「政治と経済は両輪。そして官民一体で日本の再生を図る時だと思います」とは某中堅政治家の言葉。

 危機感を共有する人たちは、政治、経済の領域に必ずいる。過去と現在、そして未来をつなぎ、また国と国をつなぐ役割を今の日本は背負っている。国力の基礎作りを担う経済人の役割もまた重い。


高い志で挑戦を!

「高い志を持ち、世の中のためになると思ったら、直ちに行動を」─。

 稲盛和夫さん(京セラ創業者)と一緒に『第二電電』(現KDDI)を立ち上げ、イー・アクセス(現ワイモバイル)などを創業した千本倖生さん(1942年=昭和17年生まれ)は今、「起業家よ、出でよ!」と若い世代にメッセージを送り続けている。

 現在は保険会社「アシュラント・ジャパン」の会長を務める千本さんだが、児童虐待にあった子どもたちを救う活動に従事したり、ボランティア団体への寄付活動も行っておられる。

 先日も、母校・京都大学に〝3億円〟の寄付をされた。聞けば、『善の研究』で知られる西田幾多郎の研究を支援するためだという。

 京都は、〝哲学の道〟でも知られ、仏教や哲学の研究が盛んな土地柄。しかし、近年は欧米で西田哲学が強く見直されているのに、本家の日本では先細りなのが現状。

 京大関係者の憂いを聞き、千本さんは私財を提供することにしたのだという。「稲盛さんにしても、生きる上で、また経営する上でも、心の基本軸、つまりは哲学が不可欠と日頃思っていましたので」と千本さんは語る。

 こうしたドネイション(寄付)が広がるのは結構なことで、経済人の役割と使命も広がる。


失敗を恐れずに挑戦を

 その千本さんが、これから日本の国力を高めていく上で必要なのは、「半導体、AI(人工知能)、GX(グリーントランスフォーメーション)、そしてアントプレナーシップ(起業家魂)の4つです」と強調される。

 日本の半導体は1980年代から90年代、世界シェアの半分近くを占めるほど強かったが、日米貿易摩擦の関係もあり、米国からの〝圧力〟を受け、萎縮していった。

 台湾のTSMC(台湾積体電路製造)や韓国のサムスン電子などに追い抜かれ、今は〝半導体ニッポン〟の面影はもう無い。現在は、半導体復活を目指して、TSMCを誘致し、熊本に大規模半導体工場を建設中だ。

 しかし、熊本で作る半導体は12ナノ(ナノは10億分の1)メートルレベルで、最先端の2ナノメートルからは「10年遅れの水準」といわれるから、これからが正念場だ。

「TSMCの創業者モーリス・チャンにしろ、起業家精神旺盛な人。1人のリーダーがいれば、あれだけの半導体産業をつくっていける。日本ももっと見習うべきだと思います」と千本さん。

 日本にも若きアントレプレナーはいる。「失敗を恐れずチャレンジし続けてほしい」と、若者を叱咤激励する千本さん。人づくりは国づくりに直結する。