「初めて、”好き”という感情が存在していることを知った」唐田えりかと4つ年上の姉

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小さいころから「姉が私より先に時間や感情を経験している」と感じていたという女優の唐田えりかさん。

「努力をする」ということ、「悲しい」ということ、そして「好き」ということ。4つ年上のお姉さんが自分の何年か先を生きて、感情を経験しているのをずっと見てきたと言います。身近に年上の家族がいるあたたかさ、心強さを綴ります。

写真は、福江島の鬼岳で写真家の阿部裕介さんに撮り下ろしていただきました。

縄跳びにスパルタな姉

私には姉が二人いる。長女はTHE長女といった、しっかり者で計画的にきちんと動く人間だ。

私は妹という立場から、姉の背中をずっと見てきた。

私より先に様々なことを経験し、逞しくなっていく姿を、追いかけるように見ていた。

今回はそんな姉のことを綴らせていただきます。

長女は私の4歳上なので、幼稚園に入ったころには姉は小学生だった。

私の地元は小学生になると、冬頃に大々的に「縄跳び大会」が行われる。

低学年は前飛び、中学年からは二重跳びで競い合う。

小学生の姉は、この「縄跳び大会」に異常に気合いが入っていた。

その気合いは、なぜか出場できない幼稚園生の私にまで向いてきた。毎日毎日、日が暮れるまで課題を科され、その回数を飛ばないと家に入れないほどだった。

泣いても、転けても、「甘えんな!!」と言われた。いつも優しい姉なのに"縄跳び"となると、怖かった。

怖いから、私はひたすらに駐車場で飛びまくった。

そんな特訓の日々を重ねていると、いつからか二重跳びを年長生の時点で相当飛べるようになっていた。

周りに二重跳びを飛べる友達がいなかったので、いつも昼休みに大勢の友達の前で自慢するほど大成長していた。

そして当たり前のように、姉二人は縄跳び大会で毎年メダルを手にしていた。次女はいつも優勝していた。なんなら、飛びすぎて一人だけ残り続け気まずくなってわざと引っかかって辞めていたくらいだった。スパルタ長女は、頑張って頑張って優勝か、二位や三位になるときもあった。

一番頑張ってる姉が、二位や三位になると、なんだか複雑な思いになった。

トイレの個室に呼び出され……

姉の初恋は小学生の頃だった。

トイレに入ってる姉に「えりかー!ちょっと来て!」とリビングまで届く大きな声で呼ばれた。

トイレに向かうと、姉は便座に座っていた。なに?と言うと、扉を閉めてくれと言われた。

まじか。と思いながら従い、狭いトイレの部屋に私も入り、扉を閉めた。

「えりかの幼稚園の同級生に◯◯君っているんだけど知ってる?」と聞かれた。知らない。と答えると、「そう。その子にチョコを渡してほしい。渡してくれたら、えりかにチョコあげる」と言われた。

私は、え?ほんと?チョコくれるの?と思い、いいよ!!!と大返事をした。

そして数日後、姉と二人で自転車に乗り、姉が作ったチョコを持って、どこの誰かわからない男の子にチョコを渡しに向かった。

〇〇君の家でピンポンを押すと、すぐに出てきた。

〇〇君という子は、この子か。幼稚園では何組なんだろうか。と思いながら、自転車にまたがりながらチョコを渡した。

すると、もう一人男の子が中から出てきた。それを確認した姉は、自転車をしっかり止め、自転車から降り、もう一人の男の子に照れくさそうにチョコを渡していた。

どうしてチョコを渡したんだろう

帰宅後、姉から残り物のチョコをもらい、私は不思議な気持ちで黙々と食べていた。もう一人の男の子はお兄ちゃんだったらしい。なんで姉はもう一個チョコを持っていたのだろうか。そもそもチョコをなぜ人に渡したのだろうかと。

私はいつも1日にあったことを仕事から帰宅する母に話していた。その日も、今日あったこと、不思議に思ったことを話した。

すると母は、「えりかもついていって心強かったと思うよ。好きな子に思いを伝えるのは緊張するからね」と言われた。幼稚園生の私は、そのときに初めて、"好き"という感情が存在していることを知った。

姉はどうやら"好きな子"に思いを伝えた。

今日はそういう日だったらしい。となると、私は?!と急激に恥ずかしい気持ちになった。

誰かも知らない男の子にチョコを渡してしまった。姉のチョコの食べたさに負けた。

私は次の日から幼稚園で、〇〇君を探すようになってしまった。〇〇君は、私が彼のことを好きだと勘違いしてるだろう。恥ずかしすぎる。と思えば思うほど、私はなんだか〇〇君のことで頭がいっぱいになってしまった。

私の初恋はそんな始まりだった。結果的に私は、その男の子に6年間チョコを渡し続けることになった。

先に時間や感情を経験している

姉の小学校卒業式、私は二年生だった。

小学校を卒業しても、中学では別の小学校の人と合流するだけでお別れはない。

なのに姉は、びっくりするくらい泣いていた。

家に帰宅しても一人部屋にこもり、わんわんと泣いていた。

私は、中学でも一緒なのに何でそんなに悲しいの?と聞いてみた。

すると姉は、「皆んなとの小学校が終わったんだよ!!」と怒られた。私はそれ以上何も言わず静かに姉の部屋から退散した。

幼稚園の卒園式で私は泣かなかった。

小学校を卒業するときは悲しい気持ちになるのだろうか。"終わる"って悲しいことなのか。

姉が私より先に時間や感情を経験していることを、追いかけるように私も色々なことを経験していった。

その度に、あのときの姉の感情はこういうことだったのか。と知るようになった。

【スタッフ】撮影/阿部裕介 スタイリング/道端亜未

【衣装】スタイリスト私物

【後編】「結婚するってなんだろうか。母になるってなんだろうか」女優・唐田えりかが見た姉