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映画「正直不動産」が公開され、ヒットしている。小学館「ビッグコミック」連載の人気漫画を2022年4月からNHKがテレビドラマ化。現在公開中の作品はその映画版である。実際に不動産取引をするうえで知っておいたほうがいい内容もたくさんあるので、1つ紹介する。

マンションや戸建てを購入するとき、あるいは今住んでいる自宅を売却するとき、不動産会社に依頼するケースがほとんどだ。その不動産取引には、「両手取引」と「片手取引」という2つの取引形態があるが、業界用語なので一般の人には聞き慣れない言葉だ。

例えば、自宅売却をA社に依頼したとする。A社はその物件情報を業界に広く公開すれば、買い手が早く見つかる可能性が高くなるし、より高値で買おうとする人が見つかるかもしれない。顧客のためには情報を公開したほうが良いに決まっている。

しかし、実際のところ、宅建業法施行規則が改正されるまで、A社はそうしてこなかった。情報を公開せず、自分たちだけで売ろうとした。これは長らく日本の不動産業界で行われてきた悪しき慣習の「囲い込み」だ。不動産の売買が成立すれば、仲介手数料が入ってくるが、A社には売主からも買主からも手数料収入を得られる。これが「両手取引」である。

一方、A社が情報を公開して、B社が買い手を見つけてくれば、A社には売主から仲介手数料が入り、B社には買主から仲介手数料が入る。これが「片手取引」。つまり、両手取引は1回の取引で2倍の手数料収入が見込めるので、不動産会社には得なのだ。

国交省、囲い込み禁止

国土交通省は2024年6月、宅建業法施行規則を改正し、「囲い込み」を禁止とした。この改正により、2025年以降に「囲い込み」が確認された宅建業者は処分の対象となった。ただ、現在も両手取引自体は違法ではない。ちなみに、両手取引が許されているのは、先進国では日本だけである。

ドラマ「正直不動産」の監修を担当したのは、不動産コンサルティング会社「さくら事務所」だが、規制によって「囲い込み」が撲滅できるかといえば、そう簡単ではないという。

例えば、情報を公開したA社が「売主様の都合が悪くて内見を受けられない」「担当者が不在」などと言えば、他社を遮断することはできてしまう。A社は時間稼ぎをしながら、両手取引を目指して自分たちで買主を探すというわけだ。さくら事務所によれば、このような方法で囲い込みされるケースは実際に少なくないという。

「正直不動産」をドラマ化できたのはNHKだからこそ。大手から中小まで不動産会社のスポンサーを多く抱える民放にはできなかった。日本の不動産業界には明かされたくない“不都合な真実”がまだまだある。

文/横山渉 内外タイムス