サウナの「整う」は気絶と同じ…約6000体の遺体を解剖した法医学者が教える「サウナで突然死しない」ためにやるべきこと

写真拡大 (全5枚)

6000体近くの遺体と向き合ってきた法医学者は、「死の予兆」を知っている。サウナ、飲酒、タバコ、過重労働、睡眠不足……私たちが見過ごしがちな習慣が、どこで身体の「綱渡り」を崩すのか。

東北医科薬科大学教授で、ドラマ『ガリレオ』の法医学監修でも知られる高木徹也氏が、新著『私たちはなぜ死ぬのか 法医学者が語る「永く、よく生きるための技術」』(CEメディアハウス)で、日本人に多い死因や突然死のメカニズム、災害・事故で生死を分けた行動などを、法医学の視点で解説する。

前編記事『約6000体の遺体を解剖した法医学者が警告「お酒を飲んで身体にいいことは一つもない」飲酒がもたらす本当のリスク』より続く。

心疾患、脳血管疾患に注意

サウナブームが続いています。日本では80℃以上のサウナ室で身体を温め、その後、冷たい水風呂に浸かることをくり返す「温冷交代浴」が一般的です。温熱効果による血管の拡張と血流の活性化、心肺機能の向上など、サウナの効果はいろいろとあります。

ただ、サウナがきっかけとなって亡くなる人がいるのもまた確かです。サウナブーム になって、サウナで亡くなる人が増えたという実感はなく、そのようなデータもありません。ただ、昔からサウナで亡くなる人はいて、私もこれまでに何人か解剖したことがあります。サウナで亡くなる方の死因はさまざまですが、多いのは虚血性心疾患、不整脈、脳血管疾患です。

サウナや浴室といった高温環境下では、血管は拡張し、血圧は低下します。血圧が低下すると、自律神経の一種である交感神経が働いて心拍を速め、心臓の酸素需要量が増加します。心臓の冠状動脈に硬化症がある人は、このような状況では酸素の供給が間に合わず、虚血性心疾患を発症しやすくなるので特に注意が必要です。

また、高温環境から急に水風呂などの低温環境にさらされると、今度は血管が急激に収縮し、脳血流が増加します。脳の血管に動脈瘤などがあれば、これによって脳出血や くも膜下出血などの脳血管疾患を発症することがあります。

サウナで「脂肪が燃焼して痩せる」は間違い

また、お酒を飲んでからサウナに入って眠気を催し、そのまま寝てしまって熱中症で亡くなる人もいます。サウナで亡くなったご遺体にみられる共通所見は、死後、発見されるまで高温環境にさらされているため、熱傷のように皮膚が剥がれた状態であること、臓器が熱の影響を受けて柔らかくなっていることです。ご遺体を運ぶときに、薄い表皮がズルッと剥けることもあります。

サウナには高温の室内にいることで新陳代謝を促す効果があり、それをダイエット効果と勘違いしている人がいます。確かにサウナの後には体重が減りますが、これは発汗や皮膚から失われる水分の増加に伴う脱水によるものであり、脂肪が燃焼して痩せているわけではありません。しかし、実際に体重が減るのをみるとうれしくて、長いサウナ浴をしてしまい、身体に負担をかけている人もいるのではないでしょうか。

サウナ好きの人たちが言う「整った」状態を追求し過ぎるのも考えものです。「整う」は、温冷交代浴によって生じる「トランス状態」を指していると思われます。「整った」状態が脳内で分泌される「快楽物質」といわれるホルモンに由来するものならいいのですが、脳血流の低下によって生じる「脳虚血」である可能性も否定できません。

サウナの「整った」は「気絶」と同じ?

みなさんも、食事をした後やお酒を飲んだ後にサウナに入り、気持ちよくなってうたた寝をしてしまった経験があるかもしれませんね。しかし、実際には、あれはうたた寝ではありません。医学的には「一過性脳虚血」の状態、つまり「気絶」なのです。

食事やアルコールを摂取した直後には副交感神経が優位になり、脳への血流が減少します。さらに入浴すると温熱効果によって血管が拡張し、血圧と脳血流が低下して意識を失うことがあるのです。

では、サウナで突然死してしまわないようにするにはどのようにすればいいのでしょうか。サウナ好きの人には言いづらいのですが、これまでの入り方は改めてもらわなければならないかもしれません。

私がおすすめしたいのは、サウナ室で5分間温まったら、最後にシャワーで冷たい水をサッとかけて上がる、というものです。サウナ好きや「整った」状態を追い求めている人はガッカリしてしまうかもしれませんね。

しかし、健康になるために入っているサウナで命を落としては本末転倒です。自分の体調や持病を考えつつ、短時間だけ楽しむことをおすすめします。

・・・・・・

【もっと読む】「最近、蚊に刺されない」と思ったら病気の前兆かも…5000体以上を検死した法医学者が警鐘を鳴らす、夏に潜む「死の落とし穴」

【もっと読む】「最近、蚊に刺されない」と思ったら病気の前兆かも…5000体以上を検死した法医学者が警鐘を鳴らす、夏に潜む「死の落とし穴」