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データセンター。ここ数十年の映画業界において、サーバーラックが幾重にも積み重なるこの巨大な部屋はテクノロジーの裏側の象徴とも言える場所でした。

『ミッション:インポッシブル』シリーズや『エントラップメント』などで、SF感・未来感を生み出す必須セットであり、『アイアンマン2』ではオラクルのロゴが登場する、企業にとってもポジティブなPRの場となりました。

最先端技術のつまったクールで未来的な場所、映画でのシーンは大衆がデータセンターに持つイメージそのものでした。

それが、近年変化しはじめています。

2025年の映画『エディントンへようこそ』では、データセンターがネガティブな要素で登場。データセンターは街の雇用創出のために必要な存在とされつつ、皮肉の象徴のように描かれています。これは『ミッドサマー』で知られるアリ・アスター監督のブラックコメディですが、現実も大差ないのかもしれません。

これが求めていたAI革命?

ここ数年、シリコンバレーで加熱するデータセンター建築急増。データセンターは、AI革命を支えるための絶対条件、必須設備です。

しかし、AI革命が多くの普通の人にもたらしたものといえば、サイコパス感のあるチャットボットと、ガラスのフルーツをカットするアニメーション、戦争兵器、そして監視社会。AI革命で企業が歌ったような、労働時間短縮による豊かな日常も、癌の特効薬も私たちは享受していません。

世界がリアルなAI生成動画をSNSでスクロールしている一方で、エネルギー高騰と環境汚染と騒音の皺寄せが小さな町々に襲いかかるなか、彼らも反撃しはじめています。

雇用創出として「コスパが悪い」

歴史的に、企業が何かしらの大型施設を建設する場合、それがもたらすマイナス要素と引き換えに街には雇用が約束されます。データセンター誘致に反対の声が多くあがるのは、この雇用という旨みが小さいから。

AI革命が人間の仕事を奪うという大きな話ではなく、単純にデータセンターは建設後に安定して提供される仕事が多くないのです。

Food and Water Watchによる調査では、2024年時点で全米でデータセンターで定職についている人は2万3000人ほど。アメリカで多くのデータセンターがあるバージニア州では、1300万ドルの投資で街に1つの職しか創出されないとされ、ほかの業種よりも「地元雇用創出のコスパが非常に悪い」と指摘されています。

New York Focusによれば、JPモルガン・チェースによるニューヨーク市ロックランド郡オレンジバーグのデータセンター建設では、郡が7700万ドルの租税補助金を出すといいます。一方、この5,000人の町がうける雇用の恩恵は、たった1つの常勤雇用。

ちなみに、New York Focusいわく、ロックランド郡の地域産業課は、コスト・雇用のコスパの話は「視野の狭い、古いデータだ」と一蹴しており、データセンター誘致による経済には当たり前に期待しているといいます。

では、仮に楽観的に考え、データセンター誘致で町と町の人が潤ったとします。この潤いと引き換えにするのは、高騰する電気代と公水道の汚染リスク。

データセンターによる長期的なリスクは不確かなまま、町の人の声はかやの外で進む誘致計画。現在は、町ではなく州、国レベルで適切な調査をすべきという声が増えてきています。

米国各地で抵抗がはじまっている

データセンター建設が進むアメリカでは、「上(州や国)の判断を待っていては遅い」と動き出した地域もあります。

ミズーリ州のフェスタスという町は、住民の不安の声を無視し、60億ドル規模のデータセンター建設にGOサインをだした市議会議員の半数を解任。市長辞任も求められています。

オクラホマ州のオクラホマシティでは、年内のデータセンター建設許可決定を停止。

また、カリフォルニア州のモントレーパークはさらに踏み込み、郡内のデータセンター建設を永久禁止とする方針を打ち出しました。

モントレーパークの例は、市民が大きな声をあげればあげるほど、企業や地域自治体の進行が難しくなることを証明したいいケースであり、今後全米のお手本となるかもしれません。

全米のデータセンターへのイメージは、イーサン・ハントから大きく変わりつつあるのは間違いありません。

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