杉本ラララの「死神ドリーム」半ばやけくその“転職”が生んだ大逆転劇 SNS大バズリの裏側を明かす
【ききみみ 音楽ハンター/杉本ラララ・第2回】今年ソニーとメジャー契約後初となる作品、全4曲収録のEP「死ぬとき笑えるように」を13日に発売したシンガー・ソングライターの杉本ラララ。正統派としての長い音楽歴を持ちながら、昨年6月に突如「悪魔に魂を売り」、8月に「死神に転職したおぞましきデスメタルシンガー」を名乗り始めた。
奇抜なメーク、高圧的なもの言いで面白すぎるMCを展開。瞬く間にSNSで大バズリ。その後の生活を激変させた方向転換は緻密な戦略だったのか、それとも気まぐれか。杉本は「全く戦略とかではない」と言い切った。
“人間時代”は「まあとにかく優しい男だったんだ。いろんな人に気を遣い、お客さんにも気を遣いながら、ぺこぺこぺこぺこやってたんだけれども」と回想。「そんな自分にちょっと嫌気がさしてきて。もう人間年齢40歳を超えて、にっちもさっちもいかないと感じていた」という。
明るい未来が見えない中、「一回ちょっと好きなように、自分本位でやってみようと思って。ほんとにある日突然、“悪魔になりました”って」。忘れもしない、東京のライブハウス「西荻窪ARTRION」でのライブだった。曲や歌い方は変わらないのに、見た目とキャラがおかしなことになっている。あっけにとられる長年のファン。「そらそうだよな。昨日までさわやかに歌ってたヤツが、急にデスメタルだとか言いだしたんだから。もうドン引きだった」と振り返った。
音楽仲間をも心配させた“杉本ラララのご乱心”。「周囲は気でもふれたんじゃないのか、ってなってたんだけども、私自身はすごい楽しくて。思ったこともそのまま言えるし、誰にも気を遣わないで縦横無尽に…」と、当人は水を得た魚だった。
ショート動画をインスタグラムなどにアップすると、「いいね」やフォロワーが急増。以前からMCが面白いとの定評はあったが、インパクト抜群のメークと漫談家のようなトークの落差で一気に注目を集めた。一時減少したライブの観客も「めちゃくちゃ増えた。いわば“死神ドリーム”だな」。
2010年に音楽活動開始後、NHKーBS「釣りびと万歳」の主題歌に起用されるなど実績を積みながらも、4畳半のアパートに住み、アルバイトを続けた。「器用な人間だったら音楽を辞めてたと思うけど、ほんとに音楽しかなかった。何とか食える方法はないかと模索」する毎日。クラウドファンディングやSNSも駆使してきたが、ブレークには至らなかった。
「あれだけバズらせようとしてた時は全くバズらなかったのに、もう好きなことやろうって半ばヤケクソになったらバズるって…。欲があっちゃいけないね。それを感じた」。活動15年にして起こした大逆転劇。その裏で教訓も得たのだった。(萩原 可奈)
