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 成人の2人に1人が高血圧を指摘される時代。どうせ降圧剤を飲むなら、きちんと目標を達成する飲み方をしたい。

 降圧剤を飲む目標は「血圧が高いために生じる可能性がある心筋梗塞や脳卒中を予防すること」だ。

 先月、欧州心臓病学会の機関誌に掲載されたスペイン・ビーゴ大学からの報告によれば、降圧剤は朝ではなく、就寝前に飲んだ方が脳・心疾患の発症予防効果をより発揮するらしい。

 同報告は、2008〜11年にスペイン在住の高血圧患者1万9084人(男性1万0614人、平均年齢60.5歳)を対象に行われた前向き追跡試験の結果だ。

 処方された1種類以上の降圧剤の1日の服用分を寝る前に飲む群(就寝群)と、起床した後に飲む群(起床群)とに1対1で割り付けて比較したもの。

 対象者は試験開始時に血圧を測定し、年に1回以上の受診ごとに携帯型の自由行動下血圧測定装置をつけて、血圧の変動を48時間測定した。追跡期間は6.3年(中央値)で、この間に1752人が脳・心血管疾患を発症。このうち310人が死亡している。

 コレステロール値など血圧以外の影響を排除して、就寝群と起床群で脳・心疾患の発症を比較したところ、就寝群では全発症リスクがほぼ半減(45%減)した。

 細かくみると、心疾患による死亡リスクは56%減、心筋梗塞発症リスクが34%減、カテーテル治療といった血行再建術などを必要とするリスクは40%減、脳卒中発症リスクが49%減などいずれも有意にリスクを下げている。

 普段血圧は起床前〜起床後に上昇し、夕方から夜にかけて下がるというリズムを刻んでいる。シフト勤務や就寝時間が一定しない生活でない限り、就寝前に降圧剤を服用して早朝の急激な血圧上昇を抑えるのは理にかなっているのだろう。

 ただ高血圧のタイプによっては、夜間血圧を下げ過ぎると脳血流が低下し、脳卒中リスクが上昇する。

 もし降圧剤を処方されたら24時間血圧を測り、自分の高血圧のタイプと生活時間から最適な服用のタイミングを相談するといい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)