【内部文書入手】千葉商科大「クーデター」の全内幕…理事長が告発した”密室解任”で崩壊する私大ガバナンス
千葉商科大「クーデター」の深層
千葉商科大学を運営する学校法人「千葉学園」でクーデターが勃発した。
前編『【スクープ】好調「私立大学」(千葉商科大)でクーデター勃発! ハラスメントをネタに「密室辞任要求」、緊迫の理事会3時間の攻防』で見て来たように、同校は少子化時代のなかで志願者数を大きく伸ばし、“勝ち組私大”とも言われ始めていた矢先の出来事だった。
その運営法人で、理事長解任をめぐる激しい権力闘争が勃発していたのである。
理事長を中心とする改革派に対して、事務局長と外部理事が多数派を形成し、理事長に辞任を求める――。その過程では、長期在任理事と事務局が結託する私立大学ガバナンスの問題点を象徴するような実態も浮上した。
では、理事長側は騒動をどのように見ているのか。
今回、編集部では理事長・内田茂男氏が職員に配布した「理事長声明」を入手。それをもとに、理事長側が主張する“クーデター”の実相と、そこで語られたガバナンス崩壊への危機感を見て行こう。
理不尽なクーデターへの反論
理事長声明は、謝罪から始まっている。
「教職員の皆様がご承知の通り、5月に入り、わが千葉学園の経営は深刻な混乱に陥っています。理事長として責任を痛感しています。誠に申し訳ありません」
そのうえで内田氏は、自身について「後任が見つかった段階で早期に辞任する」と表明。一方で、今回の理事会開催を主導した理事2名と、それに同調した常務理事についても、責任を取って辞任すべきだと主張した。
「唐突かつ理不尽な理事会開催を引き起こした理事2名と、その動きに同調した常務理事は、私と同様、経営の混迷への責任を取り、早急に身を引くことが経営の正常化につながると信じます」
声明文全体を通じて内田氏が強く問題視しているのは、ハラスメントの告発そのものではなく、「手続き」だった。
声明文によれば、学園の規程では、ハラスメント事案が申し立てられた場合、「中立的な調査委員会を設置すること」、「双方への聞き取りを行うこと」、「客観的な事実認定を行うこと」が定められているという。
にもかかわらず、露崎洋事務局長らは、正式調査による事実認定を待たず、臨時理事会による理事長解任を先行させた――。内田氏はそこに「不可解かつ非合理的な動き」があったと主張している。
つまり、今回のクーデターを目的とした理事会運営そのものを問題視しているわけだ。
声明文にはこうある。
「公式な事実認定という不可欠なプロセスを意図的に飛び越え、理事会の場で性急に理事長解任を強行しようとする今回の動きは不適切である」
「正規のプロセスを無視して理事長人事を決めることは、ガバナンスの原則に反し、本法人の社会的信用を損ないかねない」
そして、不当な手続きによるクーデターについては、争う姿勢を鮮明にした。
「私学法に基づき、その無効を訴える法的対抗措置を徹底して執る覚悟である」
最大の犠牲者は「学生」だ
編集部は事実関係を質すために同大学の広報窓口に取材を申し込んだが、「お伝えできることはございません」とのこと。
そうした中、同大学同窓会には危機感が広がっている。同窓会幹部によれば、混乱を受け、改革派理事のうち2人がすでに辞任届を提出したという。
うち一人は、昨年4月に付属高校校長に就任したばかりの高井宏章氏。元日本経済新聞記者で、現役時代に高井浩章名義で執筆した『おカネの教室』は10万部超のベストセラーとなった。関係者によれば、高井氏は来年3月をめどに校長職も辞任する意向を示しているという。
また、「改革の旗頭だった宮崎緑学長が辞めてしまうのではないか。そうなったら大学は終わる」という声も挙がっている。
理事会混乱の最大の犠牲者は学生であることは、言うまでもない。
日本大学の問題を皮切りに、現在、大学ガバナンスの刷新を求める議論が続いている。今は、学生数の減少に伴い、改革の成否が個々の大学の将来を決める局面とも言える。
次ページからは、理事長・内田茂男氏の声明文の全文を掲載しておこう。
内田理事長「声明文」全文
2026年5月
理事長声明 学園の経営正常化と経営刷新の提案について
教職員の皆様がご承知の通り、5月に入り、わが千葉学園の経営は深刻な混乱に陥っています。理事長として責任を痛感しています。誠に申し訳ありません。本来、学園の発展をリードすべき我々経営陣が、教職員の皆様の足を引っ張る事態を引き起こしたことの罪深さは、どれほど説明と謝罪を重ねても償い切れるものではありません。
事態の収拾が急務ですが、以下でご説明するような経緯により、正当かつ透明なプロセスを経て早期に経営を正常化することが困難な状況にあります。
私自身は、理事長として混乱の責任を重く受け止め、適切な後任が見つかった段階で早期に辞任することを決意しました。唐突かつ理不尽な理事会開催を引き起こした理事2名と、その動きに同調した常務理事は、私と同様、経営の混迷への責任を取り、早急に身を引くことが経営の正常化につながると信じます。
1.経緯
今回の経営の混乱の発端は、1日に露崎理事(事務局長)名義で送付された臨時理事会の開催請求でした。私のハラスメント事案の認定と解職・解任の審議を求める内容でした。当該請求は不当であり、私は、露崎理事を含む理事2名の解任を審議事項に加え、15日の臨時理事会の開催を決めました。
私学法では、理事から請求があった場合、請求から5日以内に理事長は理事会開催を決めねばならないと定められています。拒否すれば、請求者の主催により、理事会が開催されることとなります。性急な理事会開催は経営の迷走を深めるだけと憂慮しましたが、私には他の選択肢はありませんでした。
事務局長らはハラスメント事案を理事長解任の根拠としていますが、本学の規定は、事案の申立てがあった場合、中立な調査委員会を設置し、双方からの聞き取り等の客観的な事実確認を行うことを厳格に定めています。
現在、その規程に従い、強力な調査権限を持つ監事主導で正常なプロセスが進行中であり、理事会としてはその結果を待って私の理事長としての適格性を判断できる状態にあります。
理事両名が、こうした正常なプロセスを飛び越え、いきなり臨時理事会の請求という手段に訴えたことは、不可解かつ非合理的で、私には学園の利益につながる行動とは到底思えません。両理事を制止するどころか、同調して行動を後押しした常務理事の判断も適切とは思えません。
2.私の真意
15日の臨時理事会では、冒頭に私が「学園のガバナンス正常化と適正な調査の実施について」と題した声明を読み上げました。それは以下のような趣旨でした。
・公式な事実認定という不可欠なプロセスを意図的に飛び越え、理事会の場で性急に理事長解任を強行しようとする今回の動きは不適切である。
・私自身のハラスメントの疑いについては、外部弁護士の助言に基づき、現時点では見解の表明などは差し控える。この問題は、正規のプロセスを通じ、公正かつ客観的な証拠に基づいて行われるべき性質のものである。私は、規程に基づく正式な調査には全面的に協力し、真実を明らかにする所存である。その結果を踏まえ、理事会は適切に私の進退を決定できる。
・私の本意は、学園の経営正常化と健全な発展にあり、理事長という地位に固執するものではない。正規のプロセスを無視して理事長人事を決めることは、ガバナンスの原則に反し、本法人の社会的信用を損ないかねない。
・不当なプロセスによる解任に対しては、私学法に基づき、その無効を訴える法的対抗措置を徹底して執る覚悟である。
私は、拙速かつ不透明なプロセスで理事長人事という重大事を取り扱い、性急な臨時理事会の開催によって解任を求めた両理事と、一体となって行動した常務理事の3名に対して、理事会が毅然とした対応を取るものと期待していました。審議の結果が経営の正常化へ道を開くものと確認出来たら、私自身の辞意を表明し、辞任の時期は常任理事会に一任するつもりでした。
15日の臨時理事会は、混乱を速やかに収拾する最後の機会でした。その好機を逸したことで、私は学園のガバナンスの機能不全と経営の不安定化への懸念を一段と深めました。
学園経営には、教職員の皆様の経営陣に対する信頼が不可欠です。しかし、残念ながら、今回の混乱を通じて、経営陣と教職員の皆様との信頼関係は大きく損なわれてしまいました。事ここに至っては、混乱を招いた責任を取り、私自身はもちろんのこと、常務理事および両理事も法人の経営の中枢からできるだけ早期に身を引くべきだと私は考えます。
仮に私が理事長を退任した場合でも、現在進行中の私のハラスメント疑惑に関する調査は徹底的に行われるべきです。その公式の調査には全面的に協力する姿勢を改めてここに表明します。詳細は公表できませんが、今回のハラスメント事案の取り扱いを巡っては、他にもコンプライアンス上の重大な懸念が浮上しています。そちらの問題の調査も、外部弁護士など公正な第三者の力を借り、徹底して行われるべきと考えます。
最後にあらためて、この声明の本意は、学園の経営とガバナンスの一日も早い正常化にあります。今回の混乱は、経営を預かる理事長として痛恨事です。不明を恥じ、関係者の皆様にご心労とご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
内田茂男
さらに記事『日大「内定辞退4割」の衝撃…!平均年収900万、退職金7000万でも学生に逃げられる異常事態』でも、大学ガバナンスの混乱の末路について報じている。
