“ん”って一体何!? “ん”という言葉に込められた秘密―『ん―日本語最後の謎に挑む』
言葉の冒頭につくと、どう発音していいやら困る「ん」。
しりとりで最後につくと負けになる「ん」。
あかさたな50音の中で一際不思議さを放つ「ん」。
一体「ん」って何だ!?
考えれば考えるほど分からなくなってきた。
そんなこんがらがった頭を解きほぐす一冊の本がある。
その名も『ん』。
正式な書籍タイトルは『ん―日本語最後の謎に挑む』(山口謠司/著、新潮社/刊)。
本書によれば「ん」という語は母音でも子音でもなく、清音でも濁音でもない語であるが、その成り立ちは意外と新しいという。
■「ん」は実は新しい言葉
実はこの「ん」という語、江戸時代の学者で『古事記伝』を著した本居宣長によれば、昔の日本には存在しない語だったという。
「上代特殊仮名遣」という仮名遣いで書かれた『古事記』(712年、太安万侶によって書かれたと言われる日本最古の歴史書)は、「ん」と読む仮名が見当たらない。「陰陽」という言葉も「おんみょう」ではなく「メヲ」と読むなど、「ん」が一切ないのだ。
これは同時期に書かれた『日本書紀』も同様であるほか、飛鳥時代から奈良時代にかけて使われた「万葉仮名」にも「ん」に当てはまる言葉はない。
では、「ん」はどの時代から表れたのか。
現在のところ、カタカナの「ン」という言葉が使われたもっとも古い写本は、龍光院に所蔵されている『法華経』(1058年)、ひらがなの「ん」になると、それよりも70年近く遅くに書写された『古今和歌集』(1120年)だと言われている。
つまり、「ん」は今のところ、11世紀から12世紀にかけて生まれたということになる。1000年の歴史があるとはいえ、「ん」が日本語の中でも比較的、新しい語であることには変わりはない。
■意外と多い?“ん”で始まる日本語
“ん”で始まる言葉はあまり聞かない。というか、日常ではほとんど聞かない。
しかし、一切ないのかというとそうでもない。
『役に立つかもしれない「ん」辞典』というウェブサイトには「ん」から始まる言葉が列挙されているが、そこを見てみると「ん」から始まる言葉は結構多くある。例えば「篠崎」と書いて「んのざき」と読む苗字や、秋田の「無明舎」という出版社がかつて発行していた「んだんだ文庫」などだ。
有名どころではチャド共和国の首都が「ンジャナメ」である。
メディアファクトリーから出版されている『日本人の知らない日本語』(蛇蔵&海野凪子/著)がベストセラーになるなど、日本語の新たな一面に光を当てる本が注目を浴びているが、本書『ん―日本語最後の謎に挑む』からも「ん」という言葉を通して、新たな日本語の一面を知ることができる。
自分たちが使う言葉を見直す良い機会ではないだろうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)
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