「日本にはAIのユニコーン企業がない。投資のチャンスがない」孫さん危機感
日刊工業新聞2019年7月19日
IPOに質的変化
新規株式公開(IPO)に質的な変化が押し寄せている。2018年の新規上場会社は90社で、最近20年のうち、最も多かった00年と比べると半分程度にとどまる反面、話題を呼んだメルカリの上場など、赤字でのIPOも少なくない。経営者には、投資家に対し、上場後の成長戦略を明確に示す“対話力”が問われているとも言えそうだ。
野村証券によると、ここ数年の新規上場は年間90社前後が続いている。00年に203社が上場して以降、07年まで年間100社を超えるペースだったが、リーマン・ショックの影響によりIPOは大きく減った。株価の反転と合わせてIPOが再び増加し、情報通信業やサービス業の上場が目立つ。
新興企業にとっては上場への追い風が吹く。初値が公開価格の何倍であるかを示す「初値倍率」をみると、公開価格の2倍以上の銘柄が最も多い。株式市場で需給が逼迫(ひっぱく)すると、初値が高騰しやすいためだ。人工知能(AI)技術を持つHEROZの場合、初値倍率が10倍を超えた。「AI活用の先に、どのような戦略があるのかを明確に示す企業の初値倍率が高い」(いちよし証券)という。
赤字企業の上場も17年、18年と2年連続で10社を超えている。注目を集めたメルカリも18年6月期が当期赤字だった。新規上場した企業の将来性を見込んで、投資家も受け入れているといえる。GMOインターネットを設立した熊谷正寿会長兼社長は「(手がける事業やサービスが)圧倒的な1位だと資金調達力がつく。勝つためにIPOすべきだ」と強調する。
IPOを支える証券各社も鼻息が荒い。18年度に25件のIPOを手がけたSMBC日興証券の桑内孝志第一企業法人部長は「スタートアップ(創業間もない企業)を発掘し、次世代を担う可能性を秘めたユニコーン企業として育てる責任がある」と強調する。市場や投資家は変化への対応力と先見の明を備える企業の登場を待ち望んでいる。
日刊工業新聞2019年7月4日
