「下着の話」はタブーなの?多くの親子が感じるブラジャーの不安 企業・学校が試みる『下着教育』とは
成長期の女の子は、初めてのブラジャーを付ける時期がやってきます。女性が人生の多くの時間を身に着けて過ごすブラジャー、その付け方や選び方について子どもは親にどう尋ね、親は子どもにどう伝えればよいのでしょうか。
【写真を見る】下着メーカーが伝える「3つのステップ」/学校が取り組む「下着教室」 子どもの悩みに大人たちはどう向き合う?
家庭内外での『下着教育』の重要性を、企業や学校が伝えています。
(RKKデジタルメディア部:正木友依子)
親も子も不安? 初めてのブラジャー
下着メーカー「ワコール」では、子どもや保護者が「体の成長と下着との関係」について学ぶ講座を出前教室やオンラインで実施しています。
ワコール社員で『ワコールの学ブラ講座』などの講師を務める上地朋子(うえち ともこ)さんの下には、子どもたちから「人に相談できない」「周りの子と比べて成長が早い・遅い」といった悩みが寄せられるといいます。
一方、保護者からは「どんなブラジャーを選べばいいのかわからない」「子どもがブラジャーを着けてくれない」といった相談が多いということです。
ワコール 上地朋子さん「講座ではまず『周りと比べる必要はない、人との違いはあって当たり前』ということからお話ししています」
成長期の「ブラジャーの選び方」とは
成長期のブラジャーの選び方について、上地さんに聞きました。
女性の体は初経前後の4年間で大きく変化するため、「三つのステップ」で考えてほしいと話します。
【成長期のブラジャー 三つのステップ】(引用:ワコール『MY BODY BOOK』)
【1】バストのトップや周辺がふくらみ始める(初経の1年以上前)
→胸がチクチクして服から透けるのが気になったら、トップが二重になっているインナーを選ぶ
【2】バスト全体がふくらみ始める(初経を迎えるころ)
→成長をサポートする、伸縮性のある素材を選ぶ
【3】大人のように丸く立体的にふくらむ(初経の1年以上後)
→大人用のブラではなく、ジュニア用の圧迫が少ないブラを選ぶ
また成長には個人差が大きく、バストのトップ(ふくらみの一番高い所)とアンダー(ふくらみのすぐ下)を定期的に測り、成長段階に合わせたブラジャーを選ぶことが大切です。
上地さん「親世代と比べて子どもの成長が早くなっていて、情報のアップデートが追いついていないことがあります。サイズが体に合うとすごく快適になるので、何とかメリットを周知できればと思っています」
一方、学校独自に行っている『下着教育』もあります。そこには、教育現場ならではの“難しさ”も伴うようです。
ブラジャーは「首から下のファンデーション」
2024年7月、熊本市の私立学校で、夏休みの中高生を対象に『下着の教室』を初めて開催しました。
講座ではスライドショーを使って、ブラシャーの選び方や付け方を解説。正しく着用することで「体を清潔に保つ」「体温を調節する」ことのほか、体調や姿勢、見た目を整え、自信にもつながることが説明されました。
参加者のうち中学生グループの5人は、口をそろえて「自分のサイズを正確に測ったことはなかった」といいます。
参加した中学生たち「自分のサイズは考えたことがなかった」「普段はネットでお母さんが買っています」「服屋さんや専門店で買うのは気まずくて…」
こうした生徒たちに向けて、印象的なのは「ブラジャーは“首から下のファンデーション”です」という講師の言葉。資料にも「インナー」「ファンデーション」という表現が並んでます。これはどういう意味なのでしょうか。
「下着」は言ってはいけないこと?
講師を務める田島完佳(たじま ひろか)さんは、「下着のフィッティングアドバイザー」として15年以上活動しています。
その中で大人の女性から肩こりや頭痛など体調の悩みやコンプレックスの相談を受けることが多く、早めの教育の重要性を感じたといいます。
田島完佳さん「きっかけは、あるお客さんでした。子どものころ、胸の成長が早くてもお母さんに買ってほしいと言えなくて、男の子にからかわれたことで“下着”に対して大きなトラウマがあると、泣きながら相談に来ました」
震える手でブラジャーを付けていたという女性。洋服を着て鏡の前に立った時、「体のラインがこんなに変わるんですね」と話し、笑顔が戻ったといいます。
田島さんは、約2年前に公立学校での『下着の教室』の実施を自治体に相談。しかし、具体的な検討には至りませんでした。
田島さん「日本人にとって『下着』というと何か『言ってはいけないこと』のような扱いになっている。まだまだオープンにできなくて、下着の教育が浸透しにくい状況だと思います」
「それがいま、フェムテック(※)など女性の体や健康に目を向ける社会に変化しつつあります。その流れに乗って、若い子たちに伝えたいと思うようになりました」
(※)フェムテック:女性特有の悩みをテクノロジーで解決しようとする取り組み
学生向けの講座は今回が2回目。そこで、今回の講座を開くにあたり資料の言葉選びを工夫しました。
「ファンデーション」などの表現は、「下着」「ブラジャー」といったキーワードに対する心理的なハードルを下げることが狙いです。
講座は、下着が「肌に一番近い部分で心身を支えるもの」として、「あなたを輝かせてくれる“魔法のアイテム”です」という言葉で締めくくられました。
教育現場から「娘の父親」として
参加者の中には、生徒だけでなく、頷きながら聞き入る男性の姿もありました。田島さんと共にこの講座を企画した村井孝年(むらい たかね)教諭です。
熊本マリスト学園 村井孝年 教諭「学校はもともと男子校だった(※)ので、女性に関する取り組みについては弱い部分がありました」
(※)熊本マリスト学園中学校・高等学校は2000年度から共学化
学校として「女性のための取り組み」を進めるきっかけを作りたいと思ったものの、実現には時間がかかったといいます。
村井教諭「教育現場では第一印象や前例の有無で『イエス』『ノー』が決まってしまう。そこを(校内で)理解してもらうことが苦労しました」
自身も小学3年生の娘がいる村井教諭。ひとりの父親の立場から『女性ならではの変化』を理解したうえで、家庭内のコミュニケーションにつなげたいと話します。
村井教諭「これから思春期を迎える娘は、父親には話しにくいことも出てくるでしょう。だからこそ自分は『ちょっと遠く』から、母親と一緒に変化に対応できれば」
子どもたちだけではなく父親も含めた周囲の大人にも知ってほしいと、『下着教育』の広がりに期待をしています。
「特にシングルファザーの方が娘と関わる場合、苦労すると思う。それが少しでも解消できれば良いですね」
「相談できない」「恥ずかしい」子どもたちにどう伝える?
「人に相談できない」と悩むこともある子どもたちに向けて、家庭ではどのように「初めてのブラジャー」について伝えればいいのでしょうか。
田島さんは「自分の経験を娘に伝える」ことを心がけていたと言います。
田島さん「自分の経験を元に『何かコリコリしたり、ちょっと触れたりしただけで痛たかったもんね』『もしかしたらブラジャーを付けるタイミングかも』と、自分をオープンにすることがコミュニケーションでは大事です」
一方、中学生たちからは「専門店に行くのは恥ずかしい」という声が上がっていました。
そうした中、ワコールの一部の店舗では販売員とマンツーマンではなくセルフで「3Dボディスキャナー」を使って計測できるサービス『SCANBE(スキャンビー)』も設けています。
また、ワコールでは高校生や成人女性に向けた講座も行い、学びの門戸を広げています。女性の心身を守るため、子どもだけでなく周囲の大人も正しい知識を持つ『下着教育』の試みが、広がりつつあります。
==========
上地朋子さん
ワコール コミュニケーションデザイン部
1999年入社。一男一女2児の母。
ワコールが保有する成長期のからだの変化やエイジング研究のデータをもとに下着の基礎知識や選び方など情報発信を担う。
==========
==========
田島完佳さん
SUNLEZAN(サンルレザン) 代表
女性用下着の販売を行う傍ら、2008年から下着のフィッテイングアドバイザーとして活動。10代から80代までの1500人以上の女性の体の悩みを聞く。
==========
