高市早苗首相

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【全2回(前編/後編)の前編】

 日本全国で吹き荒れる“高市旋風”は各選挙区でどんな影響を及ぼしているのか。急ごしらえで結成された中道改革連合は、なぜ伸び悩んでいるのか。注目の候補者の戦いぶりを見てみると……。

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【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 以前と比較すると「まるで別人」

 ギリギリまで自民党と中道改革連合の候補者が激しく競り合うことになりそうなのが東京24区である。

 自民党の萩生田光一幹事長代行(62)は一昨年、立憲民主党の有田芳生前衆院議員(73)に約7500票差まで迫られた。24区は創価大などがある創価学会の聖地・八王子市の大部分で、公明票は約3万票に上る。

「前回の対抗馬の有田氏は八王子の学会員から学会に批判的な人物と見なされており、萩生田氏は裏で学会からの支援を受けたことで何とか勝てたのです。しかし今回、中道は公示直前で有田氏と別候補を差し替え、公明票を全面的に得られる体制を整えた。当然、萩生田氏の苦戦が予想されていました」(政治部デスク)

「悪の帝王、萩生田光一、ハンターイ」と罵声が

 今回、萩生田氏に挑む中道新人の細貝悠前都議(32)は清潔感があり、女性部を中心に学会員からの評判も上々だという。実際、1月30日、八王子みなみ野駅前で行われた細貝氏の街頭演説にも数十人に及ぶ学会女性部と思しき女性たちが動員されていた。現場で「細貝」コールをしていた一人に話を聞いた。

高市早苗首相

「投票依頼などをメールで送ると公職選挙法違反になるそうで、街頭演説の日時・場所などはラインで送られてきます。その情報を元に、知り合いを誘って応援に来た。公明党の頃から“中道主義”を掲げてきましたから、結束は固いと思います」

 萩生田氏が敵に回しているのは学会だけではない。同区出馬の無所属で保守系インフルエンサーの深田萌絵候補(47)が2月2日、萩生田氏の八王子駅前での街頭演説中に現れて、

「悪の帝王、萩生田光一、ハンターイ」

 などと、罵声を浴びせる事案が発生したのだ。

「萩生田氏側が“選挙妨害で公選法違反に当たる恐れがある”と警告を発する事態に発展しています」(前出のデスク)

 そんな萩生田氏にも“味方”はおり、

「屋内の演説会には萩生田氏が後援会長を務めた元横綱照ノ富士など複数の大物ゲストが招かれました。安倍晋三元首相の妻・昭恵さん(63)が涙ながらに“主人は(萩生田氏を)本当の家族のように思っていたのだと思います”と語る動画は萩生田氏のYouTubeチャンネルでも公開されています」(同)

「裏金議員」も高市旋風で当選圏内に

 その萩生田氏同様、前回、裏金問題の逆風に苦しんだのが丸川珠代元参院議員(55)である。参議院から鞍替えして東京7区で出馬したものの、立民候補に3万票の大差をつけられて落選。浪人生活を送ってきた。再起を期して、1月30日、渋谷のセルリアンタワーで行われた「総決起大会」には応援弁士として小野田紀美経済安全保障担当相(43)が登壇している。

「小野田経済安保相は北区議時代に参院議員だった丸川氏から選挙応援を受けた恩があると強調した上で、“失敗してしまったこともありますが、頼りになる政治家です”と、暗に裏金問題にも触れながら熱弁を振るっていました」(参加者)

 前回、丸川氏は“反自民”の抗議活動を避けるため、遊説日程を非公表にした。しかし、その結果、有権者に名前が浸透せず、それが敗因の一つとされた。その反省を踏まえたのか、

「一人でも多くの有権者と触れ合うために日程は基本的にオープンにしています」(丸川選対事務所)

 遊説場所への移動にママチャリを利用している丸川氏本人によると、

「人にたくさん会えるので自転車に乗っています。(厳しい声は)もちろんあります。真摯に受け止めるところからしかスタートできないので、きっちり聞かせていただいております」

 そんな彼女は序盤に苦戦が報じられたものの、終盤には当選圏内に。その要因が“高市旋風”であることは論をまたない。その風は、現役閣僚ながら東京3区で苦戦するとみられていた石原宏高環境相(61)にも勝利をもたらす勢いだ。

“豚まんのおかげで高市首相を呼べた”

「“高市旋風”は特に都市部で吹き荒れている。島嶼部に加えて品川区を有する3区も例外ではなく、前回は立民支持だった一部の無党派層も石原環境相に流れるといわれています。中道が伸び悩んでいる理由の一つが、無党派層離れでもあります」(前出のデスク)

 選挙期間中、石原環境相は“セキュリティー”を理由に遊説日程を非公開にした。さらに、青年会議所や動画メディアが設定した公開討論会も欠席。対立候補からは非難の声が上がっている。

 国民民主党の石田慎吾候補(46)がこう憤る。

「石原さんは青年会議所の公開討論について、“閣僚だから警備上、そもそも演説場所を公開できない”という理由で欠席したようですが信じられません。関係者に聞いた話では、石原さんは“議論ができないから”と。動画メディアの担当者も、“石原事務所の担当者と連絡が取れなくて、討論会のスケジュールが組めなかった”と言っていました。仮にも大臣なのに、恥ずかしくないんですかね」

 苦手な公開討論に出てまで有権者にアピールせずとも、高市人気のおかげで勝てるのなら無理をしたくないということか。

 石原環境相を救った“風”は地方でも吹いている。特にSNSで話題になったのが、1月30日、高市早苗首相(64)が福岡市内で行った演説の風景だった。会場となった公園は黒山の人だかりで、首相の人気のすさまじさが可視化されたのである。

 高市首相はその日、福岡県内の各候補者の元を回っている。福岡11区で前回落選して浪人中の武田良太元総務相(57)もその一人だ。

 地元政界関係者の話。

「高市首相は平日の14時半からごく短時間での滞在だったにもかかわらず、行橋市内の行橋駅前で行った街頭演説会にも5000人ほどを集めたと聞いています。会場になったのは駅の西口の方だったのに反対方面の東口まで人でいっぱいで。見たことない景色でした」

 高市首相はその演説会場で、次のように武田氏を持ち上げてみせた。

「主人はまだ病気で動ける状況じゃなくて、そんな時に武田良太さんが中華おせちを送ってくれて、その上に私が大好きな豚まんまで送ってくれた。それでお正月明けまで私たち夫婦は生存することができました」

 先の関係者が言う。

「武田氏は“豚まんのおかげで高市首相を呼べた”とホクホクです。武田氏は九州の学会幹部とも関係が良く、学会の支援も個人的に取り付けているといわれており、議席獲得に自信を示しています」

青山繁晴氏の人気ぶり

 今回の選挙で保守層の自民党回帰を象徴するのが兵庫8区だ。長年、公明議員が守り抜き、学会が“常勝関西”の牙城と位置付けてきた選挙区。公明議員が比例近畿ブロックに転出したのに伴い、弁護士出身の新人女性候補が学会の支援を全面的に受けることになった。その中道候補と対峙するのが参院から衆院に鞍替えした、保守層に強い青山繁晴元参院議員(73)である。

 青山氏は8区からの鞍替え立候補を選んだことについて、

「この場所は自由民主党の(独自)候補者が30年間、いなかった。長年、(投票先がなく)『石原裕次郎』と書いてきたという男性の方もいました。そういうことを変えていきたい」

 こう街頭で熱弁しているのだが、目を見張るのはその人気ぶりだ。街頭演説の後には、握手や写真撮影を求めて十数人の聴衆が列をなすのだ。青山氏の著作を抱えて、サインを求める人の姿もちらほら見かけた。

 聴衆の高齢女性は、

「青山さんは言うことがはっきりしているから気持ちがいい。自民党にはやり直してもらいたい」

 そう期待感を語る。

 後編では、高市首相から“嫌がらせ”を受けた村上誠一郎前総務相や、裏金問題からの再起を期す杉田水脈氏など、そのほかの注目候補について報じる。

「週刊新潮」2026年2月12日号 掲載