冬季閉鎖中と知りながら富士登山、滑落したアメリカ人救助…4月はアイスバーン・強風「エベレスト級」
22日午後5時45分頃、富士山の「吉田ルート」の9合目付近で「友人が滑落している」と消防に通報があった。
翌日、山梨県警富士吉田署員らが救助に向かい、夕方までに米国人の男女2人を救助した。ともにけがを負ったが、命に別条はない。富士山は冬季閉鎖中だったが、2人はスキーをするために入山したという。冬の富士山での訪日外国人らの遭難は後を絶たず、関係機関が注意を呼びかけている。(涌井統矢、次井航介)
同署の発表によると、救助されたのは米国籍の写真家の男性(26)と、いずれも自称で米国籍のスキーインストラクターの女性(27)の2人。
2人は22日午前9時頃、スキー登山のため、5合目から山頂へ向け登山を開始。同午後2時頃、9合目付近で強風にあおられて男性が滑落し、女性とはぐれた。男性が日本の友人に助けを求め、友人が消防に通報したという。
23日の早朝から同署山岳救助隊や県警山岳警備安全対策隊など20人以上で捜索・救助を開始。天候不良によりヘリが飛ばせないため、5合目から登山道を登り、2人を救出した。
男性は滑落後、自力で7合目の山小屋付近に避難しており、女性も8合目の山小屋付近で発見された。それぞれ病院に搬送され、男性は左足首の脱臼骨折。女性も鼻の骨を折るなどのけがを負ったが、命に別条はないという。
2人は、冬季閉鎖中であることを把握した上で入山したといい、これまでもスキーのために冬山に入った経験があることから「大丈夫だと思って登った」などと話しているという。
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吉田ルートは、昨年9月10日に閉山し、以降は5合目〜山頂が冬季閉鎖中で、例年7月1日の山開きまでは、通行禁止となっている。
昨年の閉山以降、山梨県側での山岳遭難は初めてだが、静岡県側では今月6日、富士宮口5合目から入山したポーランド人の男性が滑落する事案が発生。同県防災ヘリが救助した。
また、その男性の目撃証言から、愛知県豊橋市の自営業男性も遭難していることが分かり、山岳遭難救助隊が捜索。宝永第1火口付近で心肺停止状態で発見され、その後、死亡が確認されている。
4月はアイスバーン、非常に危険
山頂付近の気温が氷点下30度を下回る閉山期の富士山。風速30メートル超の強風も吹き荒れることから「エベレスト級」とも言われるほど危険な山となる。
雪山登山に詳しい日本山岳・スポーツクライミング協会の広川健太郎登山部長(66)は「4月は、麓の雨が富士山上部では雪となって雪崩の危険が生じ、雨の場合は冷え込むとアイスバーンになり、非常に危険」と指摘し、「(入山は)自粛された方がいい」と強調する。
山梨・静岡両県では、長年、冬季入山の自粛を呼びかけているが、毎年のように強行する登山者が遭難被害に遭っている。
昨年4月下旬には、中国籍の男子学生が、数日間で2度救助される事案が発生。山梨・静岡両県の麓自治体の首長らから救助の有料化を求める声が上がり、両県では防災ヘリでの救助有料化の検討を進めている。しかし、対象とする山や時期を選定することが難しく、救助が原則無料となっている警察や消防のヘリとの公平性の問題などから、議論は行き詰まりの状態だ。
閉山期は、緊急時に避難できる山小屋も閉鎖しているうえ、気象条件によっては救助に時間もかかるなど悪条件が重なっており、県の三枝徹・富士山観光振興監は「冬季閉鎖中の富士登山は大変危険。お控えいただきたい」と呼びかけている。
