全盛期はそれぞれのクルマが個性にあふれていた

 クルマ好きにありがちな「昔はよかった」という話。しかし、これはあながち間違いではない部分もあり、80〜90年代のクルマには今のクルマにはない魅力を持ち合わせていた。もちろん、現行車にも現行車なりの魅力があるのは百も承知ではあるが、今一度あの頃のクルマが魅力的だった理由を考えてみたい。

1)デザインに自由度があった

 最近のモデルでは対歩行者保護の観点などもあり、デザインにもかなりの制約がなされている。さらに燃費性能の向上も命題となっており、ある程度空力などを考慮するとおのずと燃費のよいデザインというのも決まってしまっているのである。

 そのため、昔のような攻めたデザインや個性的なデザインを実現しにくく、結果的にどのクルマもなんとなく似通ったデザインとなってしまっているのだ。

安全性を高めるとクルマは重くなってしまう

2)今ほど環境への対策が厳しくなかった

 温暖化の原因とも言われる内燃機関を搭載するクルマは、とかくやり玉に挙げられがち。そのため、なるべくクリーンな排気ガスを実現するためにさまざまな努力が日夜研究されている。そのため、エンジンの効率は極限まで高められ、もはやチューニングの余地はほとんど残っていないというのが現実だ。

 また、回転数を上げてパワーを絞り出すような超高回転型エンジンも排気ガスの問題で実現が難しくなっており、乗りやすさを重視してフラットなトルク特性を持つエンジンが増えたことも官能的なエンジンが減ってしまった原因のひとつだろう。

3)シンプルな構造で軽量だった

 最近では複数のエアバッグはもちろん、衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備もほとんどの車両で標準化が進んでいる。安全性能が向上するのは素晴らしい点であるが、その反面増えてしまうのが車両重量だ。昔のコンパクトカーは1トン切りは当然、700kg台も珍しくないという軽量っぷりだったが、今では軽自動車でも1トンを超えるものもあるほど。

 車両重量の増加は運動性能や燃費性能にも影響する部分なので、最近では軽量化にも力が入れられてはいるが、昔の何もついていなかった頃のクルマに比べると軽快感は雲泥の差と言える。もちろん、安全性能が高いに越したことはないので、現在のクルマを否定するわけではないが、こういった点も昔のクルマが楽しかったと言われる要因のひとつであることは間違いない。