VTuberがTwitchで配信する利点とは? にじさんじ「Y4T4」の事例から考える、プラットフォームごとの文化の違い
2026年4月21日、にじさんじから「Rei7」「男虎」「御子神琴音」「塚原大地」「千凛あゆむ」「九里詠太」「小々波いるか」「レヨン」の8人のライバーからなるユニット「Y4T4」(読み:ヤタ)がデビューした。
(関連:【画像】人気ゲームタイトルがズラリと並ぶ、Twitchのカテゴリ機能)
彼ら/彼女らが配信を始めて早々、レヨンが『VALORANT』で日本1位を取っていたり、御子神琴音が『スプラトゥーン』で日本1位を取っていたり、男虎が『ストリートファイター6』のキャラクター・ガイルで世界1位を取っていたりといった経歴が判明し、「とんでもないゲーマーが集まっている」とSNSで話題騒然となった。また作詞作曲ができる九里詠太、イラストが描けてLive2Dも作れるRei7など、クリエイターとしての技術を持ち合わせているメンバーもおり、ファンを驚愕させている。
さて、「Y4T4」の8名はバーチャルライバーでありつつ「ストリーマーチーム 」として活動することが公式で宣言されていた。これまでのにじさんじライバーたちはYouTubeでのライブ配信を中心に行っていたのだが、「Y4T4」メンバーはYouTubeだけでなくTwitchでの配信も活動の重要な拠点になるそうだ。オフィシャルからも「今後はTwitchをメインに配信する他、X(旧Twitter)やYouTube等でも精力的に活動を行ってまいります」とアナウンスされている(※1)。
VTuberシーン全体を見渡せば、すでにTwitchでの配信をメインに行っているVTuber、あるいはTwitchとYouTubeでの配信を併用しているVTuberは少なくない。たとえば「ぶいすぽっ!」のメンバーの大多数はTwitchアカウントを併用しているし、赤見かるびや天鬼ぷるるなどのVTuberはTwitchをメインの活動場所にしており、チャンネル登録者数がYouTubeより多いケースも見受けられる。
■新規で見る人が入りやすいTwitchのカテゴリー機能
TwitchにはYouTubeに比べてアーカイブを長く保存できない、という難点がある。正確には、一般ユーザーは7日間、有料会員やAmazonプライムと連携した会員の場合は60日間まで保存できるが、そのあとは削除されてしまう。
この点だけを見ると、Twitchでの配信はデメリットが大きいようにも見えてしまうのだが、実際はYouTubeとTwitchとでそれぞれに利点がある。
Twitch配信に向いているのは「今つながっている」ことが重視される配信だ。
・長時間の雑談・ゲーム実況・音楽系配信・作業配信などのような、自身の生活をそのまま流すタイプの配信・新規視聴者を集めたい配信・12時間以上の長時間配信
などは、Twitchというプラットフォームの特性にあっている。
Twitchで特に優れているのはカテゴリー検索機能だ。左上の「コンテンツを探す」を選択すれば、配信のジャンル、あるいは配信しているゲームタイトルのリストがずらりとでてくる。たとえば『Minecraft』の実況配信を見たい場合、『Minecraft』カテゴリーを選択すれば、「今『Minecraft』の配信している人(配信にタグ付けをしている人)」が一覧になって出てくる。仮にカテゴリー一覧になくても、上の検索窓で検索をすればカテゴリーを探すこともできる。
このカテゴリー検索機能のおかげで、Twitchはゲーム実況配信との相性が抜群に整っていると言える。たとえば記事執筆時点(2026年5月)であれば『プラグマタ』や『トモダチコレクション わくわく生活』などが上位に表示されている。「今流行っているゲーム」や「好きなゲームの実況をなんとなく見たい」時に使いやすいデザインなのだ。
検索できるカテゴリはゲームの種類だけではない。「雑談」「VRチャット」「ASMR」「MUSIC」「DJ」「アート」「Food & Drink(お料理配信)」など、その種類は多岐に渡る。一覧に出てこないカテゴリでも、タグから検索すればさらに絞り込んで、探すことができる。
カテゴリー検索機能のおかげで「たまたま見に来た人」の目に触れる確率がぐんと跳ね上がるのが、Twitchの強みのひとつだろう。
言語選択が可能なのもうれしいポイント。日本語での配信を見たい場合は、カテゴリーを選択後、「言語」タブから「日本語」にチェックを入れれば、日本語配信者(配信者側のタグ設定が必要)のみが表示できる。
■長時間配信向きなTwitch文化
長時間配信をすればするほど有利になるのも、Twitchらしいところだ。配信していればどの時間帯でも配信カテゴリーに表示されるため、長く配信するタイプの人ほど「たまたま見に来た人」に発見されやすくなる。その点、12時間以上の配信に対応しているのは、Twitchでの配信のあり方に大きな影響を及ぼしているだろう。
これによって、長時間「なんとなく枠を切らずに配信を継続する配信者」「なんとなくつけっぱなしにして見る視聴者」というスタイルがTwitchには定着している。もちろん、チャンネルを登録して最初から見る視聴者もいるだろう。ただどちらかといえば、配信の途中から入ってきて、作業BGM的に“ながら見”をするスタイルがTwitchでは多い。「配信者の日常に入っていく感覚」に近いと思う。
こうした“ながら見”スタイルに強いのは「アート」カテゴリーだろう。いわゆる「お絵かき配信」などがこれにあたる。ものづくりをする人のクリエイティブな作業を流しっぱなしにする配信は需要がかなり高いようで、どの時間帯でもよく見られている。
また「DJ」配信も人気カテゴリーのひとつだ。性質上1時間以内で終わらず長時間になりがちなので、配信途中に発見して見に行くTwitchのスタイルとの相性が非常にいい。音楽ジャンルの名前(「EDM」など)をタグ付けできるのも強い。
日本ではそこまで多くはないが、なかには「IRL(日常生活)」や「I'm Only Sleeping(寝ているだけ)」といったタグ・カテゴリで生活を垂れ流しにする配信者も海外には多い。「それに需要があるのか?」と疑問を浮かべる人もいるかもしれないが、意外にも見ている人が多く、さながら「チャットの雑談部屋」のような雰囲気でコメントがゆったり飛び交っていたりする。
Twitchは「居場所」を探しに来た視聴者が「自分にあった配信者」を発見しやすい場所といえるだろう。
一度視聴者が居場所を発見してチャンネル登録をしてくれたら、そこに居つく人(リピーター)が増えやすくなるのはYouTube配信もTwitchも一緒かもしれない。ただ、Twitchはそこに至るまでの導線を作りやすい構造になっている。
■「Raid」機能による人の流れの作りやすさ
導線の作りやすさで言うと、Twitchの「Raid」も忘れてはならない機能のひとつ。これは配信が終了したとき、そのまま視聴者を他の人の配信に送る仕組みのことだ。
誰かの配信から「Raid」で人が流れてくる。自分の配信から別の人の配信に視聴者を「Raid」で送る。この「Raid」文化が定着していることによって、人の流れができやすいのもTwitchの長所だ。
ちなみにYouTubeでも「ライブリダイレクト」という機能を使えば、指定したプレミア公開動画や配信に誘導することができる。日本のVTuberの間では歌枠リレーなどのようなイベントごとで使われることが多いようだ。
■チャットとコメントを残せるYouTube配信のアーカイブの強み
YouTube配信に向いているのは「アーカイブの質をあげてしっかり保存したい配信」「あとから見てもらうことが前提の配信」などだろう。具体的には、下記のような配信はYouTubeの機能にマッチしているといえる。
・編集された動画のプレミア公開・作品として最初から最後までしっかり見てもらいたい配信・視聴者参加型など、コメント欄を継続して保存しておきたい配信・自己紹介や重要な告知やライブなどアーカイブが大事な配信・サムネイルで興味を惹きたい配信
特に大きいのは、配信中のチャットを半永久的に保持できるという部分だ。プレミア公開動画や配信の場合は、画面右側に書き込まれる視聴者のチャット欄も動画とともにアーカイブとして残すことができる。
たとえば視聴者にコメントで参加してもらうタイプの企画配信の場合、チャット欄の流れそのものが重要なコンテンツになるだろう。また音楽ライブなどの場合は、盛り上がっているチャットの熱気あふれる空気感が、ライブ感の重要なファクターになっているはず。そのような視聴者の反応を含めた、配信の雰囲気をそのままパッケージングして長期間保存できるのはYouTube配信の利点だ。視聴者側としても、自身が書き込んだチャット欄のコメントが、消されない限り残ってくれるというのは嬉しいものだ。
チャット欄とは別に、動画下のコメント欄の機能が活用できるのも大きなメリットだ。リアルタイム視聴できなくてもコメントを書き込むことで参加しているような感覚が味わえるのは、「あとから見る」文化が成熟しているYouTubeならではだ。
■配信に活かせるYouTubeの便利機能
配信が長くなった場合は、動画チャプター機能が役に立つ。たとえばゲーム実況と雑談と告知で3時間以上の配信になった場合、アーカイブを「ここからここまでは実況、ここからは雑談、最後に告知」のようにチャプターでわけておけば「3本がまとまった動画」のような見せ方をすることができる。
その他にも音楽ライブで曲ごとにわけたり、解説系の配信をトークテーマごとにわけたりなど、チャプターわけは発想次第で様々な用途に使える。「あとから見に来た人」に対して非常に親切なだけでなく、「この次のチャプターも見たい」という感情を刺激し、離脱率をさげる重要な機能だろう。
配信する前からサムネイルを付けて「スケジュール設定」をすることで、待機所を作っておけるのもYouTubeの便利な部分だ。設定しておけば、告知の段階から視聴者の期待を高めることができる。配信ごとの待機所で、開始までの間チャットを楽しんでいる人も多く見られる。いわば映画やライブが始まる前のワクワク感のようなものを、配信者側が演出できるのだ。
YouTubeの配信は、動画プラットフォームとして培われてきた長所を利用し、クオリティをアップさせることが可能だ。だからこそ「配信者の提供するコンテンツを見るために来た」という目的意識がはっきりしている視聴者に向けた場合であるほど、YouTubeでの配信が適しているといえるだろう。
■TwitchとYouTubeの使い分けによる戦略
Twitch配信とYouTube配信、双方に優れている部分があり、どちらかの方が絶対によい、とは一概には言えない。大事なのは使い分けだ。
現在VTuberやストリーマーで多く見られるようになっているのは、配信自体はTwitchをメインに行ない、そのアーカイブや切り抜きをYouTubeの動画やショートで公開する、というスタイルだ。見てもらいやすい間口をTwitch配信で広げた上で、自らを広報する場所としてYouTubeに記録を残していく、という考え方だろう。
特にVTuberの場合は、配信の内容の面白さはもちろんだが、自身のキャラクター性を売りにして好きになってもらうようにすることも大事だ。Twitchでの配信がどれだけ盛り上がって有名になっても、後から知った人が過去の活動を振り返る手段がないと、キャラクターとしての親しみやすさが減って「推す」ところまでは行きづらくなってしまう。自己PR用に、アーカイブや切り抜きをYouTubeにまとめておくのは、セルフプロデュースとして非常に重要だ。
■Twitch利用がさらなる新規層にリーチする
VTuberファン・にじさんじファンは、現時点ではYouTubeで配信を見ている層が圧倒的に多いだろう。そんな中、にじさんじの「Y4T4」が軸足をTwitchにするというのは、かなり大胆な戦略だ。8人のTwitchを見ていると、すでに長時間の配信がたっぷり行われ始めている。中にはさっそく15時間以上配信しているメンバーもいたほどだ。
5月2日から5月4日にかけては、Twitchで「Y4T4」の48時間リレー配信も実施された。にじさんじが本格的にTwitchを利用していく方向性で動いているのがよくわかる。
前述したように、今回の「Y4T4」のメンバーを見ていると、『VALORANT』や『ストリートファイター6』『スプラトゥーン』『リーグ・オブ・レジェンド』など一定のゲームをやりこんだプロ級の腕利きプレイヤーや、クリエイターが集っている。そして、これはTwitchのカテゴリー機能との相性がドンピシャにいい。
たとえば「レヨンを見に来た『VALORANT』ファン」は、彼のチャンネルから直接配信を見に行くだろう。いうなれば「既存の知名度」を活かした間口だ。そこに加えてTwitch配信の場合はカテゴリー検索から「『VALORANT』が好きで、強そうな配信者を探している、にじさんじを知らない新規視聴者」への求心力も高くなる。間口を広げるという意味ではかなり大きな利点になるだろう。
また、クリエイターとしての才能を持つメンバーが「アート」「MUSIC」枠で作業配信をすることで、全くの新規層に訴求する可能性も十分考えられる。メンバー同士で「Raid」機能を使うことで、異なる強みを持った仲間へ視聴者を送り、さらに間口を広げる、という展開も今後ありえるかもしれない。
現在のYouTubeでのVTuberの配信は、正直なところかなりのレッドオーシャンだ。新規で始めた場合、どれだけ頑張って配信をしても、そもそも見つけてもらうことが極端に難しい。
そんな中で、「Y4T4」によるTwitchとYouTubeの二刀流配信が成功していけば、新たな層を引き込む手段として、VTuberの新しい活動スタイルを切り開く一手になる可能性がある。現時点では、彼らがYouTube配信とTwitch配信を今後どう使い分けていくかまではまだわからない。しかし、その配信スタイルが、今までVTuberやにじさんじを見ていなかった層に対してどのような影響を及ぼすのか、注目したいところだ。
〈参考〉※1:https://www.nijisanji.jp/news/5ftn6ozbki
(文=たまごまご)
