「痕跡があったのでは」巨人・阿部前監督 元刑事が指摘する警察が現行犯逮捕に踏み切った理由…長女の児相への相談は「悪いとは思えない」
5月25日夜、衝撃的なニュースが一斉に駆け巡った。長女(18)に暴力を振るったとして、プロ野球・巨人の阿部慎之助前監督(47)が警視庁に現行犯逮捕されたのだ。
各社報道によれば、阿部前監督は東京・渋谷区にある自宅で、次女とケンカしていた長女に注意したところ、言い返されたことで長女の胸ぐらを掴む、押し倒すなどの暴行を加えたという。
長女から連絡を受けた児童相談所は、同日午後7時すぎに「(長女が)父親から暴力を受けた。殴られた」と110番通報。当時、妻と次女が事件を目撃していたといい、阿部前監督の呼気からはアルコールが検出されたとのこと。阿部監督は調べに対し、「娘が言い返してカッとなった」と事実を認めている。
「長女は阿部前監督とのトラブルを対話型の生成AIサービス『ChatGPT』に相談し、回答に基づいて児童相談所に連絡したといいます。警視庁渋谷署は児童相談所から連絡を受け、阿部前監督を現行犯逮捕しました」(全国紙社会部記者)
その後、警視庁は証拠隠滅や逃亡のおそれがないとして、阿部前監督を26日未明に釈放した。今後は任意で捜査を続けているという。
事件を受けて監督辞任を表明し、26日午前に開いた記者会見で「伝統ある巨人軍という監督の名も汚してしまって、とても深く謝罪したい気持ちでいっぱいでございます」と謝罪した阿部前監督。プロ野球シーズン途中での監督退任は、球団史上初となった。
いっぽう記者会見では、代理人から長女による手紙が読み上げられた。父の逮捕は予想外の出来事だったようで、トラブルの経緯についてこう記されていた。
《父とのこのような大がかりなけんかは初めてのことであり、ChatGPTに相談した結果、匿名で相談できる児童相談所があるということで、電話をさせていただきました。どのようにすればわからないと相談しましたが、どうすればいいかといった意向が聞かれることなく警察に通報されるという結果になってしまいました》
長女によれば、殴る蹴るといった事実はなかったといい、《父が目前で連行される姿をみて、私は泣き崩れてしまいました。みなさんをお騒がせしてしまい大事になったこと深く反省しております》と詫びていた。
球界に留まらず、日本中に激震が走った事件だが――。
「昔と違って今の時代は、家庭で起きたトラブルも事件として扱われる傾向にあります」
こう語るのは、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏。阿部前監督が逮捕された背景などを分析してもらった。
「娘さんも、ここまで大事になるとは思っていなかったのではないでしょうか。“110番通報はさすがに行き過ぎだけど、『ChatGPT』に勧められた児童相談所に相談する分には問題ないだろう”という認識だったのかもしれません。いっぽう児童相談所は夜間に通報を受けたということもあり、娘さんから事情を聞いて“緊急”と判断して警察に通報したのかもしれません」
ではなぜ、駆けつけた警察は注意などに留まらず、阿部前監督をその場で逮捕したのだろうか?
「令状を不要とする現行犯逮捕だったと報じられていますが、厳密には、罪を行い終わってから間がないことが明らかに認められる場合の準現行犯逮捕ではないかと思います。
犯行の現認がなくとも、“犯人として追跡されている”、“凶器などを所持している”、“体や衣服などに犯行の痕跡がある”、“誰何(すいか)されて逃走しようとした”のいずれかに該当する場合に、逮捕される可能性があります。
阿部前監督の件では、自宅に警察が駆けつけた際に“暴行を受けた”と認められる痕跡があったのではないかと思われます。また、阿部前監督が飲酒していたというのも影響したのかもしれません。今後は任意捜査となりましたが、警察が検察に書類送検をした後に不起訴になるのではないでしょうか」
今回の事件では、児童相談所が警察に通報したことで阿部前監督の逮捕につながった。だが一部SNSやネットでは、児童相談所に連絡した長女を非難する心ない声も上がっている。そうした状況に、小川氏はこう指摘する。
「巨人は『常に紳士たれ』と掲げているので、娘さんが被害届を出さなかったとしても、逮捕された阿部前監督が辞任するのは当然の流れだったのではないでしょうか。娘さんが父親とのトラブルを児童相談所に相談したことは、一概に悪いとは思えません。
ただ、『ChatGPT』などのAIに頼りがちな最近の風潮の問題が浮き彫りになったのかもしれません。AIはとても便利で素晴らしいツールではありますが、ときに誤った情報を伝えてくることもあります。どんな世代であれ、AIに提示された回答をそのまま鵜呑みにするのは危険です。大人も子供も、AIについて学習する必要性が高まっているのではないかと思います」
