただ、感染者は今作でそこまで中心ではない。生存者同士の抗争がメイン。
・暗い、キツイ、エグい展開アレルギーのかたは要注意。たまには違ったものを試したいのでなければおすすめできない。
とはいえ安直にバンバン殺すカタルシスや単調な鬱展開ゴリ押しに頼った作劇ではなく、生存者たちの愛情も憎しみも描写を積み重ね、プレーヤーに体験させて進む。
シリアスな生存者もの海外ドラマや、暴力的でダークな映画、ドキュメンタリー等が大丈夫ならば問題なし。
逆に金出してまで不幸な話なんて見たくない場合、キャラクターの行動で意見が分かれる話はストレスという場合は避けたほうが幸せ。どんな賛辞を使うにしても万人向けではなく、安心してカタルシスを得てスッキリするお話でもありません。
難しい?
・難度やヒント、ガイドの有無は自由自在に設定できる。道に迷いやすいなら探索のヒントを頻繁に出したり、敵は挑戦しがいのある強さ賢さにしつつ、消費アイテムやリソースは多めで節約ストレスは軽減といったことも可能。
・難度設定とともに、見やすさや操作しやすさをカスタマイズするアクセシビリティがゲーム史上空前レベルで充実。視聴覚の補助も操作の補助も多数の項目を用意するため、自分にとってちょうどよい、ゲームと物語を楽しむ歯ごたえに調整できる。
・もちろん、ハードなゲームに全力で挑戦するのが楽しいというゲーマーには、高難度設定と実績も用意。死ぬとセーブデータが章単位で、あるいは完全に消えるノーコンティニュープレイ、いわゆるパーマデスまである。
・強くてニューゲームあり。一周クリア後。
ゲーム内容、序盤の進め方の基本
・展開は基本的に一本道で、いつ突発事態で戻れなくなるか分からない。スクショや動画素材のためなら配信録画しつつ遊ぶか、マニュアルで小刻みなセーブが推奨。
・収集とクラフト、スキル育成、装備強化の要素あり。
・スキルは廃屋などから見つかる「サプリメント」を、武器の強化は「部品」を集めて消費することで進める。スキルツリーは教本を発見することで増える。
・レベルアップの概念はない。サプリと部品を拾って強化育成のみ。
・スキルポイントや武器強化の振り直しはできない。
・コレクション要素あり(エリーが集めるカードゲームのカードなど複数)。一周目ですべて発見するのはかなり困難。本筋に影響しないやりこみ要素なので、一周目は気にしなくても良い。
・スキルツリーも武器強化も、普通に一周しても全部は育たない。ある程度の取捨選択が必要。
・武器は原則、展開に応じて必要なものがちゃんと手に入る。廃屋を隅々まで探索しなかったせいで超強い武器がないまま詰みは基本ない。
・スキルツリーの教本は意外とカジュアルに、見落とす可能性もある場所にしれっと置いてあることも。
・ただし通常難度に限って言えば、あるなしで決定的に展開が変わったり詰むスキルはない。範囲が増える・クラフトが効率的になる・速度が早くなる等がメイン。
・なので、スキルを心配しすぎてサプリと教科書探しでテンポを悪くするくらいならば、先を急ぐ主人公と一体化して進んでしまったほうが良い。
アクセシビリティ設定の活用
・それでもリソース回収が気になって仕方ないという性格の場合、R1ボタンの「聞き耳」で敵だけでなく何故かアイテムの位置も察知できる特殊能力が、アクセシビリティから有効にできる。
・ソナーのようにプレーヤーを中心にスキャンして、アイテムまたは敵に当たると音と円のエフェクトで示す仕組み。壁も貫通する。視界になくても、ピンを打ってからの時間で距離が、音の方向で左右が、音の高さで上下が分かる。キンと高い音なら上のフロア。コンと低い音なら下。
・ハイコントラスト設定では、背景がグレーに、自分と味方は青、敵は赤、アイテムは黄色にはっきりレンダリングされる。
視覚障害者でなくても、暗い部屋でアイテムを回収する際にも使える。設定すれば、メニューを開く必要なくタッチパッドのスワイプだけで即オンオフ可。必要なとき一瞬だけ使える。
(常時オンでも良いが、視力的に問題がないのであれば、本作の醍醐味である作り込まれた世界のビジュアルを犠牲にしてしまうので本末転倒ではある)
・そのほかアクセシビリティでおすすめは、連打が苦手だったり面倒だったりする人向けに長押しと置き換える設定。
戦闘について
・ステルスが難しい場合、シリーズお約束のビンやレンガを投げて注意を引く、敢えて姿を見せてから高速で移動して背後を取るといった戦略でカバーできる。
・見つかりやすさ自体の設定もでき、敵を柔らかくしたり自分を不死身にもできるが、緊張感と没入感のためにはノーマル以上がおすすめ。
・武器弾薬もクラフト素材も保持上限が少なく、使い切っても比較的すぐに持ちなおせる。通常難度で遊ぶ限り、前半で備蓄しないと後半がジリ貧で詰むことはない。
・NPCは敵に見つからず、死なない。味方が発見されそうになっても注意を逸したり先手を取る必要はない。
・有機ELテレビなど、コントラスト比の高いモニタがおすすめ。昼間の屋外の鮮やかなHDR表現はもちろん、ゲームの大半は薄暗い場所で進むため。電力網が止まってるので昼間の屋内も暗い。
『The Last of Us Part II』先行プレビュー。リアリズムの新たな到達点、PS4円熟期を飾る大作(ネタバレなし)
おまけ。前作について。
前述したように、パート2から始めても概ね問題ありません。それでもどういうお話だったか最低限知りたいかたのために超ざっくりと。パート2の劇中でもちゃんと何度も説明されます。
前作 The Last of Us は、パンデミック初期の混乱で幼い娘を失い、運び屋として生きる中年男性のジョエルが主人公。秩序再建を志すグループのファイアフライから、パンデミックの原因となった菌類に免疫を持つ謎の少女エリーを護送する仕事を請け負い、親子のような関係を育むことになります。
パート2は前作の終わりから5年後が舞台。ジョエルとエリーは、ジョエルの弟であるトミーとその妻マリアが仕切るワイオミング州ジャクソンの生存者コミュニティで暮らしています(ワイオミングは米国の真ん中、北西寄りの田舎)。感染者や流れ者の脅威はあるものの、互いに助け合いおおむね平和な生活です。このあたりが今作の冒頭で描かれます。
それでもジョエルとエリーの関係がぎこちないのは、エリーの思春期の難しさとジョエルの不器用さのほかに、前作のラストでジョエルがとったある行動に原因があります。
※ 一応前作のネタバレ注意 ※
※ 一応前作のネタバレ注意 ※
※ 一応前作のネタバレ注意 ※
前作で旅の果てにジョエルが知らされたのは、免疫を持つエリーの存在は人類すべてを救う鍵となるものの、そのためにはエリーの命と引換えにワクチンを製造する必要があるという事実でした。
人類を脅威から救うためエリーを差し出すよう迫られたジョエルが選択したのは、 力づくでもエリーを取り戻すこと。人類の希望を奪われてなるものかと抵抗するファイアフライと撃ち合いになり、結果的にジョエルはファイアフライの拠点である病院を壊滅させ、幹部やワクチン開発を主導していた医師も死亡します。
このときエリーは意識を失っており、ジョエルの判断やその後の出来事を記憶していません。目覚めたのちに問われたジョエルが答えたのは、エリーと同じような免疫持ちは他にもたくさんいた、結局ファイアフライは治療法を見つけられなかったので立ち去っただけだ、という嘘。
この嘘と、自分は他人を犠牲に生き延びさせられてしまったのでは、というエリーの罪悪感と疑念が、今作の大きなカギとなります。