「ジビエ鹿肉バーガー」1個840円…ロッテリアが高級バーガーを続々売り出すワケ

■コロナ禍でもハンバーガー市場は好調を維持
コロナ禍で飲食業界が軒並み厳しい状況に立たされているなか、ハンバーガー市場全体は伸長している。

富士経済調べによると、2018年の売上は6780億円に対し、2020年は7431億円と約110%の増加が見られる。緊急事態宣言による店舗休業や時短営業の時期があったものの、身近な日常食として認知されているハンバーガーは堅調な需要を維持した。また、他業態と比べてインバウンド減少や時短営業の影響はあったものの、ドライブスルーに加えてテイクアウトやデリバリーの利用ニーズが増加したことで、市場全体の売上拡大に寄与したのだ。
ハンバーガー大手3社のうち、マクドナルドとモスバーガーはコロナ禍でも2桁成長を遂げている。一方、ロッテリアもデリバリーやテイクアウトなどの新しいチャネルを開拓しながら攻勢をかけている。これまでは店内喫食がメインだったが、コロナ禍以降ではデリバリーやテイクアウト比率が増加し、収益構造が変わってきているそうだ。
しかし、緒方さんは「通常時と比べ、デリバリーにおける配達時の配送手数料やテイクアウト時に必要な容器の包材原価は利益率を圧迫し、顧客を新規開拓できなければ収益性の悪化に影響する。目下の課題は、イートイン比率を回復させることだ」という。
■2007年の「絶品チーズバーガー」が転換点
ファストフードの3大ニーズは「うまい」「早い」「安い」と言われている。
2000年代初頭はマクドナルドの「65円バーガー」を筆頭に、「ハンバーガー=低価格」というイメージが消費者に広まった。
そんななか、ロッテリアは2007年に単品で360円(当時※税別)の「絶品チーズバーガー」を発売。連日完売になるほど爆発的に人を呼んだ。

パティやバンズへのこだわりはもちろん、ファストフード業界では珍しいナチュラルチーズの使用など、従来の商品よりも高品質を追求したことでロッテリアの人気No.1商品へと成長した。2010年には、1977年に発売した人気商品「エビバーガー」をリニューアル。エビのプリプリ感を強め、タルタルソースの最終工程を店舗で行うようにした。その背景にはこのような考えがあったという。
「2007年以降、ハンバーガーづくりの原点に立ち、ロッテリアを象徴する商品づくりを心がけてきました。エビバーガーも絶品チーズバーガーも、節目に合わせてリニューアルを敢行してきており、もっとおいしく高品質で、消費者の満足度が高い商品を生み出すために、脈々と取り組んできました」(緒方さん)
■「高付加価値」「普遍的な価値」「トラディショナル」
ロッテリアは商品開発をする上で「高付加価値」「普遍的な価値」「トラディショナル」の3つのキーワードを掲げているという。
まず高付加価値とは、ファストフードの3大ニーズを満たす商品に加え、サービスや品質をより突き詰めた付加価値の高い商品も開発し、その価値に見合った価格で消費者に提供することである。
また、「思いきり口に頬張れ、美味しさを楽しめる」というハンバーガーの普遍的な価値も、商品開発をする上で大切にしているそうだ。
そして「トラディショナル」とは、ロッテリアの看板商品である「エビバーガー」と「絶品チーズバーガー」の提供価値に立ち返り、原点回帰の考えに則って新たな商品を生み出すことを表している。
■「トラディショナル」を体現する「ごはんバーガー」
これら3点を代表する商品の一つが、2021年10月から期間限定で販売している「ロッテリ屋食堂 和風ごはんバーガー」だ。ロッテリアの「トラディショナル」である、「エビバーガー」と「絶品チーズバーガー」の具材をライスバンズで挟んだものである。値段も単品で510円、ふるポテセットは917円と高価格帯で打ち出しており、まさに“高かろう良かろう”を体現している商品と言えるのではないだろうか。

「『ロッテリ屋食堂 和風ごはんバーガー』は、新規顧客開拓のほか、日中に来てくださるお客様に、夜の時間帯にも店舗に来ていただければと思い、開発した商品です。コロナ禍で減った店内喫食の機会を増やすきっかけになればと考えています」(緒方さん)
加えてこの商品には、ロッテリアが展開するフードコート事業でのノウハウも生かされている。実は、しっとりしたご飯の上に海苔を乗せるのは簡単ではない。これは「ラーメンに海苔を乗せる」という、ロッテリアがフードコート事業で展開している「横浜八景楼」(ラーメン業態)でのノウハウを応用することで、実現できたというのだ。
フードコート業態では当たり前に使われる食材や調理法でも、ハンバーガー業態に置き換えることで斬新な商品に応用できるというわけだ。
■「ジビエ鹿肉バーガー」を全国の店舗で発売
さらに、2016年から展開する「ジビエ鹿肉バーガー」も、高付加価値、高価格帯路線の代表的な商品だ。

ロッテリアは2016年から、北海道産のジビエ「エゾ鹿」を使用したご当地バーガーを、北海道内限定で販売しており、2019年からは全国100店舗超で取り扱うようになっていた。
そして今年9月に「ジビエ鹿肉バーガー(エゾ鹿ラグーソース)」として、初めてロッテリア全店舗にて数量限定で発売したのである。11月29日には第2弾として、「ジビエ鹿肉バーガー(3種きのこコンフィと北海道チーズ)」(単品840円)を同じく数量限定で発売した。

■ロッテリアの店舗数だから、ジビエが扱える
他社が使わないジビエを商品に取り入れられた理由は、ロッテリアの企業努力にて販売チャネルを開拓し、ジビエを確保できるようになったのが大きいという。
これまではジビエを取り扱う処理施設や製品加工工場が少なく、安定した販売流通を実現できない状況だった。だが、2018年に農林水産省が制定した国産ジビエ認証制度で認証を取得した食肉処理施設が増えたことにより、食材として安心な国産ジビエを調達しやすくなった。
こうした状況と、北海道での限定発売の経験から得たジビエの利活用方法や製品加工工場との連携などが追い風となり、販売網を形成することができたわけだ。
「『ジビエ鹿肉バーガー』は他社とは差別化が図れている商品だと思っています。食べ応えがあるので男性に人気ですが、高タンパク・低カロリーゆえヘルシー志向の女性のお客様にも好評いただいています。持続可能な生産消費というSDGsの観点に立ち、今後もジビエ肉を使ったハンバーガーの商品を展開していく予定です」(緒方さん)
加えて、店舗数の規模感も功を奏した。
国内においてマクドナルドは約2900店舗、モスバーガーは約1250店舗に対し、ロッテリアは約370店舗と数では及ばない。
しかし、「ジビエ肉を使ったハンバーガーを全店で販売できるのはロッテリアの店舗数でないと実現できない」と緒方さんは語る。店舗拡大よりもユニークかつ高品質な商品開発に注力し、高付加価値の商品を提供する戦略をとっているのだ。
■首都圏や都心からイートイン比率の回復を狙う
まだまだ先行き不透明なコロナ禍のなか、ロッテリアは来年創業50周年を迎える。
高付加価値、高価格帯路線で勝負をかける同社は、今後どのような事業展開を考えているのか。
「デリバリーやテイクアウトが定着した状況下で、イートイン比率をいきなり戻すのは難しい。まずは首都圏や都心部を中心に店内喫食を喚起できるよう、高付加価値の商品を投入していく予定だ」と緒方さんは話す。
「直近では、11月18日にクオーターパウンド(約113g)の100%ビーフパティを使用した『ロッテリア クラシックビッグ』3商品を発売しました。これは、2018年に発売し、好評を得ている『ロッテリア クラシックバーガー』をリニューアルしたものです。『ロッテリア クラシックビッグ クアトロチーズ』を期間限定の商品として展開するほか、お客様からご好評いただいていた『ロデオウエスタン』と『オリジナル』をレギュラーメニューとして展開します。ロッテリアでしか味わえない商品を訴求することで、来店喚起を図れたらと考えています。
また、来年に控える50周年に向けて、ご利用いただいているコアファンやこれからご利用いただきたい新規のお客様、そして直近でご利用頻度が少ないお客様に向けて取り組みを実施していく予定です。状況を鑑みながら新規出店も検討し、ロッテリアの商品をより多くのお客様に楽しんでもらえるよう、頑張っていきたいと思います」
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古田島 大介(こたじま・だいすけ)
フリーライター
1986年生まれ。ビジネス、ライフスタイル、エンタメ、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。
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(フリーライター 古田島 大介)
