「プラグインハイブリッド車」のCO2排出量、実際にはガソリン車とあまり変わらない
2025年10月26日の記事を編集して再掲載しています。
ガソリンと電気の両方を使って走るプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)。
環境にやさしいと謳われますが、実際の二酸化炭素(CO2)排出量は、公称値の5倍近く多いことが判明しました。
環境にもお財布にも、そんなにやさしくなかった
欧州連合(EU)などの規制当局はこれまで、PHEVのCO2排出量はガソリン車やディーゼル車と比べて75%少ない、と公式に発表してきました。
しかし、2025年10月16日に非営利団体「Transport & Environment(交通と環境)」がまとめた報告書によると、PHEVのCO2排出量は内燃機関車(ICE)よりわずか19%少ないだけでした。なおこの研究では、2021〜2023年に欧州で登録された自動車80万台の車載燃費計が分析されました。
「現実世界のデータと公式データの間にこれほどのギャップがあるのは、かなりのスキャンダルだと思います」
と、この研究の共著者の一人であるYoann Gimbert氏は米Gizmodoに語っています。
このギャップは年々拡大しています。2021年には、PHEVの実際の排出量は推定値の3.5倍でしたが、2023年には4.9倍に広がっています。
実際はガソリンで走っている場合がほとんど
このような乖離は「ユーティリティ・ファクター(UF)」と呼ばれる指標にも表れています。ユーティリティ・ファクターとは、車が電動モードで走行した距離の割合を総走行距離で割った比率のことで、EUの推定にも使用されています。
EUの公式推定では、PHEVのユーティリティ・ファクターは84%以上とされていましたが、研究者たちが実際に確認したところ、わずか27%に過ぎませんでした。
なぜ、こうした事態が起こっているのでしょうか。その理由のひとつとしてGimbert氏は、欧州のPHEV所有者の多くが、電気で車を走らせることにあまり魅力を感じていないからではと考察しています。
PHEVには電気で動くモーターとガソリンで動くエンジンが搭載されているため、電気のみでもガソリンのみでも走れます。標準的なハイブリッド車(HEV)との大きな違いは、バッテリーに外部充電できるという点です。
PHEVは完全に電気のみで走行することができますが、実際にはあまり活用されていないようです。高速充電機能や電気モーターの出力の性能の低さなどが原因かもしれません。
推定値の算出方法を見直す必要あり
また、PHEVは完全な電気自動車ではないということも、このギャップを広げている一因でしょう。
PHEVは電動モードであっても、車は部分的にハイブリッドモードに依存しています。つまり、PHEVは完全な電動モードで動作するようには設計されていないということに研究者たちは気づいてしまったのです。電動モードで走行しているときでも、少なくとも3分の1の距離で化石燃料を燃焼しています。特に加速時、高速走行時、または坂道を登る際には、エンジンが電気モーターを補助することになります。
「実際のところ、電動モードであっても1キロメートルあたり68グラムのCO2を排出しています。ゼロ・エミッションではないのです。これは消費者があまり予想していないことだと思います」
とGimbert氏は述べています。68グラムという数値は、EUの方法論による推定値(1キロメートルあたり8グラム)の9倍です。
こうした結果から研究者たちは、「内燃機関への頻繁な依存により、多くのPHEVの排出量は、従来のハイブリッド車やガソリン車と大差ない」と結論づけています。
EUは、ユーティリティ・ファクターの算定方法にいくつかの修正を発表し、2026年には自動車の炭素排出基準全体の見直しを行う準備を進めています。研究者たちは、この修正を前向きに捉えつつも、完全な基準見直しを行わない限り、現実世界での排出量は依然として公式数値より18%高いままだと述べています。
EUは基準の見直しに反対
しかし、欧州の自動車業界はこれに反対しているようです。Gimbert氏は、ドイツ自動車工業会(VDA)は、修正を撤回し、現行の方法論を維持し、さらにEUが2035年までに新しい内燃機関車を禁止するという物議を醸す方針を撤回させるためにロビー活動を行っていると説明します。
また報告によると、PHEVのCO2排出量の過小評価によって、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMWといった大手自動車メーカーは、2021〜2023年におよそ50億ユーロ(約約8,700億円)の罰金を回避することができたとのこと。
自動車業界のロビー活動が成功すれば、現在のEU規制のもとで、2050年までに排出される炭素量が64%増加する可能性があると研究者たちは主張しています。
Gimbert氏は
「PHEVは2035年までに100%の排出削減を達成できるようには設計されていません」
と述べています。
アメリカでの需要も横ばい
アメリカでは電気自動車の価格が高騰を続けており、特に電気自動車税額控除がない状況下では、欧州に比べて電気自動車への関心がさらに低下しています。
アメリカ自動車協会は、電気自動車の需要が減少を続ける中で、消費者がHEVやPHEVにより関心を示す可能性があると考えています。が、今年初めの予備データによると、HEVの需要は急増しているものの、少なくとも現時点ではPHEVの需要はほとんど横ばいです。

