毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか。読書家が集まる本の要約サイト「flier(フライヤー)」で、5月にアクセス数の多かったベスト20冊を、同サイトの編集部が紹介する――。
写真=iStock.com/Chinnapong
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第1位:『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(堀内都喜子著、ポプラ社)
第2位:『食べる投資』(満尾正著、アチーブメント出版)
第3位:『10分読書』(吉田裕子著、集英社)
第4位:『人は、なぜ他人を許せないのか?』(中野信子著、アスコム)
第5位:『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(ケリー・マクゴニガル著、神崎朗子訳、大和書房)
第6位:『ペスト』(アルベール・カミュ著、宮崎嶺雄訳、新潮社)
第7位:『仕事に使えるデカルト思考』(齋藤孝著、PHP研究所)
第8位:『リーダーとして覚えておいてほしいこと』(野村克也著、PHP研究所)
第9位:『交渉力』(橋下徹著、PHP研究所)
第10位:『ハック思考』(須藤憲司著、幻冬舎)
第11位:『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』(メアリアン・ウルフ著、太田直子訳、インターシフト)
第12位:『遅いインターネット』(宇野常寛著、幻冬舎)
第13位:『世界は贈与でできている』(近内悠太著、NewsPicksパブリッシング)
第14位:『リード・ザ・ジブン』(宇佐美潤祐著、東洋経済新報社)
第15位:『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(山本康正著、講談社)
第16位:『すみません、金利ってなんですか?』(小林義崇著、サンマーク出版)
第17位:『人は話し方が9割』(永松茂久著、すばる舎)
第18位:『信長家臣明智光秀』(金子拓著、平凡社)
第19位:『無形資産が経済を支配する』(ジョナサン・ハスケル、 スティアン・ウェストレイク著、山形浩生訳、東洋経済新報社)
第20位:『座右の書『貞観政要』』(出口治明著、KADOKAWA)

※本の要約サイト「flier」の有料会員を対象にした、2020年5月の閲覧数ランキング

■どうやったら「午後4時」に仕事が終わるのか

堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社)

今月の第1位は、『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』です。先月の第7位から、さらに順位を伸ばしました。

コロナ禍を受けて、これからの働き方について考えることが増えた方も多いはず。フィンランドでは、新型コロナウイルスが流行する前から、ほぼ全員が午後4時に仕事を終えており、在宅勤務の割合は3割の高さです。しかも父親の8割が育休を取得しており、それでいて一人あたりのGDPは日本よりも高い。

「そんな短い就業時間で大丈夫なのか?」と気になった方は、ぜひフィンランド流の働き方の真髄を本書から学んでみてはいかがでしょう。もちろん国の制度や文化に違いはありますが、日本の進むべき方向性が見えてきます。「残業をするのが普通」「趣味より仕事を優先」という風潮に一石を投じてくれる一冊です。

■食は「健康という資産」を作り上げる投資

満尾正『食べる投資』(アチーブメント出版)

第2位は『食べる投資』です。「人生100年時代」といわれる今、ただ長生きするだけでなく、肉体や精神を健康に保ち続けることが求められています。そのためには、良質な栄養を取らなければいけません。

著者である満尾正氏は、ハーバード大学の外科代謝栄養研究室で研究員を務め、現在は日本初のアンチエイジング専門病院を経営しています。本書では、「食こそが栄養の基盤であり、栄養知識を身につけて実践することが『健康』という『資産』を作り上げる『投資』になる」という考えにもとづき、最先端の栄養学の知見が語られています。

どういう栄養素を取ればいいのか、あるいは取ってはいけないのかを意識するだけで、日々のパフォーマンスは大きく変わるものです。健康に長生きしたい方にはもちろん、ビジネスの最前線で活躍したい方にも必読の内容といえます。

■「1日10分の読書」で変化が訪れる

吉田裕子『明日の自分が確実に変わる 10分読書』(集英社)

第3位『10分読書』は、「本は読みたいけど、読む時間がなかなか取れない」「読んでもどうやって役立てればいいのかわからない」という方におすすめの一冊です。国語講師である著者の吉田裕子氏が提案するのは、「自由時間のうち10分間を読書にあてよう」というシンプルなもの。たった10分、されど10分。読書を継続していくうちに、もっと深い本の読み方ができるようになるでしょう。

時間・お金のどちらの面から見ても、読書はきわめてコストパフォーマンスの良い自己投資です。その恩恵を受けるため、まずは1日10分の読書を取り入れてみませんか? 読書に対してハードルの高さを感じていたり、なかなかこれまで読書習慣が定着しなかったりしても、これを読めば本がさらに読みたくなってくること間違いなしです。

■SNSで「正義中毒」になる人々

中野信子『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)

続いて、4位以下から、注目の書籍をご紹介します。

まずご紹介したいのが、第4位『人は、なぜ他人を許せないのか?』。インターネットの普及により、私たちは世界中の人々と簡単につながれるようになりました。しかし、SNSでは言い争いや炎上が絶えません。

なぜ至るところで「炎上」が起きるのか。脳科学者である著者・中野信子氏は、その原因として「正義中毒」を挙げます。他人に「正義の制裁」をすると、快楽物質であるドーパミンが放出され、さらに罰する対象を探すようになる。しかも誰にだって起きうるというのです。

どうすれば「正義中毒」に陥らずに生きていけるのか。SNS全盛期の時代だからこそ、お読みいただければと思います。

■「ストレス=悪」と思い込むのは損

ケリー・マクゴニガル『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(大和書房)

続いてご注目いただきたいのが、第5位『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』。新型コロナウイルスによる環境の変化から、心のバランスを崩してしまっている方も少なくありません。

心の健康を保つための第一歩は、正しい「ストレスとのつきあい方」を知ることです。ベストセラーとなった『スタンフォードの自分を変える教室』でお馴染みの著者ケリー・マクゴニガル氏によると、私たちがストレスの悪影響だと思っていることの多くは、実はストレスを避けようとするせいで起きるのだそうです。

本書を読むと、ストレスとどうやって付き合えばいいのか、不安やプレッシャーをエネルギーに変えるためにはどうすればいいのかがわかります。ストレスを感じるのは、必ずしも悪いことではありません。「最近ストレスが多い」と感じているのなら、この本が力になってくれるでしょう。

■コロナ禍を連想させる『ペスト』がランクイン

カミュ『ペスト』(新潮社)

最後にご紹介したいのが第6位『ペスト』です。1947年に発表された小説ですが、物語の設定とあらすじが、今回のコロナ禍の状況を連想させるとして、大きな話題になっています。

本書で描かれるのは、疫病と戦う人々が織り成す群像劇です。舞台は「194*年」のアルジェリアの商業都市、オラン。ペストが蔓延し、都市は完全にロックダウンされ、人々の往来も途絶えてしまいます。閉じ込められた空間で次々と死んでゆく人々。まだワクチンもできていないという状況の中、どのように振る舞うべきなのか。

単純に小説として読んでも非常に興味深いですが、現実のシミュレーションとして読んでも、さまざまな教訓を得られます。今の時代に、もっとも読むべき小説といえます。

今月は、先月第7位だった『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』が、最も多く読まれるという結果になりました。また『人は話し方が9割』(第17位)も、3カ月連続で月間ランキングに入っており、注目度の高さが伺えます。今後はどのような本が多く読まれるのか、引き続きチェックしてまいります。

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(flier編集部)