マーリンズ・イチロー【写真:田口有史】

イチローのストレッチは永遠に続く」

 マーリンズイチロー外野手が41歳にしてメジャーでも際立つ圧倒的なスピードと強肩を誇る秘密について、地元紙マイアミ・ヘラルドが特集記事を組んだ。「イチロー・スズキがマイアミ・マーリンズに独特の準備を導入する」との見出しで報じている。

 メジャー15年目を迎える41歳の鉄人は、新天地で普段の所作からして異彩を放っているという。

「今季、新しいチームでの試合前に、イチロー・スズキも他の選手同様にリラックスする必要がある。他の選手同様にイチローはストレッチをする。だが、イチローは他の選手よりも先にストレッチをスタートさせ、そして、イチローのストレッチは永遠に続く」

 記事では、ゲーム前のイチローの様子についてこのように記述している。マリナーズ、ヤンキース時代から同僚やメディアを驚嘆させてきた入念な事前準備は、マーリンズのスプリングキャンプでも衝撃を与えているようだ。

「時に寝ている間もストレッチしているんじゃないかと思う」

 通訳を介して、こうジョークを飛ばしたというイチローについて、記事では「柔軟通」と表し、独特なトレーニング方法に触れている。

ウェートトレーニングを行わないイチローの“流儀”とは

「柔軟通はメジャーでウェイトトレーニングを行わない希少な存在の1人だ。その代わりに特別なマシーンを必要とする厳格な柔軟のルーティンを好む。狙いは見逃されがちな関節部分と血流の活性化だ」

 イチローは、マリナーズの本拠地セーフコ・フィールドなどにも設置していた鳥取のトレーニング施設「ワールドウィング」開発の8つのトレーニングマシーンを活用。関節などの柔軟性を高め、肩甲骨や骨盤部分に刺激を入れているという。

 このイチローの“流儀”が、パワー全盛のメジャーに衝撃を与えた圧倒的なスピード、そして13日のカージナルスとのオープン戦で今季実戦2つ目となる捕殺を記録した「レーザービーム」を生み出す強肩を、今なお維持している一因かもしれない。

 イチローはメジャー14年間で通算487盗塁、666内野安打、6つの内野二塁打を記録。故障者リスト入りしたのは2009年シーズン開幕時の胃潰瘍によるわずか1回。記事では、その卓越したコンディショニングを高く評価している。

「彼は世界で最も興味深い人間」と打撃コーチ

「16年、17年、同じプログラムです。毎日やりたいですね」と語っている本人は、記事によると、1日に4回もこの器具を用いたトレーニングを行うとされている。4回とは、起床後、スタジアムでチームがストレッチする前、試合前、そして試合後の自宅だ。

 現在、キャンプ地に設置されているトレーニングセットはスプリングキャンプ終了後、本拠地マーリンズ・パークの倉庫スペースに送られ、そこがイチローの自主トレの舞台となるようだ。

「彼の準備に関する全ての要素は注意深さにある。それこそ、彼を日本で強烈な尊敬の対象とさせ、41歳にして魅力的な存在とさせているのだろう」

 記事ではこう指摘。他の選手と一線を画すものは「プロ意識」という一言では、もはや片付けることはできない。マーリンズの打撃コーチ、フランク・メネチーノ氏は「彼は世界で最も興味深い人間だ」と脱帽しているという。

 マーリンズは1993年創設の歴史で2度のワールドシリーズ制覇を果たしているが、度重なるファイヤーセールを繰り返した結果、長年クラブを支えたレジェンドやベテランの名手は多くない。一流の流儀はプレーオフ進出を目指す若きチームに好影響を与えているようだ。