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【深掘りバズリーチ】#4

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 あらゆる分野でAI化が進み、これまでのビジネスモデルが成り立たなくなり、企業は生き残りをかけて新規事業の構築が急務だ。異業種参入も相次ぐ中、異彩を放つのが、自動車用電球メーカー「大井川電機製作所」が始めたキノコ事業だ。生産するハナビラタケは「ホホホタケ」のブランドが確立し、キノコ事業は年商1億円にまで育っている。なぜ電球メーカーはキノコに目をつけたのか。

 茶葉の生産が盛んな静岡県島田市川根町に本社を置く同社は1967年に電球事業で創業。70年ごろから自動車用電球に特化し、大手自動車灯具メーカーへのOEM(相手先ブランドによる生産)供給を軸に、日本最大級の生産規模を誇るまでに成長した。これまでに出荷した電球は、実に約50億個に上るという。

 しかし、白熱電球はLED電球に取って代わられ、ビジネスモデルが揺らぐ。そこに低コストを武器に台頭した海外企業の価格競争も重なり、2010年代になるとピンチに追い込まれた。

 その逆風を受け、13年からは新規事業を検討する幹部会議を毎週開催。チョウザメの養殖、ワサビ栽培、塾経営、餃子生産、そして便利屋まで本業とは無関係な事業が幅広く提案され、事業候補を真剣に検討した中、最終的にたどりついたのが1次産業だったという。

「10億円以上の初期投資が必要な植物工場は、大手企業ですら撤退している」

 そんなコストをしっかりとチェックする意見なども踏まえて白羽の矢を立てたのがキノコだ。その中でも、ハナビラタケはマツタケより珍しく競合農家も少ないことが判明。キノコ事業の柱に据えることが決まったという。

 ハナビラタケは標高1000メートル以上の高山に自生し、雑菌に弱いため、これまでは栽培が極めて難しかった。「幻のキノコ」と呼ばれるゆえんだが、身は肉厚でアワビのようなコリコリした食感と独特の豊かな風味から、食通の間では希少性と相まって人気が高い。鉄板焼き店やフレンチ、ホテルなどの高級店も注目する食材だ。

目標は年商2億円、追い風も吹いている

 さて、満を持して開発に乗り出したものの、最初は色も形も悪く、独特の臭いもあって失敗の連続。栽培の肝である「滅菌」がよくなかったようだが、その高い壁が「技術者魂」に火をつけた。トヨタやホンダなどを頂点とする自動車業界は、厳しい品質管理で知られる。「ただ一つの不良品も許されない」という中で磨かれてきた品質管理基準の高さが、キノコ生産に応用され、成功に結びついたのだ。

 室内の温度や湿度、二酸化炭素などをデジタルで徹底的に管理し、そのデータを蓄積して、改善する。電球事業で培われた生産管理技術が役立ち、高品質な栽培が実現したという。

 しかし、デジタル管理だけではない。佐々木孝行社長が言う。

「電球の製造は元々、ガラスのロットや火の燃焼具合を見ながら、職人の目と感覚で機械を調整してきました。ハナビラタケの生産も、工夫を積み重ねた結果です。キノコは生き物ですから、デジタルな数字通りに進めるだけでなく、3年から5年の現場経験を積むことで数字を微調整する意識や感覚の養成が必要になるんです」

 キノコ栽培は、5人のベテラン技術者が担当。試行錯誤を重ねて18年に生産体制が確立すると、20年に量産体制が整い、25年末に十分な品質を保った安定供給が実現した。18年に100万円だった月商は今や1000万円、年商1億円に拡大している。

 キノコ事業の次の目標である年商2億円に向けて追い風も吹く。昨年、含有成分のエルゴチオネインが中高年の言語記憶力など認知機能維持に役立つとして、機能性表示食品に認められた。

 ハナビラタケは、まだまだ大きな“花”を咲かせそうだ。