西田敏行&塩見三省「アウトレイジ 最終章」振り返る 西田「理不尽さに痛烈な皮肉」
2017年に公開された映画「アウトレイジ 最終章」で圧倒的な存在感を見せた西田敏行さんと塩見三省さん。シリーズの完結編である同作は、関東最大の暴力団組織・山王会と関西の花菱会の抗争後、大友(ビートたけしさん)は、日本と韓国を牛耳るフィクサー・張会長(金田時男さん)の下で韓国へ。そんな折、取引のために韓国を訪れていた花菱会の幹部・花田(ピエール瀧さん)が、トラブルを起こし張会長の部下を殺したことで、激怒した大友が全ての因縁に決着をつけるべく日本に戻り…というストーリーです。
オトナンサー編集部ではこのほど、西田さんと塩見さんの2人にインタビューを実施。北野作品の魅力やヤクザ映画の意義、北野監督の印象について聞きました。
また北野作品に参加したい
Q.「アウトレイジ ビヨンド」から出演され、シリーズもついに完結です。2作続けて出演された感想をお願いします。
西田さん(以下敬称略)「北野監督作品には昔から出たいと思っていました。念願かなって1作だけでなく、最終章まで出られて好きな役を楽しませていただいたというか。感慨無量です。最終章と言わずまた北野作品に参加したいです」
塩見さん(同)「西田さんと同じで、この年になって北野作品に出ることができて役者をやって来てよかったです。西田さんの後をついていって、僕は役に徹することができました。西田さんや大杉漣さんと共演できてうれしかったし、この北野監督の2作品に出られたことは僕の中で誇りです」
Q.北野作品に出られる魅力はどんなところでしょうか。
西田「世の中に映画作家はたくさんいます。北野監督は映画を作りたいという純粋なパワーを持っていると同時に、いろいろな視点で映画を見ているなという感じがあります。映画の一つのセオリーに乗っかる形ではなく、独特の切り口で映画を切ってくる創造性というか、演じる側にも刺激をもらえて、創作意欲やモチベーションを上げてくれます。そういう世界観を監督が持っているので、役者たちもテンションが上がった中で芝居ができ、自分が思っている以上の演技ができます。僕はR指定の映画にあまり出演したことがないので、R指定の作品に出たいという思いがあり、制約がないというか、心の中のカオスをはき出すことができる現場です。演者としていい意味でのカタルシスを感じますし、会いたい、一緒に芝居がしたい人たちと仕事ができる空間を作ってくれるというのも北野作品の魅力です。監督が使いたい俳優を使っていて居心地がいいです」
塩見「前作の『アウトレイジ ビヨンド』で今までにない高揚と静けさが入り混じった撮影で、本当にここにずっといたいと思いました。今回は病気の後ということもありましたけど、なんとか映画の中で走り切ることができたので北野監督には感謝しかありません。R指定で男ばかりという面白さやすごさ、まだまだこれからも監督されると思うし、できれば私も出られたらと思います。こんな体になっても使ってくださって愛ですよね」
西田「衣装合わせの時は、僕も塩見さんも(体を患い)歩行が難しい状態でやっていたので、すごくリスキーだったと思います。そこで『役変わってもらいましょうか』とか『降りてもらいましょうか』と言われてもおかしくないのに、北野監督は『出てくれるなら本を書き換えてもいいよ』と言ってくださって。我々に対する愛だと勝手に思っています。そんな愛には応えたいなと思っていました」
Q.北野監督はどのような方ですか。
西田「アインシュタインとか天才と呼ばれるような人たちに会った時に感じる、どういう話題をしたらいいのか迷う空気感を持っている人です。そういう意味では本人はそういう意識がないだろうけど、緊張してしまう雰囲気はあります。でも、打ち解けてみればこんなにいい人なんだと分かると思いますね」
塩見「前作の時は『塩見さん丸刈りにしてくれない?』というひと言、今回は『じゃ塩見さんよろしくね』『サングラスかけるか』で、前回と今回合わせて3回しかしゃべっていません(笑)芝居がどうこう言ってくれる人でもなく、9時に集合して10時から撮影開始。現場は一発勝負で、北野監督が何もおっしゃらなくても、ただひたすら役で応えていけばいいと感じる人でした。リスペクトしています」
最終的にアンチバイオレンス作品
Q.現場の雰囲気はどのようなものでしたか。
西田「チャンバラごっこをやる直前の男の子たちのような興奮状態でした。芝居が始まる直前で控えてる時も高揚感だけが伝わってきて、これから面白い遊びを皆でやるぞ、という感じで、役に没頭して入るというより、これからどうやって遊ぼうかというような高揚感だけでした。敵対する役同士が、現場以外でもなるべく顔を合わせないみたいな子どもっぽい役作りはしていません」
塩見「クランクインで西田さんが猛烈なマックスな芝居をしてくるから、びっくりしました。『僕は(リハビリで)2年間芝居してなかったけど芝居ってこんなすごいもんだったんだ』と感じるくらい強烈でした。でも西田さんの芝居を見ていると『この人は俺の兄貴だ』と感じてきて、初日から芝居にしっかり入ることができました」
西田「出演者の年齢が高いので大人の現場でしたね。監督も熱中している時は寡黙でカメラの位置を指示して演者に任せてくれました」
Q.ヤクザ映画はだいぶ少なくなってきていると思いますが、今、ヤクザ映画を撮る意味や出演する意義を教えてください。
西田「深作欣二監督がやろうとしていたヤクザ映画の意識を北野監督は持っているかもしれませんが、それはあくまで形態であり、ヤクザ組織は、国にも例えられれば会社組織に置き換えられるとも考えられます。『アウトレイジ』は最終的にはアンチバイオレンスな映画だと思っています。暴力はこれくらい冷酷で、大上段に構えて常識的に訴えるのではなくエンターテインメントにしてみせるというところに監督の表現形態があるのではないかと思っています。一般の社会でも理不尽なことはあります。そういう理不尽さに痛烈な皮肉を込めて訴えているように思えます」
塩見「今回はヤクザの姿を借りて、人間のどこが恥ずかしくて醜いところなのかとかを表している。例えば相撲業界もアウトレイジっぽい。そういう意味では西田さんと同じようにエンターテインメントの力を借りた、普遍的な立ち位置の人たちがうごめいている欲望の映画だと思っています」
Q.共感されるキャラクターはいますか。
西田「僕が演じた西野に関して言えば、組長を素人に奪われ、追いやられ、保身の気持ちが強い男です。そういうところは共感しますね。皆弱いアホな人間やなと思いつつ、自分もそうかなと思って演じています。大友も最後はああなるわけですから。会社に追い詰められてどうにもならなくなり、義理を通して、自分が身を引くことで収めようとすることは、政界を見ていても、切られていく人間や、保身のためにうそをついて出世する人間もいたり一緒だと思います」
塩見「僕が演じた中田は、自分の中に仁義があり、裏切るにしても裏切らないにしても、自分も映画を見ている人も共感できます。そう描かれているんじゃないかな。西田さんが別のインタビューの中で『墓の前で西野はよくやったと先代に言われるだろう』とおっしゃっていまして、なるほどと思いました。僕も『中田よくやった。頑張ったな』と思いますが、中田は結構西野に振り回されてしまったなというところはあります(笑)」
Q.アウトレイジのファンの方にひと言お願いします。
西田「『アウトレイジ』を見てくれている方というのは非常に幅広く、映画が好きな、映画を愛している人たちだなと感じています。あなた方に見ていただき、あなた方が面白かったと言ってくれる作品は間違いなく面白い映画です。いっぱい見てくれてありがとう。これからも北野作品で活躍できる役者でいたいと思っています」
塩見「映画は映画館で見るのが基本なんですが、DVDで個人的に見るのもすごく味わい深い映画なので、ぜひ見てください」
