同族会社で「親子喧嘩」が起きる理由
■人生80年時代で親の再登板が容易に
親がいったん子に社長の座を譲ったものの、気が変わって再登板する「親復権型」の事業承継トラブルが後を絶たない。
昨年は、創業者である父と娘が経営権をめぐって争った大塚家具のお家騒動が大いに注目を集めた。上場企業ばかりではない。赤福餅で有名な和菓子店の赤福では、消費期限偽装問題で退いた父に代わって長男が経営の指揮を執っていたが、経営方針の違いで親子の対立が表面化し、2014年4月、長男が社長を解任され、母親が新たに社長に就任している。
どうして一度引退した親が再登板するのか。事業承継に詳しい長谷川裕雅弁護士は、次のように解説する。
「親が一代で会社を築き上げたたたき上げだと、本人が優秀であるだけに、子である後継者に物足りなさを感じるようです。それでも普通は温かく見守るものですが、いまは人生80年時代。引退しても元気があり余っているので、じっとしていられなくなって復権を画策するのです」
創業者は、親子の力関係をそのまま経営にも持ち込みがちだ。しかし会社は会社法によって、その運営に一定の制限が設けられている。親が復権を目論めば、子が法律を盾に取って抵抗し、思わぬ騒動に発展することもあるのだ。
■事業承継は「予防」に力を入れよ!
こうしたトラブルを避けるには、親側は、自分が復権したくなる可能性があるのなら、議決権ベースで株式の過半数を保有しておく必要がある。そうすれば、引退後も取締役や社長交代が意のままだからだ。しかし、現実には、相続税対策に注力するあまり、株式の保有比率に注意が払われないケースも多いようだ。
ただ、注目したいのは、親はかならずしも過半数の株式を保有しなくてはならないわけではないということだ。
「相続税対策で、自身の保有率を半数以下にして生前贈与を進めたほうがお得というケースもあるでしょう。ただその場合も、子に譲渡する株式を無議決権株式にしたり、比重株を導入して自分の保有株式に複数の議決権を持たせるなどすれば、議決権ベースで過半数を握ることは可能です」
無議決権株式などを採用するには、会社の定款を変更する必要がある。定款変更には、株主総会で3分の2以上の賛成がいる。事業承継を進めて自己の保有株式が3分の2以下になってからでは手遅れの可能性があるので、あらかじめ対策を取ったうえで事業承継を始めることも大切だ。
「事業承継トラブルを避ける予防策はたくさんあります。ところが、うちの親子は大丈夫だと過信して対策を取らず、トラブルが起きてから裁判所に駆け込む人が少なくない。健康を過信して、病気になってから慌てて医者にかかる人と同じ。事業承継も、予防という観点を持って早い段階で弁護士に相談することをおすすめします」
(文=ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=東京永田町法律事務所 代表弁護士 長谷川裕雅 図版作成=大橋昭一)
