機械部品などの修理を行うアベの工場(埼玉県川口市で)=三浦邦彦撮影

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[金利1% 検証日銀]<中>

 「中小企業の置かれている状況を理解していない」。

 日本銀行が16日の金融政策決定会合で決めた1・0%程度への利上げについて、埼玉県川口市で機械工具の修理を行う中小企業「アベ」の阿部嵩社長(44)は不安を口にする。

 融資元の信用金庫が利上げを受けて貸出金利を引き上げれば、年間の返済負担は10万円程度増える見通しだ。中東情勢の悪化前に比べ、機械部品の仕入れコストは2割上昇したが価格への転嫁は難しいという。

 企業だけではない。日銀の利上げは、住宅ローン金利などを通じて家計にも影響し、借り手は利払いの増加に直面することになる。

 ただ、みずほ総合研究所の試算では、今回の利上げによるプラスとマイナスの効果を差し引くと、家計全体では年1兆円のプラスとなる。受け取り利子が増えるからだ。

 利上げには、借り入れコストの上昇を通じて消費や投資にブレーキをかけ、景気の過熱や物価の上昇を抑制する効果がある。

 2024年3月の大規模な金融緩和策の終了から数えると、日銀の利上げは5回目となる。政策金利はマイナス0・1%から1%台に到達した。銀行も貸出金利を段階的に引き上げており、信用力の高い企業に1年以内の短期資金を貸し出す際の基準となる「短期プライムレート」は24年3月に年1・475%だったが、現在は年2・125%となっている。

 もっとも、16日の決定会合後の記者会見で、日銀の内田真一副総裁は「政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持される」と説明した。「利上げ自体は経済・物価に影響する」とも述べたが、物価の上振れリスクに利上げで対応することは「適切」と述べた。

 段階的な利上げで「金利のある世界」が戻ってきたが、エコノミストは「利上げによる景気の下押し懸念は小さくなっている」(みずほ証券の小林俊介氏)などの見方を示す。

 足元では、緩和的な金融環境を裏付けるように企業の資金需要は伸びている。日銀の「貸出・預金動向」によると、銀行の貸出平均残高の5月の前年同月比の伸び率は6・3%になった。背景には、企業によるAI(人工知能)関連の設備投資の増加などがある。

 全国地方銀行協会の八木稔会長(静岡銀行頭取)は17日の記者会見で、「企業は環境変化がある中で、チャンスと捉えて成長に向けて投資することが必要だ。資金ニーズに応えていくことが重要だと思う」と述べた。

 しかし、16日の決定会合では、欠席した植田和男総裁を除く8人の政策委員のうち、浅田統一郎審議委員が景気の下振れリスクを重視して利上げに反対した。追加利上げを模索する日銀には、マイナス影響を見極めた判断も求められる。