「裸になったまま、陰部と肛門までチェックされた」ある日いきなり逮捕された“東大院卒のエリート弁護士”が、拘置所で味わった“想像以上の屈辱”〉から続く

 早稲田大学法学部を卒業後、東京大学法科大学院を修了、華々しいキャリアを歩む“エリート弁護士”だった江口大和さん。2018年10月、交通事故を起こした男にうその供述をさせたとして、犯人隠避教唆の疑いで横浜地検に逮捕された。

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 江口さんは、検事から「ガキ」「お子ちゃま」などの罵詈雑言を浴びせられる57時間の取調べ、家族や友人に会えない250日間の勾留を経験。彼が実際に見聞きした“獄中”のリアルとは――。

 ここでは、江口さんの獄中メモを下敷きに、逮捕から今なお続く国家賠償訴訟の行方まで、約7年にわたる闘いをつぶさに記録したノンフィクション『取調室のハシビロコウ: 黙っていたら、壊された。 ある弁護士の二五〇日勾留記』(時事通信出版社)より一部を抜粋して紹介する。(全4回の3回目/4回目に続く)


写真はイメージ ©takasu/イメージマート

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検事の見下しと罵倒

 川村検事は、私が人間的に未熟であることや、人格面に欠陥を抱えていることを、何度もあげつらった。

〈 まあこんなようなお子ちゃま発想だったんでしょうね、あなたの弁護士観っていうのはね。全然大間違いですよ。ガキだよね、あなたって。なんかね、子供なんだよね。子供が大きくなっちゃったみたいなね。昨日の押収手続のことに関しても、昨日散々言ったけど、発想が子供なんですよね。昨日の手続見てても、なんか大きい子供がいるなあみたいなね。びっくりした感じですよね。逆に言うと素直だな、っていうところなんだけど。根が素直なんだろうなって。上から目線で申し訳ないけども。面白いですよね。(10月26日)〉

 川村検事は、上から見下しつつバカにする表情と口調で、私を「子供」のように扱った。正面から見下されて罵倒されると、どれほど感情を抑えようとしても、心に傷が残る。ましてや、自分の弁護士観という価値観に関わる部分を否定されて、そのダメージは大きかった。

 そして、中学校から得た成績表をもとに、私が昔から論理性に欠けていたことをあげつらう。

〈 あなたの中学校の成績見てたら、あんまり数学とか理科とか、理系的なものが得意じゃなかったみたいですねえ。本はたくさん読んでたみたいだけど。なんかちょっと、論理性がさあ、なんか、ずれてんだよなあ。(11月1日)〉

理不尽な論理

 さらに川村検事は、日常の行動すら人格攻撃の対象にした。私がトイレに行こうとしたときも、服従する態度をとるよう求めてきたのだ。

〈江口 トイレに行きます。

川村検事 トイレがなんだ。

江口 トイレに行きます。

川村検事 「行きます」じゃなくて、「行きたいです」でしょ。

江口 トイレに行きます。

川村検事 「行きたいです」

江口(沈黙)

川村検事(事務官に) まあいいや、じゃあ呼んで。なんで言い直さないんだ。

(江口が離席し、戻ってきて着席する)

川村検事 取調べ中断してすいませんでしたとか言うんじゃねえの、普通。子供じゃないんだから。あんた、被疑者なんだよ。犯罪の。(10月23日)〉

 取調べの場は、毎回緊張を強いられる。普段の生活をしているときよりも、トイレに頻繁に行きたくなる。私だって好きでトイレに行っているわけではなく、尿意がコントロールできなくなるのだ。それなのに川村検事は、トイレのときはおうかがいを立てるよう求め、戻ってきたら謝るよう迫ってきた。

 川村検事は私が犯罪の被疑者だからという理由を挙げるけれど、私は被疑者である前に、ひとりの人間なのだ。それなのに彼は、「被疑者だから」と理不尽な論理を押しつけ、あたかも人間としての格が数段下がっているかのように扱った。

「詐欺師的な類型」とまで言われ…

 このような人格攻撃は、逮捕から2週間以上が経っても止まらなかった。かえって、それまでよりも踏みこんだ暴言へと変化していった。

〈 誰がそんなあなたのことを信用するんだ、今後、そんな態度で。噓に噓を重ねることになりますよ。もともと噓つきやすい体質なんだから、あなた。……隠したりとかね、こっちが聞かないから答えないとかさ、そういうのは往々にして取調べでもあるんですよ。だけど、こんなにはっきり、取調べにおいてね、明確な噓をつくのって、ちょっとやっぱ特殊な人が多いですよね。やっぱ詐欺師的な類型の人たちですよ。あなたもそこに片足つっ込んでると思うな。(11月1日)〉

 逮捕前の任意の取調べのとき、私は真剣に記憶をたどり、真面目に事実経過を述べていた。それを真正面から「噓」と決めつけられ、「詐欺師的な類型」とまで言われるのだ。記憶を語る努力が噓と断じられることは、悲しかった。なぜここまで罵倒されなければならないんだ、と悔しくもなった。

〈「お前、何やってんだよ!くさいんだよ!」20代の青年が独房の壁に糞尿を塗りたくり…“東大院卒のエリート弁護士”が明かす“250日間の勾留生活”〉へ続く

(江口 大和/Webオリジナル(外部転載))