中国資本に牛耳られた岩手・八幡平の「名門リゾート」でトラブル…「所有する部屋から追放された」「管理費が突然4.25倍に」日本人オーナーが阿鼻叫喚

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バブル期に一世を風靡した「憧れの地」

中国資本に買われ、日本の慣例を無視した「やりたい放題」の運営に振り回される――。そんな日本人の悲鳴が、またも聞こえてきた。今回の舞台は、かつて日本中の若者が憧れた日本屈指の名門スキーリゾートだ。

「管理費を一方的に引き上げられただけではなく、ついには自分の部屋を使用禁止にされた。こんな日が来るとは思いませんでした」

ゲレンデに隣接するホテルを見上げながら、苦渋の表情で語るのは、岩手県八幡平市のスキーリゾート「安比高原スキー場」に部屋を所有するA氏だ。

「ここはリクルート創業者の江副浩正さんが中心となって第三セクターを設立し、1980年代に開発されました。江副さんは『世界に通用するリゾート』を掲げ、グラフィックデザイナーの亀倉雄策先生や建築家の谷口吉生氏といった昭和の巨匠たちが心血を注いで築き上げた東北屈指の『聖地』です」

盛岡駅から車で50分。全長5.5キロの広大なゲレンデに、壁面がレモンイエローに彩られたホテル。時代の最先端を行く斬新な空間に当時の若者は熱狂し、車に「APPI」(安比)ロゴのステッカーを貼ることが一種のステータスとなった。A氏も安比に魅了された一人だった。

「本館&タワー、ヴィラ、アネックスという3つの宿泊群は、すべて『ホテルコンドミニアム』として分譲されました。バブル期は『苗場』と並ぶ憧れの地。私はこのリゾートの『夢』を買ったんです」

ホテルコンドミニアムとは、オーナーが購入した客室を、自身が使用しない期間は運営会社が一般客に貸し出し、稼働に応じた賃料収入を得る仕組みだ。安比の場合、客室料金の半分がキャッシュバックされる契約だった。

「区分所有者であるオーナー自身の宿泊はもちろん無料。オーナーを介した知人の利用も無料でした。一方で、我々は所定の管理費を支払い、それが共用部の維持管理や清掃に充てられる。現在でも全客室(約1000室)の約6割に区分所有者がおり、特に400室以上あるヴィラ棟はおよそ9割が個人および法人の所有です。我々はこのリゾートの文化を足元から支えてきたという自負がありました」(同前)

だが、2016年に経営権が中国資本の会社へ移ると状況は一変する。ラオックス会長として知られる羅怡文氏らが運営の主導権を握ると、その「誇り」は無残に踏みにじられていく。

『爆買いの父』ラオックスの羅会長

羅氏といえば、中国人観光客による「爆買い」で名を馳せた人物だ。最近では葬儀・火葬事業へ参入し、火葬料金の値上げで物議を醸している。そんなやり手の商売人が主導する運営の実態について、内情を知る元従業員は明かす。

「日本ではスキーブームが下火となっていましたが、当時中国では日本から約30年遅れてスキーブームが到来しており、新たなインバウンドビジネスの舞台として目をつけたのが、日本のスキーリゾートでした。『安比高原スキー場』の運営会社トップに就任したのは、のちに火葬事業会社の代表を務める羅会長の最側近です。

羅会長らの手腕はたしかで、インバウンドの爆発的増加により、2018年には過去最高の売上を記録しました。勢いに乗った羅会長らは、2021年には世界有数のホテルグループとの間にフランチャイズ契約を結んでブランド名を刷新。さらには『グローバルな街を目指す』として数十億規模の開発計画をブチ上げました」

だが、その裏で長年リゾートを支えてきた日本人オーナーたちは「邪魔者」として切り捨てられていった。元従業員は続ける。

「中国資本による運営の実態は、まさに『治外法権』です。現場は完全に中国式でコントロールされるようになりました。安比は各部屋にオーナーがいることが特徴ですが、運営会社は『ホテルコンドミニアム』という仕組みを理解していません。いや、そもそも理解しようともしないのでしょう。彼らが見ているのは『カネのなる木』である中国本土からの富裕層だけです」

中国式運営に「絶望」する日本人オーナー

冒頭のオーナーA氏が明かす。

「運営会社が中国資本の会社に変わると、運営会社の要望により、従来の管理契約から『特約契約』への移行が進みました。これは、ペイバックがない代わりに、管理費を大幅に下げる契約形態です。多くのオーナーが『特約契約』に移行しましたが、それ以降、サービスは著しく劣化しました。ヴィラ棟では、フロントやレストラン、売店が次々と閉鎖。さらには送迎サービスまで廃止されました」

ヴィラ棟に部屋を所有するオーナーは共通の問題を抱えている。B氏が語る実態は、もはや「嫌がらせ」の域だ。

「地下の大浴場は閉鎖され、コインランドリーは『お湯』が出ないよう細工された。雪かきすら放棄され、出入口に数メートルの雪が積もっても放置です。見かねてこちらが除雪をすると、ホテル側から『勝手なことをするな!』と怒鳴られる。

江副さんは功罪ある経営者だったかもしれませんが、スキーを愛し、本館に長期滞在するほど安比に愛着を持っていました。でも、いまは……。羅さんのグループが運営を担うと知ったとき、『小売業にサービス業ができるのか』と心配しましたが、その疑念は当たってしまった」

さらにオーナーたちを激怒させているのが、一方的な規約変更だ。

「親族以外への貸し出しも制限されました。個人オーナーを通しての宿泊だと、運営会社側の利益が少なくなるためです。一方で、1000万円以上かけて内装をアップグレードしろ、という厚顔無恥な営業をしてくる。区分所有者としての権利は、もはや風前の灯火です」(同前)

いきなり管理費が4.25倍に

羅氏らは2022年、新たに高級路線のホテルを開業。さらに、英国の名門校「ハロウスクール」の日本校も開校した。華やかなニュースはメディアを賑わせたが、その内情は順調とは言い難いという。

「新しく建てたホテルは安比初の非コンドミニアム型で、繁忙期には1泊20万〜30万円と強気の価格設定です。当初は稼働率も順調でしたが、政治情勢で中国客が激減し、今年の稼働率は苦戦しています。一方、学費は年間約1000万円になるというハロウには300名を超える生徒が在籍していますが、運営はまだまだ順調とまではいいがたいようで、その穴埋めを、個人オーナーに求めているのではないかとまで言われています」(前出・元従業員)

実際、オーナーたちは「協力負担金」などの名目で支払いを求められている。別のオーナーのC氏が証言する。

「新ホテルなどが開業した4年前から管理費とは別に、根拠不明の支払いを強要されるようになりました。最初は『特別賦課金』、翌年からは『協力負担金』という名目で支払いを求めてきたのです。しかも、その金額が高額で、部屋のタイプによっては管理費を上回るケースもあります。支払う義務はありませんが、『今年の協力金に加え、昨年の賦課金も併せてお支払いください』との文言を見て、『払わないと大変なことになるのでは』と恐怖を感じ、実際に支払ったオーナーも多くいます。

さらに今年になって、運営会社は一方的に管理費を値上げしました。棟によって値上がり額は異なりますが、本館では約1.6倍、ヴィラ棟では約3倍、アネックス棟に至ってはいきなり約4.25倍に跳ね上がりました。

にもかかわらず、2024年度から2026度の3年間、管理費の収支報告書すら送付されてきません。要求しても出してくれないのです。負担増を求めるのであれば根拠を示すべきです。

今回の合理性に欠ける管理費値上がりは、ホテル運営の失敗のツケを、管理費値上がりという形でオーナーに負わせようとしているとしか思えません」

払わなければ部屋は使わせない

運営会社による理不尽な仕打ちは金銭面だけに留まらない。値上げに関する根拠が不明なため、改定前の管理費を払っているオーナーが少なくないが、「一部の管理費の支払いが未確認になっている」との理由で、運営会社から部屋の使用を拒否されるという事例も起きている。A氏はこう語る。

「先日は、怒ったオーナーが警察を呼ぶトラブルに発展しました。その方は酸素注入されている高齢のお母様を連れて来られたが、フロントで『(改定後の管理費を支払うという)誓約書にサインをしていただかないと、鍵を渡せない』と入室を拒否されたのです。話し合いは平行線のまま3時間におよびましたが、支配人の男性は『上が言っていることなので』と一点張り。結局、お母様の体調を考慮して、そのオーナーは、契約書にサインせざるを得なかった。

私自身も自室の使用を拒否された1人です。現在、多くのオーナーが自室の使用の不便さに悩んでいます。『一方的に値上げした管理費を全額支払わないと使用させない』と勝手にルールを決めて、従わなければ利用させない。その一方で、彼らはオーナーの部屋を一般客へ貸し出し、利益を得ている。やっていることはめちゃくちゃです」

後編記事『「フマンならサイバンしろ!」岩手の名門リゾートで「中国資本vs.日本人オーナー」の争いが勃発中』につづく。

【つづきを読む】「フマンならサイバンしろ!」岩手の名門リゾートで「中国資本vs.日本人オーナー」の争いが勃発中