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新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由として、タクシー会社「龍生自動車株式会社」(東京都国分寺市)が全社員の解雇を通告していた問題で、同社の運転手が5月8日、解雇は不当だとして東京地裁に地位確認の申し立てを行なった。

タクシー業界では、「ロイヤルリムジン」グループが「失業手当を受けた方がいい」などとして従業員の一斉解雇が波紋を呼んでいたが、同様の解雇の広がりが懸念されている。

●会社「新型コロナで事業継続不可能」

申立書などによれば、龍生自動車は4月15日、新型コロナの影響によって「事業の継続が不可能な事態」を理由として、5月20日付で乗務員と事務所職員、全33人を解雇することを通告した。

しかし、申立人の運転手は、同社が解散するわけでもなく、人員削減のための整理解雇であると主張。下記にあげた理由などから、要件を満たさず無効であるとしている。

・新型コロナの影響による収入の低下は事実であるが、従業員の雇用を維持するための雇用調整助成金制度の利用など、解雇回避努力義務を尽くしていない。

・整理解雇に必要な協議が示されないまま、一方的な解雇通告がなされた。

申立後、勤続15年の運転手・石川雅也さん(56)は会見で「一方的な解雇に怒りを覚えています」と憤った。

解雇通告後に同社社長のいる静岡県と東京都をつないでZoomで行われた4月24日のオンライン団交で、会社側は直近の売り上げを示して「経営を維持できない」と同様の説明を繰り返したという。

石川さんは「決算書など経理関係の書面がないとは思わなかった」とあきれ、「正当な解雇の理由を私がわかるように説明してほしい」と話す。

会社側から「新型コロナの影響による解雇」と説明されたことには全く納得していない。ロイヤルリムジンの一斉解雇の流れに乗ったのではないかと考えている。

●「龍生自動車の解雇通告は、ロイヤルリムジンの影響だ」

ロイヤルリムジンの社長が社員に解雇を知らせたのが4月6日。それから10日間あまりで、龍生自動車も解雇に動いた。

「今だったら、ロイヤルリムジンのせいだし。コロナのせいにできる。だから15日に出したわけですよ」(石川さん)

申立代理人を務める指宿昭一弁護士は、このようにタクシー業界で一方的な解雇の動きが広がることを懸念している。

「タクシー会社は簡単に解散しない。事業をつぶすと、タクシーの会社の免許がなくなってしまって、一度なくすと二度と取れない。それ自体(営業許可)に経済的価値がある。普通は事業譲渡や売却する。本件でも様子を見て、会社を売買するだろう」

「ロイヤルリムジンの真似をして、とりあえず解雇して人件費を浮かせて、事業を再開したら雇うという安易なことを考えている経営者もいる。タクシー関係の労働問題に引き続き注目してほしい」

●龍生自動車社長は電話に出ない

弁護士ドットコムニュースは8日、同社にコメントを求めたが、電話に出なかった。

●すべてのタクシードライバーの相談窓口

日本労働評議会は9日、「タクシードライバー・コロナ労働問題緊急ホットライン」を実施する。コロナ禍における解雇や雇い止め、賃金カットや休業補償など、労働環境の様々な問題について、すべてのタクシー運転手を対象に相談を受け付ける。

【開催概要】 日時:5月9日(土)午後1時〜午後4時 ホットラインの電話番号:03-3371-0589 080-7560-3733 主催:日本労働評議会 暁法律事務所

(午後9時 編集部追記) 申立人の人数に誤りがあり、訂正しました。