少子化が叫ばれて久しい日本だが、教育産業、とりわけ「小学校受験」や「進学塾」のマーケットは完全に別の力学で動いている。
 本稿では、PR・IR支援会社の経営者であり、投資家としても活動するちょる子氏が、自身の起業と重なった過酷な「小学校受験」の舞台裏を明かす。潤沢な資金を持つ投資家ですら直面した、お金では買えない「時間」というリソースの壁。偏差値40台からの大逆転劇を支えた、泥臭い家族の戦略とは。
 みんかぶプレミアム連載「億り人投資家ママ ちょる子の小学校受験戦記」


起業直後の死闘と、捻出不可能な「1時間」。働く母の時間の棚卸し



 株式会社矢野経済研究所の調査によれば、学習塾・予備校市場の規模は年間約1兆円に迫る勢いを維持しています。中でも私たちが足を踏み入れた「幼児教室」の市場は、一人当たりの単価が極めて高いのが特徴です。
 
 なぜこれほどまでに儲かるのか。それは、この市場の商材が「子どもの将来への希望」と「親の愛情」という、**価格弾力性が極めて低い(=いくら高くても買わざるを得ない)究極の非弾力財**だからです。



[Image of price elasticity of demand]


 しかし、お受験という市場において、共働き家庭にとって本当に枯渇するリソースは「お金」ではありませんでした。どんなに潤沢な資金を持つ富裕層であっても、決して外注できず、お金では買えないもの。それは、子どもと真剣に向き合い、共に泥臭くペーパーを解き、感情を共有するための**「時間」と「労力」**だったのです。

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「毎日1時間、必ず横についてあげてください」



「毎日1時間、必ず親御さんが横についてペーパー学習を見てあげてください」

 幼児教室の先生から下されたこの「ミッション」は、起業したばかりの私にとって、最も難易度の高い課題でした。
 当時はとにかくお客様の獲得に必死な時期。朝5時に起きて相場と向き合い、日中はクライアントワーク、夜は会食や打ち合わせで埋まる日々。帰宅する頃には娘はすっかり就寝しており、平日は娘の寝顔しか見ない日も珍しくありませんでした。そこから5歳の娘を起こして机に向かわせるなど、物理的にも体力的にも不可能でした。

> 「お金で解決できないなら、時間のポートフォリオを根本から組み替えるしかない」

 私は自分自身の生活の「時間の棚卸し」を行いました。夜がダメなら、朝しかない。毎朝8時には保育園に登園し、私も仕事を始めなければならない。そこから逆算すると、「朝7時からの1時間をペーパー学習に充てる」しかないという結論に達しました。
 
 7時までには家族全員が起床し、朝ごはんを食べ、登園と出社の準備をすべて終わらせておく。こうして、我が家の時計の針は大きく前倒しされ、過酷なルーティンがスタートしたのです。