北朝鮮女性の間でダイエット、ボトックス、シャネルが流行 韓流ドラマの影響にイラ立つ金正恩
見てはいけない、聞いてはいけないと言われれば、ますます好奇心がふくらむ――これはどこの国でも同じだろう。
北朝鮮では韓国ドラマをひそかに視聴する人があとを絶たず、最近では裕福な層の女性を中心に、韓国ドラマを真似してダイエットやしわ取りのボトックス注射をする人も出てきたという。当局は、取り締まりを強めているが、効果はあがっていない。
北朝鮮専門メディアデイリーNK(3月24日)によると、北東部の咸鏡北道清津市などで、若い女性を中心に体形管理への関心が高まっている。従来はふっくらした体形が健康と富の象徴とされていたが、最近はほっそりした体形に憧れるようになっているという。
現地の消息筋は「最近、富裕層の女性たちは太るのを嫌って食事の量を減らし、運動をしている」と語った。以前と違って、細い体がきれいだという認識が広がっている。これは、韓国ドラマに出てくる女性たちの体形や、会話の影響が大きいという。
40~50代の中年層になると、体形よりスキンケアや、しわの改善に関心が移ってくるのは、自然な流れかもしれない。
しわ緩和効果があるとされるボトックス施術(注射のこと)を試みる人もいる。記事によれば、注射は1回、現地の値段で1万ウォン程度。韓国の報道によれば、北朝鮮では昨年、給料が大幅に引き上げられたが、公務員の月収は3~4万ウォン程度にとどまっているとされるだけに、費用の負担額は小さくない。必要な薬品や機材は中国側から入手しているようだ。
また、中国と接する北朝鮮の国境地帯に住む富裕層を中心に、高級ブランド「シャネル」の化粧品や香水が高値で流通しているという。
韓国を排斥「最も敵対的な国」
こういった韓国エンターテインメントの流入にイラ立っているのは、金正恩総書記だ。
23日、国会に当たる最高人民会議で施政方針演説し、このなかで韓国を「最も敵対的な国」と位置付け、「徹底的に排斥し、無視する」と強い調子で宣言した。住民に対し、韓国への関心を断つように求める発言だ。
当局はすでに韓国遮断のため、あらゆる規制や手段を取っている。反動思想文化排撃法(2020年制定)は 韓国の映像を視聴したり保管したりした場合、最高15年の懲役刑、公開の場で死刑に処されたケースも北朝鮮で報道されている。
韓国式の言葉遣いや外来語を使った場合は、平壌文化語保護法(2023年採択)に引っかかり、厳しく処罰される可能性がある。さらに南北との対話機関は廃止、連絡道路は爆破され、物理的な隔離も進んでいる。
しかし、やはり感性が似た韓国のエンタメは、北朝鮮の人の心を捉えて放さない。北朝鮮には「韓国ドラマを見たことがない人はいても、一度しか見ていない人はいない」という表現がある。一度見れば、誰もがはまるという意味だ。
指先ほどのマイクロSDカードにコンテンツをコピーし、摘発されるケースも伝えられる。韓国ドラマに触発されて、脱北を決断したという証言も少なくない。いくら核ミサイルで武装し、強力な統制をかけても、人の嗜好や価値観まではコントロールできないということだろう。
文/五味洋治 内外タイムス
