「何かを犠牲にしないと」一度はメンバーから外れ…神戸出身、在日韓国人4世のTREASUREヨシ(26)が抱えていた“葛藤”
今日5月15日、「TREASURE(トレジャー)」の日本出身メンバー・YOSHI(ヨシ)が26歳の誕生日を迎えた。中学3年生でオーディションに合格、その後いくつもの壁を越え、K-POPシーンに確かな足跡を刻むまでの道のりとは――。韓国エンタメウォッチャーのK-POPゆりこ氏が解説する。
【画像】黒髪、赤いパーカー姿がカッコいい!デビュー前のヨシの姿
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きっかけはBIGBANGのコンサート
BIGBANGやBLACKPINKを輩出した韓国の大手芸能事務所YGエンターテインメント(以下、YG)から2020年にデビューした10人組ボーイズグループ「TREASURE」。その中に、日本出身、神戸育ちのラッパーがいる。
日本の名前は金本芳典(かねもと よしのり)、現在のグループ内での呼び名は「ヨシ」。日本と韓国の両方にゆかりのある在日韓国人4世として育ち、X JAPANのhideに憧れていた彼が、K-POPの舞台に立つことを夢見るようになったきっかけは、姉に連れて行ってもらったBIGBANGコンサートだったという。

TREASUREのYOSHI ©Sipa USA/時事通信フォト
〈「なんだ、この人たちは! と思って。そこからYGのアーティストを調べ、この会社に入ろうと思いました」(NHK Eテレ『沼にハマってきいてみた』2023年9月30日放送)〉
中でもリーダーでありメインラッパー、G-DRAGONのパフォーマンスに強く心打たれ、オーディションを受けることを決意する。
K-POP「第4世代」を牽引する「TREASURE」
TREASUREはYG主催のデビューサバイバル番組『YG宝石箱』(2018年放送)を経て結成され、2020年8月7日に正式デビューを果たしたボーイズグループだ。現在は韓国人メンバーと日本出身メンバーで構成される10人体制で活動している。
デビューシングル「BOY」は発売当日に世界19カ国のiTunesチャートで1位を獲得。新人としては異例の快挙を打ち立て、K-POP第4世代を代表するグループの一つとして、瞬く間に注目を集めた。韓国・日本の双方でファンダムを持ち、日本での番組出演や公演も積極的に行っている。
TREASUREの魅力はパフォーマンスの完成度の高さだけでなく、メンバーそれぞれが際立った個性を持つことにある。韓国で結成されたK-POPボーイズグループでありながら、日本出身メンバーが複数在籍するという珍しい構成も特徴的だ。それまで韓国人(北米の移民含む)のみのボーイズグループを作り続けてきた当時のYGにとっては、異例の戦略だった。この“日韓ハイブリッド体制”こそが、今日のグローバルな成功を支える一因となっている。
中3でオーディションに合格…突きつけられた「言葉の壁」
ヨシが夢を現実に変えるべく本格的に動き出したのは、中学3年生のとき。YG JAPANが開催したオーディションに挑戦し、見事合格。以来、練習生としてデビューを目指す生活が始まった。
だが、夢への道は険しく、最初に立ちはだかった壁は「言葉」だった。デビューサバイバル番組『YG宝石箱』は、デビューをかけた練習生たちのバトルを生々しく追った番組であったが、筆者の印象では彼の露出は決して多い方ではなかった。「Treasure J」という日本から来た練習生チームの“リーダー的存在”として期待されながらも、実力者揃いの練習生たちの中で埋もれかねない状況だった。
「何かを犠牲にしないといけない」
当時はまだ韓国語を勉強中の段階で、自分の気持ちや考えを、うまく言葉で表現することができなかった点も背景にあるだろう。後にヨシはこう語っていた。
〈「でも、なりたい自分になるためには、何かを犠牲にしないといけない」〉
その言葉通り、彼は練習の合間を縫って韓国語の勉強に没頭、ラップの技術とともに言語能力も磨き続けた。
落選を経て掴んだデビュー
サバイバル番組の終盤で、運命のデビューメンバー決定が行われた。番組を通じてデビューするメンバーは「TREASURE」として発表されたが、ヨシの名前はそこになかった。彼は次点グループ「MAGNUM(マグナム)」のメンバーとしてデビューの機会を待つこととなった。
しかし、この計画は急展開を迎える。諸般の事情を経て、両グループが統合され「TREASURE」として共にデビューすることとなったのだ。
韓国の高卒認定試験に合格
しかし彼の挑戦はそこで終わらなかった。デビューが決まったあとも、韓国の高校卒業学力検定試験(検定考試)の合格を目指して勉強を続け、2020年に見事合格している。
「ルーツがあれば、簡単に言語を習得できる」というのは大きな誤解であろう。3世以降、4世ともなれば条件は一般学習者とほぼ同等と言っていいと、筆者は考えている。もし周りに韓国語の上手な在日3世や4世がいたとしたら、それはヨシのように必死の努力と勉強を重ねた結果なのだ。
「自分のラップで、誰かの背中を押したい」
ヨシのグループでの役割は、ラップラインの要を担うリードラッパー。彼の真骨頂は柔和なルックスとのギャップが際立つ、エッジの効いた発声とキレ味鋭いフローにある。さらに、彼はクリエイティブ面でも本領を発揮。レコーディング中に歌詞の修正を余儀なくされても、すぐにブラッシュアップ案を出せることでも知られている。
〈「歌手として、自分の書いた歌詞・ラップで、聞いてくれる人たちに力を与えられるようになりたい」
「僕がおじいさんになっても愛され続ける曲を」〉
こうした言葉から垣間見える、音楽に対するストイックなまでの誠実さと、温かい人間性。事務所の社屋に自分専用の作業部屋を持ち、時間を忘れるほど作詞・作曲に没頭する日々を送っているという。
精神的支柱、日韓の架け橋に
日本で生まれ育ち、韓国の芸能事務所でデビューを果たしたヨシ。日本語と韓国語を自在に操る彼は、両国のメンバーやファンを繋ぐ「ハブ」としての役割を担っている。さらに、その存在感と人気は今や日韓を超え、さらなるグローバルな広がりを見せているところだ。
2025年、「TREASURE」のリーダーはチェ・ヒョンソクとジフンの2人から、ジュンギュとアサヒへ交代となった。ヨシは彼らを支えつつ、グループを内側からまとめる「影の功労者」であり、日本出身メンバーの最年長として“精神的支柱”にもなっている。
かつてサバイバル番組時代に、言葉の壁に苦しんだ彼だからこそ、異国の地で奮闘するメンバーの孤独や不安に誰よりも寄り添えるのだろう。過去には「もし歌手になれなかったら、幼稚園の先生になりたかった」と語っていたことがある。面倒見の良さは天性のものかもしれない。
一度はデビュー組から落選した。言いたいこともうまく伝えられなかった。それでも今では大きなステージに立つ存在になったーー今日、26歳を迎えたヨシのサクセスストーリーは、まだ序章に過ぎない。
新譜リリースと、日本でのファンコンサート開催
TREASUREの勢いは2026年に入り、さらに加速中だ。現在はワールドツアー『2025-26 TREASURE TOUR [PULSE ON]』の真っ最中。今年2月に行われた京セラドーム大阪でのスペシャル公演では2日間で9万人を動員し、日本ツアー全体で計30万人以上を熱狂させた。
6月1日には待望の4thミニアルバム「NEW WAV」のリリースが予定されている。さらに7月から9月にかけて、日本8都市を巡る新たなファンコンサート『TREASURE THE STAGE 2026 IN JAPAN』も決定。ヨシが生まれ育った神戸でも、3公演を予定している。日本で彼らのパフォーマンスを楽しめる機会が多い一年になりそうだ。
(K-POPゆりこ)
