コンビニ業界に詳しいライターの日比谷新太さんが、業界の裏事情を徹底レポートする当シリーズ。前回の“グミ戦争”に続き、今回取り上げるのはコンビニATMにまつわる話題です。ATMが設置されたことによって、店舗側が大いに喜んだこととは、一体何でしょうか。知られざるコンビニATM誕生の歴史に迫ります。

コンビニATM誕生…その時、店舗では

これまでコンビニにおける様々なサービスを取り上げてきた当連載ですが、なかでも皆さんがよく利用されているサービスといえば、コンビニATMではないでしょうか。

歴史を紐解くと、1999年9月17日に国内初のATM運営会社であるイーネットが設立され、同年10月8日にATM1号機が稼動したのがはじまり。現在イーネットは、ファミリーマートをはじめ中堅クラスのコンビニチェーンに、ATMを設置しています。

その約1年7カ月後の2001年4月10日には、アイワイバンク銀行(現セブン銀行)が設立され、同年5月15日にATMの稼動がスタート。コンビニATMは20世紀から21世紀への過渡期に始まり、その後飛躍的に伸びたサービスということができます。

当時、コンビニ利用客に「コンビニに欲しいサービスとは?」というアンケートを取ると、常にニーズNo.1だったのが「ATMを設置してほしい」という要望でした。そんな声を受けてコンビニATMは誕生したのですが、今ではその利用数は1日約300万件。「コンビニにATM」が当たり前の時代になりましたが、その創業時には様々な苦労があったそうです。

例えばアイワイバンク銀行が創業したころですが、セブンイレブンの各店舗には「アイワイバンクの新規口座開設を推進せよ」という大号令がかかっていました。口座獲得数を店舗別で競争させるため、毎週口座獲得数のランキングが発表され、獲得数が下位の店舗には厳しい指導が入りました。このため各店舗は、アルバイトスタッフの給与振込口座を無理やりアイワイバンクにしたり、店舗の近隣事業主に口座開設のお願いをする営業などを行ったといいます。

しかしながら改めて考えると、これはセブンイレブン加盟店主の強さを改めて認識できた出来事でもありました。口座開設目標を達成しても特にインセンティブが無いにも関わらず、セブンイレブンの新サービスを根付かせるために、FCオーナーも積極的に活動したのですから、ものすごいことです。

コンビニATMの登場で犯罪が減少?

そんなコンビニATMですが、利用件数を日別で分析してみると、毎月20日過ぎから月末にかけて利用件数が増えることがわかります。また偶数月の15日は年金支給日ですが、その該当日にも件数が伸びます。

ATMの利用とは、現金を引き出す行為ですので、一般的な心理としては何も買わずに退店するお客さまは少なく、「せっかくお金を引き出したのだから、何か買おう」という心理状態になります。そこでコンビニ各店舗では、これを売上アップに結び付けられないかと、試案を巡らせました。

例えば、年金支給日は高齢者のお客さまが多くご利用になりますので、レジ前に「和菓子コーナー」を特別に設置し、和菓子を大々的に販売してみました。また月末の金曜日には「デザートコーナー」「日本酒・焼酎売場」を充実させます。現金を持ち気が大きくなったお客さまが、ついつい購入してしまうようなこれらの工夫は、大いに功を奏したといいます。

また、コンビニにATMが設置されたことで、各店舗の店主が大いに喜んだことがあります。それは「入金作業」の手間が大幅に軽減されたことです。つまり、それまで金融機関にほぼ毎日持参し、本部に入金していた店舗の売上が、設置のATMから入金ができるようになったのです。

以前であれば、週末や連休時期など金融機関が休んでいる時には、数日間分の売上金が店舗に溜まっていました。さらに年末年始などになると、これが多い店舗だと1000万円以上になっていました。しかしコンビニATMの設置後は、店舗に多額の現金を置くことが無くなりました。また関連性は微妙ですが、このことによりコンビニでの犯罪が減少しているというデータもあります。



ところで、お店の運営には、「釣銭」が必要です。コンビニ各店舗では毎日、近隣の銀行へ行き、釣銭向け現金を両替する作業が発生しています。この釣銭現金の両替作業が、店舗設置のATMでできるようになれば、益々嬉しいことです。ただこれを実現するには、設置機器の大型化や、各ATMへ現金を輸送するという金融機関側のコストアップが不可欠となりそうです。

 

文/日比谷 新太(ひびや・あらた)

日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで: u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

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出典元:まぐまぐニュース!