香港から中国本土への容疑者移送を認める「逃亡犯条例」改正案は、200万人(主催者発表)という空前の大規模抗議デモを生み出し、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)・行政長官をして、審議延期から事実上の撤回へと追い込んだ。

 自由を求めてやってきた市民にとって、香港で容疑をかけられれば本土に移送される法案は、“死刑宣告”にも等しい効力を持つということが分からなくなっていた林鄭長官に住民から即時辞任を求める声が出ているのは当然だろう。親中・林鄭政権はもはや死に体と化している。

 一方、「逃亡犯条例を改正すると言い出したのは香港側だった」との言い訳で逃げ腰の中国当局だが、今回の決定は6月28、29日に迫ったG20首脳会議でトランプ米大統領はじめ欧米首脳から、対中非難の標的にされることを避けようとした中南海の意向が働いたことは否めない。その証拠に中国政府はデモ前まで同条例改正案に支持を表明し、議会での成立を促していたのである。


訪朝も“トランプ対策”の習近平 ©共同通信社

 それでなくとも習近平政権は昨年来の米中貿易・テクノ覇権戦争で窮地に追い込まれている。中国産品への25%の関税賦課で貿易量が急減しているだけでなく、米国はじめ外国企業がこれまで生産拠点にしていた中国から撤退するという恐怖のシナリオが現実化しつつあるのだ。国内最大手通信機器メーカー・ファーウェイを世界市場から排除しようとする米国の圧力もジワジワと効果が出ている。

足を引きずり、体を庇うように……習氏の健康不安説

 加えて懸念されるのが習近平国家主席の健康問題だ。6月15日で満66歳を迎えた習氏は、最近顔色が優れず、体調不良ではないかとの評判が専ら。6月7日には訪問先のロシアでの経済フォーラム終了後に、舞台下の参加者と握手しようとしてよろめき、ロシア警備員に両脇から支えられて危うく難を逃れた光景が動画で世界中に流れた。

 習氏の健康状態を巡っては今年3月のイタリア、フランスなど欧州歴訪でも、足を引きずる様子を見せ、体を庇うように椅子に座り込んだ上、両ひじで体全体を支えるような仕草の画像が流れていた。ロシアでのよろめきで、健康不安説に再び火がついた形だ。

“強権支配”の習氏に、想定外の異変が迫っているのかもしれない。

(濱本 良一/週刊文春 2019年7月4日号)