43回目の優勝を飾ったが…(写真/共同通信社)

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 九州場所千秋楽の翌日となる11月25日に開かれた横綱審議委員会の定例会合は、異例の長丁場となった。

「通常は15分で終わる会議が30分以上かかった。もちろん、議題は“白鵬の立ち合い”だと想像がつきました」(スポーツ紙記者)

 43回目の優勝を飾った白鵬だが、その相撲内容が場所中から問題視されていた。

「初日の北勝富士(小結)戦を皮切りに、立ち合いでの顔面へのカチ上げ、張り手を繰り返した。12日目の遠藤(小結)との取組では立ち合いで左を張った後に、顔面に右からエルボーのようなカチ上げをお見舞い。遠藤は鼻から流血し、土俵に崩れ落ちました」(同前)

 横審の矢野弘典委員長は会合後に「見苦しいという意見がほとんど全員(の委員)から出た」「協会からも指導をしてほしい」と指摘。ところが、協会は“お咎めなし”の姿勢なのである。

 広報部長の芝田山親方(元横綱・大乃国)は、「先生方からのご意見は承りましたが、これが(白鵬の)耳に入ると思う。白鵬には何もないです」と応じるのみで、「張り手をすれば脇が空く。対戦相手がその対策ができないのも情けない」と、むしろ他の力士に苦言を呈したのである。

 そうした対応を取る理由は、壊滅状態の大関陣にありそうだ。カド番ながら途中休場した高安は関脇に陥落し、豪栄道も来場所はカド番。9勝6敗で場所を終えた貴景勝も、左胸のケガの影響が心配されている。

「次の大関候補もいない。ガチンコが増えた影響ですが、協会が昇進のハードルを下げようにも、思惑通りに進まない。八角理事長(元横綱・北勝海)は同じ高砂一門の朝乃山(小結)に期待を寄せ、メディアもさかんに“今場所12勝なら来場所が大関取り”と報じたが、千秋楽で正代(前頭10)に敗れて11勝に終わった。大関に一番近かった関脇・御嶽海は6勝9敗と負け越した上に、12日目には星を伸ばしていた朝乃山に勝ってしまった」(ベテラン記者)

 ガチンコ相撲は星の潰し合いになるので、“大関候補づくり”に限界があるのだ。

「大関が1人もしくはゼロになると、番付表では横綱が大関を兼ねる『横綱大関』が置かれる決まりだが、そんな興行的な危機さえ現実味を帯びてきた。だからこそ横綱の白鵬と鶴竜には長く残ってもらうしかない。当面は白鵬の機嫌を損ねない方針ではないか」(同前)

 その結果、国技の最高位の品格が損なわれては、何の意味もないのだが。

※週刊ポスト2019年12月13日号