ラージョ戦では早期交代となった久保。(C)Getty Images

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 かつてミケル・オジャルサバルが、左膝前十字靱帯断裂という重傷から復帰し、レアル・ソシエダの絶対的リーダーへと返り咲く過程で、その道のりの険しさをこう吐露している。

「執刀医のミケル・サンチェスにはこう言われた。8か月経てば通常の練習や試合には戻れる。だが、膝の状態が落ち着くには2年かかる、と。1か月やそこらで過去のものとして忘れ去れるような怪我ではない。同じ目に遭った者や、現場のメディカルスタッフなら誰もが知っている事実だ」

 もちろん、負傷の影響でプレースタイルやポジションの変更を余儀なくされたオジャルサバルと、タケ・クボ(久保建英)のケースを単純に比較することはできない。だが、キャリアで初めて重度の筋肉系の負傷に見舞われたタケにとっても、それがどれほど苦痛であり、再発のリスクを避けるために慎重なプロセスが必要であるかは明白だ。

 2か月以上に及んだ離脱期間は、その負傷の深刻さを物語っている。時折、かつての止められない輝きを放つ瞬間はあっても、最高の感覚にはまだ遠いと感じる苦しい時期を過ごすのは、極めて自然なことなのだ。
 
 3−3の引き分けに終わったラージョ戦後、マタラッツォ監督は称賛の中に苦言を忍ばせた。 

「前の試合ほどの力強さはなかった。狭いスペースで違いを作れる素晴らしい選手だが、今日は鋭さを欠いていた。先日の試合でようやく復帰後初のフル出場を果たし、本人は手応えを感じていたようだ。私は再び起用することで、コンディションをさらに引き上げたかった。悪くはなかったが、もっと向上し続けなければならない」

 敵地バジェカスでのタケは、本来の姿ではなかった。アメリカ人指揮官が採用した攻撃的な布陣において右サイドに張る形となったが、オジャルサバルがセカンドトップを務めたこの日、ソシエダの攻撃はバレネチェアのいる左サイドに偏重した。

 ここで見落とされがちなのは、バレネチェアがサイドバックへコンバートされたウイングであるセルヒオ・ゴメスとの共鳴で輝きを放った一方で、タケはアランブルと縦のラインを組んでいた点だ。アランブルは守備面では堅牢な獣だが、ひとたび前線に顔を出すと、本職のアタッカーが備えるようなオートマティズムを欠き、時にブレーキとなってしまう。

 そもそも、バジェカスを攻略するのは容易ではない。ピッチは狭く、疾走するためのスペースはほとんどない。ドリブルを仕掛けようものなら、瞬く間に「足の海」に飲み込まれてしまう。
 
 6分、タケに先制の好機が訪れる。ショートコーナーのクリアボールを右足で捉えたが、シュートはメンディの身体に直撃。ソシエダの選手たちはハンドを主張してPKを求めたものの、認められることはなかった。その後、チームが圧倒的な支配を背景に先制し、一転して耐える展開となるなか、前半の彼は守備に追われる。それでも対面したチャバリアの攻撃参加を警戒し、カウンターのチャンスを狙いながら集中を切らさなかった。

 後半、何度か深い位置まで侵入し、決定的な場面を作ったが、精度を欠いた。55分には、対峙するマーカーを切り返しで翻弄し左足でクロスを供給。しかし、これもメンディのヘディングでクリアされる。さらに直後のプレーで、バレネチェアのクロスをトラップしようとした瞬間にエリア内で倒され、PKをアピール。だが、オフサイドポジションにいたとして、笛が吹かれることはなかった。
 
 これが、彼にとって最後のプレーとなった。56分、マタラッツォはピッチ中央を固めるべくパブロ・マリンとスチッチを投入。タケとバレネチェアの両翼を切り落とす決断を下した。しかし、その狙いが成功することはなく、終盤に2点を奪われ、ソシエダは勝利を逃した。ベンチに退いたタケは、抗議によってイエローカードを提示された。彼自身、納得がいっていなかったのだろう。

 怪我から復帰したばかりの時期は、良い時もあれば悪い時もある。奇妙な感覚に陥る日もあれば、突然インスピレーションと魔法が戻ってくる瞬間もある。バジェカスでの苦い経験を糧に、少しずつ、タケはポジティブな感覚を取り戻していくはずだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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