この記事をまとめると

■黄色は遠方や悪天候でも目立つため建機などに使われている

■注意喚起と安全確保の役割を担う色でもある

■キャタピラーが業界イメージを形成した

最大の理由は視認性

 工事現場のそばを通りかかると、ショベルカー、ブルドーザー、ホイールローダーなど、多くの重機が黄色く塗られていることに気づく人は多いだろう。さらに街をよく見ると、重機だけでなく、道路清掃車や高所作業車、大型フォークリフト、構内作業車などにも黄色や黄みがかったオレンジが多く使われているのだ。あまりに見慣れた光景であるため、私たちはそれを当たり前と受け止めがちであることも確かだ。しかし、これらの車両が黄色いのは、単なる慣習でも、偶然の流行でもなく、そこには、安全、歴史、企業戦略、作業環境、さらには人間の心理までが折り重なっている。

 これらが黄色く塗装されているもっとも大きい理由は、視認性である。建設現場は、土埃、騒音、死角、移動する作業員、資材の搬入など、危険要素が多い。そうした環境では、機械の存在をできるだけ早く、遠くから、確実に認識できることが重要になる。また黄色は背景とのコントラストを得やすく、曇天や薄暗い時間帯、土やコンクリートに囲まれた現場でも目に入りやすい色とされることから、建設機械が黄色なのだ。

 こうした視認性に関することでいえば、道路清掃車にも当てはまる。道路清掃車は、一般車両と同じ道路上を低速で走ったり、路肩に寄って作業したりすることが多い。ときには早朝や夜間、雨の日など、視界の悪い条件で作業することもある。そこで周囲のドライバーや歩行者に「ここで作業車が動いている」とすぐに気づいてもらうためには、車体の色そのものが目印になる必要があるのだ。

 黄色やオレンジに近い色は、灰色の道路、白線、黒っぽい路面、周囲の車の色に埋もれにくく、注意を促しやすい。そのため、道路清掃車や道路維持作業車では、黄色系の塗装が安全上合理的な選択になりやすいというわけだ。

 そのほかにも大型フォークリフトの場合も、ボディが黄色い理由はよく似ている。フォークリフトは倉庫、工場、港湾、物流センターなどで、人や荷物、トラック、棚のあいだを動きまわる。しかも、大きな荷物をもち上げていると運転者の視界が遮られ、周囲からも車両の動きが読み取りにくくなることがある。大型フォークリフトは重量があり、わずかな接触でも大きな事故につながりかねない。だからこそ、作業員が視界の端でも存在に気づける色、背景から浮かび上がる色が求められる。黄色はその条件に合いやすく、工場や物流の現場でも「注意すべき作業機械」の色として受け入れられてきた。

 ただし、黄色ならなんでもよいというわけではない。黄色は「注意」を促す色でもある。道路標識、踏切、警告ラベル、作業服などを見ればわかるように、黄色やオレンジは人間に警戒心を抱かせる色として広く使われてきた。重機、道路清掃車、大型フォークリフトはいずれも、近くに人がいれば危険を伴う機械である。したがって、色そのものが「ここに注意すべきものがある」と知らせる役割を担っているのである。

“働く機械=黄色”というイメージが定着

 こうした視認性に基づいた色が黄色であることのほかにも、興味深いのがその歴史だ。現在の重機といえば黄色というイメージが作られたのは、アメリカの建設機械メーカー「キャタピラー」の影響が大きい。しかし同社は1931年に機械の標準色を、それまでのグレーからハイウェイイエローと呼ばれる黄色へ変更したという歴史がある。つまり、初めから重機が黄色だったわけではないのだ。

 むしろ、道路工事やインフラ整備が拡大するなかで、路上や現場で見えやすい色が求められ、その結果として黄色が選ばれていったのが正しい流れだろう。この流れは、単なる塗装の変更にとどまらなかった。巨大な機械が黄色い姿は、人々の記憶に残りやすい。灰色の機械が風景に沈み込むのに対し、黄色の機械は現場のなかで明確な存在感を放つ。安全のための色が、いつの間にか企業の顔となり、さらには業界全体の標準のように広がっていった。

 こうした歴史から作られた黄色は働く機械らしさを感じさせる色となり、子どもの玩具売り場を見ても、ショベルカーやダンプカーの模型は黄色であることが多い。絵本やアニメでも、工事現場を表す色として黄色い重機が描かれる。さらに、道路清掃車やフォークリフトのような作業車も、黄色やオレンジで表現されると、私たちはすぐに「作業中の車両」「現場で働く機械」と理解しやすいというイメージが刷り込まれているのは確かだろう。

 こうした黄色というカラーは汚れとの相性も悪くない。建設現場では泥、砂、油、粉じんは避けられない。道路清掃車であれば、路面のほこりや泥水を浴びることも多い。フォークリフトも、工場や倉庫、港湾でタイヤの汚れや荷物の粉じんにさらされる。こうした環境下では白だと汚れが目立ちすぎ、黒や濃い灰色であれば夜間や影のなかで見えにくい。しかし黄色は汚れてもなお車両の輪郭を保ちやすいという一面もあるのだ。

 とはいえ、すべての重機や作業車が黄色というわけではない。メーカーによってはオレンジ、緑、青、白などを使う例もある。林業機械や農業機械、港湾用機械、自治体の道路維持車両では、用途、地域、管理者、ブランドによって異なる色が採用されることもある。道路清掃車でも、自治体名や会社名を目立たせるために白や緑を組み合わせることがあり、フォークリフトもメーカーごとに独自の色をもっている。

 それでもやはり重機などは黄色というイメージが強いこともまた事実。普段は気にしないかもしれないが、どこかで重機を見たときに、そのボディに塗られた色について少しだけ思慮を巡らせてみてはいかがだろうか。