年齢は関係ない! 194センチ・85キロのGK荒木琉偉が放つオーラ。最後の砦としての矜持「自分が全体を落ち着かせないといけない」
30分に左CKからニアですらされたボールを中央でMF小島蒼斗に押し込まれて先制こそ許したが、前半に浴びたその他の8本のシュートには、抜群のタイミングの飛び出しや安定したキャッチングでゴールを破らせなかった。
荒木は冷静だった。すぐにふわりとしたシュートの軌道が枠内を捉えていると判断すると、素早くバックステップを踏んで落下地点に入り込んで、右手を振り上げてバーを越すようにトスティングでゴール外に弾き出した。
その後、チームは76分に守備の要の山本天翔が2枚目のイエローカードで退場するという苦しい展開に陥ったが、荒木は最後まで冷静に、かつチームを鼓舞する声をかけ続け、これ以上の失点は許さなかった。
結果は0−1の敗戦となったが、後半は盛り返して両サイドからチャンスを作り出し、10人になっても果敢に攻めるなど、チームにとっては決してマイナスばかりではない結果となった。
「あの失点は隙を与えてしまった。本当に悔しいです」
試合後、そう悔しさをにじませる荒木に、野村のシュートセーブについて聞くと、こう口にした。
「(強シュートを警戒して前に出たのは)僕のジャッジミスでした。でも、即座に反応して外にセーフティに弾く選択をしました」
冷静な判断の軌道修正とポジションの取り直しのスピードは凄まじかった。加えて緩やかなボールだからこそ、外に弾き出すのは難しいが、力むことなく正確にボールを手で捉えてバーを超させた。非常にクオリティの高いリカバリープレーだった。
「あれは実戦でよく起こりうる事象だと思います。ありがたいことにトップチームの高いレベルで練習させてもらっているからこそ、軌道が変わったり、アクシデント的なことが起こったりしても対処できていると思います」
昨年の10月14日に17歳の誕生日を迎えると同時にプロ契約を締結し、トップチーム昇格を果たしている。トップではJリーグ屈指の名手たちの力強く正確なシュートを受けるなど、経験を積んでいた。
さらにユースでは佐野智之GKコーチの指導のもと、ハンドリングを鍛えるために、お手玉やボール遊びを取り入れて、細かい手の感覚を養ったことで、キャッチング、パンチングやトスティングなどの安定性や修正する感覚を掴むことができた。
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サイズに頼ることなく、GKとして必要な細かい技術を着実に身につけたことで、荒木は世代トップとも言えるGKにまで成長した。
U-15日本代表からコンスタントに年代別日本代表に選ばれると、昨年9月にはキルギスで開催されたU-20アジアカップ予選に16歳で選出され、3試合中2試合にフル出場。今年2月にU-20日本代表に選出されると、U-20アジア杯で正GKとして出場。グループステージの3試合と、勝てばU-20W杯出場が決まる準々決勝のイラン戦でピッチに立った。
イラン戦では開始5分に失点こそするが、そこからは安定したゴールキーピングを披露。1−1で迎えたPK戦ではシュートストップこそなかったが、試合中から見せていた堂々とした振る舞いで相手キッカーを威圧。2本の失敗を引き出し、日本を世界に導いた。
「アジアカップは空気感が全然違った。特にイラン戦の空気感は独特で、入りから飲み込んでくるというか、ロングボール、ハイプレス、デュエルのところで勢いよく来るのですが、まだそこで負けている部分があった。彼らは死に物狂いで追いかけてくるので、その時に自分たちが上回れるかが大事だと思ったし、いろんなプレッシャーがのしかかるなかでやれたというのが、確実にこれから生きてくると思います」
GKは経験がモノを言うポジション。荒木は若くして、その場に立たなければできない経験を着実に積み重ねている。だが、彼と話していると『年齢』を出されることに違和感を覚えているように感じた。
「年下だからとか僕も思っていないし、周りも思っていないと思う。年齢関係なしにキーパーは最後の砦なので、自分が全体を落ち着かせないといけないし、ゲームをコントロールしないといけない。フィールドの選手たちが安心して任せられるキーパーじゃないと、みんな思い切って力を発揮できないと思うので、そこは安定感を大事にしています」
すでにGKとしての自覚は確立されている。思えば日本代表の守護神である鈴木彩艶も、最年少の18歳で東京五輪のメンバーに選ばれ、昨年は21歳でアジアカップの全試合に出場を果たした。鈴木もその時、「周りは経験豊富な選手たちばかりですが、キーパーが自信を持ってプレーしないと。全体に与える影響は大きい。怯まずトライし続ける。この気持ちが大事だと思っています」と口にしたように、GKは常に凛とした態度とメンタルでゴールの前に立ち続けないといけない。
「鈴木選手はポテンシャルが凄まじいのはもちろんですが、コツコツと積み上げた結果が今だと思うので、そこに負けていられない。身体つきも素晴らしいですし、キックもどんどん成長しているイメージ。あそこまでいかないといけないと思っています」
志も高く、覚悟も固い。日本の将来を照らす守護神は、さらにストイックに己の道を一歩ずつ踏みしめていく。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
