鳴門で10年連続野外繁殖 コウノトリが運んできたものは?【徳島】
鳴門市で国の特別天然記念物、コウノトリのヒナが2026年も誕生しました。
これで、10年連続の野外繁殖です。
この10年間、コウノトリを見守り続けてきた人は今、あらためて何を思うのでしょうか?
2026年も無事に誕生した、コウノトリのヒナ。
母鳥の「あさひ」が飛び立つと、「どこに行ったの?」と少し寂しそうな顔を見せていました。
(認定NPO法人とくしまコウノトリ基金・熊谷幸三 理事長)
「もうちょっとしたら(ヒナが)大きくなる、巣から顔がしっかり出て可愛らしい姿が見える。あれはいいですね」
鳴門で、コウノトリの野外繁殖が成功したのは、2026年で10年連続。
これまで、いろいろなことがあったと熊谷理事長は話してくれました。
(2015年・保岡アナウンサー)
「鳴門市大津町です。私の後ろご覧ください、国の天然記念物コウノトリが舞い降りています」
初めてその姿がレンコン畑に現れたのは、2015年のこと。
ヨーロッパでは「幸せを運ぶ鳥」とも言われる国の特別天然記念物、コウノトリの飛来は当初、地元の人に明るい話題として受け止められました。
(大阪の人は)
「大阪から。コウノトリを見に来たわけじゃない、通ったらみんな見ていたので」
(地元の人は)
「初めて見に来たんや、家はそこ。車で1分やのに」
コウノトリを一目見ようと、巣の近くの道路にはたくさんの見物客が詰めかけ、あたりは連日、お祭り騒ぎとなりました。
(記者)
「印象に残っている出来事は?」
(認定NPO法人とくしまコウノトリ基金・熊谷幸三 理事長)
「みんなが押しかけてきた。この狭い農道にどんどん車が入って大渋滞になって、にっちもさっちもいかない」
「農家の方は仕事をしたいけど仕事ができないという状況になって、いろいろトラブルになった」
その結果、地元では一時「コウノトリはいらない」という意見も出たそうです。
しかし、警備員の配置や看板の設置を鳴門市に働きかけるなど、コウノトリを見守ろうとする人々の熱意で、徐々に理解を得られるようになりました。
そして、こんな活動も…。
(物部アナウンサー)
「コウノトリ音頭、初公開です、どうぞ」
(認定NPO法人とくしまコウノトリ基金・熊谷幸三 理事長)
「コウノトリがここに住めるようになったことが、一つ大きな出来事ですね」
コウノトリがやってきて2年目。
いよいよ、あとは繁殖を待つばかり。
しかし、自然は残酷な試練を突き付けます。
大切に守ってきた卵が、カラスの襲撃にあったことも。
(記者)
「今、午前8時3分ヒナが着地しました。巣立ちです」
結局、ヒナが初めて誕生したのは、巣作りを始めてから3年目のこと。
自然界の厳しさ、そして命の尊さ。
簡単にいかないからこそ、その輝きはだれの目にも眩しく映りました。
(記者)
「コウノトリの好きなところは?」
(とくしま動物園・城翠 園長)
「大きさですね、飛んでいるときの姿勢」
(とくしま動物園・古田琴 獣医師)
「優雅っていう、言葉通りの鳥だなって」
この10年間、新しく誕生したヒナと向き合い続けてきた人たちがいます。
とくしま動物園の、城園長と獣医師の古田さんです。
(とくしま動物園・城翠 園長)
「今まで失敗例がないということで、何とか成功させなければいけない」
(とくしま動物園・古田琴 獣医師)
「すごいたくさんの人から注目されているというのがひしひしと伝わってきて、すごく緊張したのを覚えている」
城園長たちは新しく生まれたヒナに、識別用の足環をつける作業のほか、県内で傷ついて保護されたコウノトリの治療などを行ってきました。
生と死を間近で見続けてきた2人は、県内の空をコウノトリが当たり前のように舞う光景を夢見ています。
(とくしま動物園・古田琴 獣医師)
「徳島県内どこにいても、ああ、徳島だからコウノトリいても当たり前だよねと、一般の人が思うようになればいいと思う」
(認定NPO法人とくしまコウノトリ基金・熊谷幸三 理事長)
「うちのコウノトリ『あさひ』と『ゆうひ』、繁殖し始めて10年になるが、毎年、平均3羽くらい産んで、今年もどうも3羽(産んだ)」
「(10年間に)巣立ちしたのは29羽。コウノトリが普通に見える状況というのは、かなりできてきたんじゃないかと思う」
鳴門で安定して子作りをするコウノトリがいる一方で、熊谷理事長はある不安を抱えていると言います。
それは…。
(認定NPO法人とくしまコウノトリ基金・熊谷幸三 理事長)
「今のペアの次のペアを作りましょうと、1ペアでは何かあった時に繁殖活動が続けられなくなる可能性がある」
実は、鳴門で巣を作って繁殖しているコウノトリは、2015年にやってきたオスの「ゆうひ」とメスの「あさひ」だけ。
鳴門から巣立ったコウノトリは多いものの、里帰りして巣作りをするペアはまだ現れていません。
夏にエサ場が少なくなるのが問題と考えたとくしまコウノトリ基金は、5ヘクタールのビオトープを作って、夏でもコウノトリがエサを食べられるようにしましたが、新しいコウノトリのペアの定着には至っていないそうです。
(記者)
「最後に、コウノトリが運んできたものとは?」
(認定NPO法人とくしまコウノトリ基金・熊谷幸三 理事長)
「(鳴門を)選んでくれたというのは確か。それをみんなが喜んでくれている」
「徳島の農業はいいぞと評価をしてくれた、それが運んできてくれたものかな」
(とくしま動物園・城翠 園長)
「自然のことや野生動物のことについて、改めてわれわれに、なにかを考えるきっかけを作ってくれた鳥じゃないかと」
