JR東日本の東京近郊区間では、上野東京ラインや湘南新宿ラインなどで長距離を運転する列車がありますが、なかには始発駅の次が終点となるちょっと変わった各駅停車の列車があります。いったいどういう理由で運転されているのでしょうか。

長距離運転の路線に短距離運転の列車が

 JR東日本の東京近郊区間では、上野東京ラインの開業により熱海発前橋行き、相鉄との相互直通運転を開始した埼京線では川越発海老名行きというように、長距離を走る列車が増えています。しかし、起点と終点のふた駅だけという路線でもないのに「始発駅を発車したら次は終点」となる各駅停車が存在します。ここではそんな短距離運転の列車が走る区間を紹介します。

埼京線 新宿発池袋行き/池袋発新宿行き

 長距離列車も走る埼京線ですが、新宿と池袋の間を、双方向にひと駅だけ運転する列車があります。その列車は次の通りです。

■新宿発池袋行き(土休日運転)
 新宿 9時16分→池袋 9時21分

■池袋発新宿行き(平日運転)
 池袋 6時52分→新宿 6時58分

■池袋発新宿行き(土休日運転)
 池袋 6時55分→新宿 7時00分
 池袋17時32分→新宿17時38分

 乗車時間は5〜6分、運賃計算に使用する営業キロは4.8kmです。なぜこのような短距離列車が運行されているのでしょうか。


埼京線の池袋行き列車。ただし写真は2021年3月改正前に存在した新木場発の池袋行き(画像:写真AC)。

 埼京線・川越線(大宮〜川越間)や相鉄線内を走るJR東日本のE233系電車は川越車両センター(埼玉県川越市)に所属しています。しかしすべての編成が川越車両センターに置かれているわけではなく、一部の編成は池袋駅の隣、板橋駅の東側にある留置線に置かれます。

 新宿発池袋行きの列車は留置線に入るため、池袋発新宿行きの列車は留置線から出て、新宿駅到着後に折り返し大宮方面の列車として運転するためです。なお、平日の夕方に留置線から出る列車は回送で新宿駅へと向かいます。

京葉線ではふたつの区間に存在

 京葉線では、ひと駅だけ運転する列車が、ふたつの区間にそれぞれあります。

京葉線 西船橋発南船橋行き/南船橋発西船橋行き

 京葉線は東京〜蘇我間と西船橋〜市川塩浜間、西船橋〜南船橋間からなる路線です。西船橋〜市川塩浜間では東京方面との武蔵野線直通列車、西船橋〜南船橋間では南船橋、新習志野、海浜幕張方面との武蔵野線直通列車が運転されていますが、その中で、西船橋〜南船橋間のみを運転する列車があります。


武蔵野線で使われる209系500番台。京葉線の東京駅、海浜幕張駅まで入線する(画像:写真AC)。

■西船橋発南船橋行き(土休日運転)
 西船橋10時07分→南船橋10時13分
 西船橋21時20分→南船橋21時26分

■南船橋発西船橋行き(平日運転)
 南船橋19時28分→西船橋19時34分
 南船橋22時29分→西船橋22時35分
 南船橋22時58分→西船橋23時03分
 南船橋23時50分→西船橋23時56分

■南船橋発西船橋行き(土休日運転)
 南船橋21時03分→西船橋21時09分
 南船橋22時30分→西船橋22時36分
 南船橋22時59分→西船橋23時04分
 南船橋23時50分→西船橋23時56分

 乗車時間は同じく5〜6分、営業キロは5.4kmです。

 南船橋発西船橋行きは、西船橋駅に到着後、折り返し新習志野行きとなって京葉車両センター(千葉市美浜区/習志野市)に入庫したり、西船橋駅からは翌朝始発の府中本町行きとなったりします。西船橋駅では東京方面からの武蔵野線直通列車とも接続するので、区間列車としての意味合いもあるようです。

 西船橋発南船橋行き、南船橋発西船橋行きとも、車両は武蔵野線用のE231系または209系500番台が使われます。

もうひとつの京葉線の区間は

 もうひとつは、海浜幕張発新習志野行きで、以下の列車です。

■海浜幕張発新習志野行き(平日運転)
 海浜幕張10時53分→新習志野10時57分

■海浜幕張発新習志野行き(土休日運転)
 海浜幕張10時14分→新習志野10時18分
 海浜幕張10時41分→新習志野10時45分
 海浜幕張13時14分→新習志野13時18分
 海浜幕張14時10分→新習志野14時15分
 海浜幕張21時42分→新習志野21時46分

 海浜幕張発新習志野行きの乗車時間は4〜5分、営業キロはわずか3.4kmです。


京葉線で使われるE233系(左)と209系500番台(右)(2015年11月7日、伊藤真悟撮影)。

 このうち平日の海浜幕張10時53分発と土休日の海浜幕張10時41分発の列車は、大宮駅から「しもうさ号」で海浜幕張駅に到着した列車の折り返しです。一方それ以外は、東京駅から海浜幕張駅に到着した列車の折り返しです。前者は武蔵野線用のE231系または209系500番台、後者は京葉線用のE233系または209系500番台が使われます。

 海浜幕張駅と新習志野駅とのあいだには京葉車両センターがあります。しかし出入庫線が敷設されているのは新習志野駅側だけ。そのため同センターに入庫する際にひと駅のみ運転されるのです。

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 現在、海浜幕張駅と新習志野駅とのあいだには幕張新駅(仮称)が2023年春開業予定で建設中です。新駅が開業すると、海浜幕張〜新習志野間では「始発駅の次は終点」の各駅停車は消滅することになります。