「限りなく白く」三浦あい 何者でもなかった私が髪に熱を宿すワケ
北海道発の7人組アイドルグループ「限りなく白く」。何者でもなかった一人の少女は、その歴史を長い黒髪に刻み込み、静かな情熱を宿すアイドルになった。初の全国流通盤「青春の種」発売を記念したソロインタビュー3部作。三浦あいの第1部は、形に残る一枚に込めた切実な祈りを語った。(推し面取材班)
新作の発売について尋ねると、三浦の声が弾み、胸元あたりまで伸びた長い黒髪がサラッと揺れた。
「加入してから新曲のリリースは何度か経験してきましたが、全国の皆さんに『形に残るもの』としてお届けできるのは初めてです。決まった時は本当にうれしかったですし、まだ少し信じられない気持ちもあります」
ジャケットには、一輪の白い花が咲く意匠が施されている。全国のCDショップに「かぎしろ」の存在が刻まれることへの感動と興奮が、わずかに上気した頬の色からにじみ出ていた。
「青春の種」には、自身の葛藤と深く重なるフレーズがあるという。
「2番Aメロの『戸惑い不安が寄せるのは 譲れない守りたいものがあるから』という歌詞です。アイドル活動をしていく中で、自分に足りない部分に気付いて『このままの私でいいんだろうか』と悩んだ時期もありました」
こぼれ落ちた言葉の端に、微かな震えが混じる。周りとの比較や、届かない理想。一人、自室で自問自答を繰り返す苦しい時間は、心を削り、同時にアイドルとしての感性を研ぎ澄ませていった。
自分の弱さと向き合うのは、とても怖いことだ。けれど、その痛みから逃げなかった者だけが、歌に確かな体温を宿すことができる。
「そういう時こそ『限りなく白く』の三浦あいでありたいと思っていたので、当時の気持ちと重なってすごく好きな歌詞なんです。いつも共感しながら歌っています」
ステージ上で体の一部のようにふわりと舞う黒髪。これは年輪のように刻み込まれた「アイドル・三浦あい」の記憶そのものだ。
「オーディションを受けた時は、まさか自分がメンバーになれるとは思っていませんでした。当時はボブだったんです」
何者でもなかった少女が、運命の扉を叩いた日から2年近くが経った。首筋を見せていた短い髪は、季節の巡りと共に伸び続けた。言葉を紡ぎながら、黒く艶やかな毛先を指先でそっとなぞる。
「何者でもなかった自分を受け入れてくれたグループが大好きだという気持ちを込めています。加入してからの楽しいことや辛いこと、歩んできた道のりの全てが、この髪の毛1本1本にまで残っていればいいなと思ったのが伸ばし始めた理由です」
歓声に包まれた喜びも、思うように動けず唇を噛んだ悔しさも、すべてがこの黒髪に吸い込まれている。先輩のしなやかなダンスに憧れて伸ばし始めたという無邪気な動機は、いつしか歴史を背負う重みへと変わった。
「でも、今すごく悩んでいて。このままだと、あと2、3年もすればラプンツェルくらいになってしまうんですよ」
そう言って少しだけ表情をほころばせた。
「さすがにそこまで行くと、地下鉄のドアに髪を挟まれそうで不安なので(笑)。ラプンツェルにも憧れますが、毎日のドライヤーが大変ですから、適度に切りつつ今くらいをキープできたらなと思っています」
伸ばした髪を自嘲気味に笑う顔の裏には、どんな壁があっても乗り越えようとする熱意が宿っている。そしてその熱意は、歌声にも確かな輪郭を与えていた。
「ファンの方によく『声が通るね』『輪郭がはっきりした声だね』と言っていただけるんです。決して声が大きい方ではないんですが、リリースイベントで2階席や3階席がある時は『そこまで声を届けるぞ』と意識して大きめの声を出しています」
取材直後に臨んだ東京単独公演。ステージ上でターンを決める三浦の長い髪が衣装のスカートと一緒に、ふわりと風をはらんでいた。伸ばした髪とその歌声は、この日も客席の心に真っ直ぐに届いていた。
