画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●スタジオ中が泣いていた

今年6月、虐待死された5歳の女の子が残したメッセージが、日本中に衝撃を与えた。船戸結愛ちゃんが、つたないひらがなで書いていたのは、両親に宛てて「もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします」と許しを請う内容。フジテレビ系ニュース番組『プライムニュース イブニング』(平日版:毎週月〜金曜16:50〜)では、島田彩夏アナウンサーが「目をそらしてはいけない」と、全文を読み上げた。

あまりに悲痛なメモに、涙で声をつまらせながらも、最後までなんとか読み切った姿は、多くの視聴者の心を打ったが、それで終わらないのが島田アナ。これをきっかけに、「児童虐待」の取材に継続的に取り組んでおり、8月1日の放送でも特集される予定だ。このテーマに向き合う決意を聞いた――。

○そのまま全て読むのが一番伝わる

――東京・目黒の虐待死事件で亡くなった船戸結愛ちゃんが残したメモを島田さんが全文読み上げた放送(6月6日)が、大変話題になりました。どういった経緯で、あのニュースを特集することになったのでしょうか?

結愛ちゃんが亡くなったのは、実は今年の3月なんです。児童虐待はたくさん起こっていて、フジテレビでも発生当時に1つの事件としてこのニュースを取り上げたんですが、それから数カ月経ったあのタイミングで、発見されたメモが警察から発表されました。その内容が、虐待を受ける子供たちがこんな思いで亡くなっていくのかとあまりにもショッキングで、ここまで大きなニュースになりました。

――それで、スタジオで特集することになったんですね。

うちのスタッフは男性が多いのですが、私が母親になって復職したので、児童虐待といった子供の命というものをテーマとして扱ってみたいと、前番組の『みんなのニュース』に携わっていたときから思っていたんです。幸い、『プライムニュース イブニング』でも引き続きキャスターを務めることになったので、4月にスタートした当初から話していたんですが、どうしても日々のニュースを伝えることが優先され、なかなか具体的に動けなかったんですよね。そんな中、6月にあのメモが出てきて、これはやらなければという思いで、同期で同じく母親でもある女性プロデューサーと相談して、スタジオの演出部分も話し合って、あの特集をしたんです。

――結愛ちゃんのメモの全文を、島田さんが読み上げるという形でした。

通常、あの長さの文章は時間の都合で抜粋することもあるんですけれど、「こんな言葉を小さな子供に書かせてしまう大人の社会って…」というこのショックを、どうやったら伝えられるかと考えて、そのまま全て読むというのが一番良いという結論になりました。

――お子さんを持つ島田さんが涙を堪えきれなくなりながら、声を絞り出すように最後までメモを読む姿はすごく印象的で、そのショックは視聴者にもすごく伝わってきました。

下読みのときから涙がにじんできて、私もベテランの域なので泣かないようにと思っていたのですが、どうしても耐えられませんでした。今まで放送で泣いたことは、たしか1年目か2年目くらいに、トークショーで先輩から優しい声をかけられて思わず感極まってしまった1回くらいしかなかったんです。放送が終わるまでは泣かないということを教わってきたので、東日本大震災のときも裏で涙を流していたんですが、今回はあまりにもかわいそうで、つい気持ちが高ぶってしまったんでしょうね。担当記者も取材中に涙ぐみ、生放送中のカメラマンさんもみんな泣いていたんですよ。

○最初に動かなかった自分たちを反省

――そして、今後も「児童虐待」という問題を継続して取材することになったんですね。

そうしようと心に決めました。結愛ちゃんは3月の時点で亡くなっていたのに、その時に動かなかった自分たちにも反省したんです。同じ子供が虐待された事件で、亡くなったニュースより、メモが出てきたニュースのほうが重大だなんてことはないですよね。少なく見積もっても、小さな子供たちは、1週間に1人のペースで、密室で殴られたり蹴られたりして亡くなってるんです。「そんなこと許せない」という普通の感情で伝えようと思い、あらためてまずは両親が起訴されたタイミングで、6月27日に放送しました。

結愛ちゃんの家族は、香川から東京に引っ越してきているんですが、最初に香川で児童相談所に通報した方の取材を記者が行い、私は、結愛ちゃんが亡くなった目黒のアパートを取材しました。声があがれば周囲も聞こえるような環境だと思ったんです。でも、香川で通報されたこともあって、声を出さないように、外に見せないように虐待されるようになり、実際に結愛ちゃんの声を聴いたり、姿を見たりする人はほとんどいなかったんです。お寺で行われた供養も取材したのですが、結愛ちゃんが寒空の中、裸足で立たされていたことや、東京に越してからはほとんど外出が許されていなかったという報道があったので、それを知った方が不憫に思ったのか、新品のかわいらしい靴が何足も供えられていたのが、印象的でした。

――8月1日の放送では、実際に児童相談所を取材されているんですよね。

はい。首都圏の児童相談所を取材させてもらいました。そこでは朝からたくさんの電話がかかってきて、幼い子供が体に傷を作ってやって来る場面にも遭遇しました。そういったことは頻繁にあるそうです。職員の皆さんが抱えている資料の量も膨大で、インタビューさせていただくと、休む暇もないほど忙しいとおっしゃっていましたね。

――今回の取材先を児童相談所にした狙いはなんですか?

最初は、目黒の事件がなぜ起きたのか、結愛ちゃんという子がどのように亡くなっていったのかということをお伝えしたんですけれど、取材をしていると、この1つの事象だけで「児童虐待」という問題の本質は見えてこないのではないかと考え、やはり多角的に調べていきたいと思ったんです。目黒の事件は、品川の児童相談所が面会しようとしたけれど子供に会えなかったということで、児童相談所の対応に批判が集まったんですが、実際はどうだったのかということを、今回取材しようと思いました。

――取材に協力してくれた児童相談所の印象はいかがでしたか?

すごく親身になって、1人でも多くのお子さんの命を救いたい、悲しい思いをさせたくないから、自分たちが働かなければいけないんだということをおっしゃっていましたね。時には、親御さんから子供を引き離すことをしなければないこともあるそうなんですが、そうすると「鬼!」とか「死ね!」など言われることもあるそうです。そういう中でも、親や保護者と向き合って、今後どうすれば虐待のない家になっていくのかを話し合ったり、児童相談所の中でも預かった子供を親と一緒にさせたほうがいいのか、保護したほうがいいのかと、それぞれのケースごとに真剣に議論しているようでした。

――そちらの児童相談所の方は、目黒の事件についてどのようにおっしゃっていましたか?

他の児童相談所のことなので、あまり多くのことは語らないですが、やっぱり悲しいことだとはおっしゃっていましたね。ただ、同じケースを自分たちが担当したら、防げたか防げなかったかは分からないけれど、そういうことが起こらないように自分たちもしなければいけないとおっしゃっていました。

●子供たちと接して本当に悲しかったこと

○虐待した親への取材も想定

――実際に児童相談所に踏み入れたのは、今回が初めてですか?

そうですね。お子さんのプライバシーもあるので、なかなか取材させていただくのは難しいんです。でも今回は、預かっている子供たちともコミュニケーションをとらせていただいたので、貴重な映像になっていると思います。ただ、本当に悲しいのは、そこにいる子供たちがみんなかわいらしくて、優しくて、明るいんですよ。家庭で母親に虐待を受けた子でも、心に傷を負っていると思うんですけど、「お母さんに会いたい」って言うんです…。現実には、そのお母さんに虐待を受けたから保護されているのに、「お母さんにこんなこと教わったんだ」とか「こんなことしてもらったんだ」って、お母さんの話をずっとするんですよ。

それを聞いていると、虐待があれば親御さんから無理やり引き離して保護すればいいという単純なことではなくて、もちろん命の危険がある時は別ですが、親子の関係をうまく改善してあげて、親が手をあげないようにして何とかお子さんを家庭に戻してあげることも、1つの目標として大切なんじゃないかなと思いました。昔と環境が違って、孤独な子育てになっていたり、貧困の問題もある中で、従来の家庭の機能としての母親や父親の役割が求められすぎて、追い詰められてるんじゃないかとも、今回取材して思ったんですよね。

――今後も継続して取材をされていくということですが、そうすると子供を引き離された親を取材するということも考えられているんですか?

そうですね。殺すところまでいくのは別ですけれど、子供に手をあげる親は、鬼や悪魔ではないと思うんです。自分だってもし環境が違って、自身が生きるのに必死で子供が全然言うことを聞かなかったら…と考えると、実は紙一重かもしれない。だから、社会として児童虐待の問題に向き合わなければいけない状況にまで来ているんじゃないかと思います。

――まさに、先ほどおっしゃられた「多角的な取材」ですね。この取材をされるようになって、ご自身のお子さんへの向き合い方への変化はありますか?

うちの2歳と3歳の男たちは「コラ!」って言うと散り散りに逃げるので、首根っこ捕まえて「ダメだって言ってるでしょう!」ってまた怒ったりするんですが、そんな子供たちが寝静まると、そういう風に怒鳴る幸せっていうんですかね、それがありがたいねという話を夫としたりしています。泣き笑いの毎日でてんてこ舞いなんですが、それが幸せなんだということを、あらためて実感するようになりましたね。

○社会全体で考えていく問題

――『プライムニュース イブニング』が始まる前に、島田さん、倉田大誠さん、反町理さんにインタビューさせていただきましたが、その際に反町さんが、島田さんに「子育て世代の代弁者」を期待されていました。まさにその役割を果たすような取材をされていると思います。

やっぱり自分がやらなきゃという気持ちは持っています。生活に密着したような軽い話題も好きなんですが、報道番組をやるからには、命というものが簡単に扱われないようにするという意識を常に持っていかなければならないと思っていますから。でも、この問題については、反町さんも密かに、いろいろ電話取材したりして、協力してくれてるんですよ。「島田、このニュース知ってるか?」って怖い顔で聞いてきて、「知らなかったです」って言うと、「あぁ、メールで資料送っとくから」って(笑)

――島田さんは前のインタビューで「反町さんという、知識に裏付けされた、どっしり構える人がいるので、受け止めてもらえる」とおっしゃっていたので、その点も実践できているんですね。

一方で倉田さんという36歳の独身男性がいるんですけど、彼にも思うことがあるみたいで、「こういう場合、彩夏さんはどう思います?」って、いろいろ話しかけてくれるんですよ。この問題は、子供がいる・いないということではなく、1人の人間として、社会全体で考えていくものだと思うんです。だから私も、母として接していきたいテーマではあるんですけれど、取材をするに当たっては、感情移入しすぎないように、気をつけるようにしています。

――昔、福岡で5人家族の車に飲酒運転の車がぶつかって、3人の子供が亡くなったという悲惨な事故があったとき、マスメディアが大きく取り上げたことで社会的関心が高まって、飲酒運転事故の件数が減少していくということもあったじゃないですか。今回の取り組みで、児童虐待が減っていくことになるといいですよね。

実際に国も動き始めているので、きちんとこれを継続して、みんなで議論していくということが大事になると思いますね。

○『コード・ブルー』vs反町キャスター、異色の対談も

――『プライムニュース イブニング』がスタートして4カ月が経過しましたが、ここまで振り返ってみていかがですか?

いろんなことがありましたが(笑)、キャスター同士の仲がすごく良いんですよ。最初はみんな初めましてだったので、試行錯誤の部分も多かったんですが、私なら今回の児童虐待のように、だんだん自分がこれをやりたいというテーマが出てきたり、若いアナウンサーからもどんどん取材に出て、こういうことをやってみたいという声が出てきたりして、いいチームワークになってきたと思います。

――劇場版『コード・ブルー』の山下智久さん、新垣結衣さんらメインキャスト5人が公開日の7月28日に、朝の『めざましテレビ』から帯番組をジャックする中で、『プライムニュース イブニング』は、対談相手にまさかの反町さんをぶつけましたよね(笑)

あれは衝撃でしたよね。5人に「分派活動は?」と聞いたり、「でも、その観点に立つとね」って切り込んだり(笑)。ああいうときって、普通俳優さん女優さんに名刺なんて配らないじゃないですか。でも、反町さんは1人1人に配ったそうですよ。『めざましテレビ』に出ているときも、スタジオの端からぬらりひょんのように見学してたそうです(笑)

――さすが、事前取材もしっかりされてらっしゃる(笑)。あれはすごく斬新で良かったので、これからも番宣ゲストが来たら、反町さんと対談させてほしいです。そうですね。うちの番組としても、意外性を出していきたいですね(笑)