【夢のカンプ・ノウへ】乾貴士が語るバルサ戦への想いと秘策
「カンプ・ノウでサッカーができるのは嬉しいですし、そこで何かを残したい。何か、やりたいですね」
10月25日、リーガ・エスパニョーラ9節のバルセロナ対エイバル――。
昨シーズンの3冠王者(チャンピオンズ・リーグ、リーガ、コパ・デル・レイ)と、財政破綻したエルチェの降格処分により1部に留まれたエイバルの対戦だ。実力的にも、経済的にも、そこには天と地ほどの差がある。
この試合、バルサはリオネル・メッシとアンドレス・イニエスタが負傷で欠場するが、それでも普通に考えればエイバルは10度対戦して一度勝てればいいほうだろう。日本にいた頃から憧れのバルサを追ってきた乾自身も、それは十分にわかっている。
しかし、そんな挑戦者としての立場は、乾にとって、エイバルにとって、むしろ好都合だという。
「僕らにとってみれば、失うものはないんです。バルサが強いのは分かっています。誰が出ても上手いし、強い。だから当たって砕けろという感じでいきたい。メッシとイニエスタには、むしろ出て欲しかったですね。なかなかやれる機会はないですし、目の前で見たかった。直接やるのは全然違うので」
過去にも、世界最高峰のプレーを実感したことがある。記憶に残っているのは、2013年のコンフェデレーションズ・カップで対戦したネイマールだ。
メッシ不在のバルサで中心になっているのが、まさにこのネイマール。ここ2試合連続で驚異的なパフォーマンスを見せており、さらにひと皮向けた感がある。
「ネイマールは日本代表でやりましたけど、うまかったです。ちょっと次元が違うんだなと……。バルサでやるくらいの選手だから当たり前ですけど、ボール扱いが全然違う。そういう風に、やって勉強できるというのもある。バルサ戦ではもちろん勉強だけじゃなく、自分のプレーも出したい」
世界のトップを体験するだけでなく、カンプ・ノウで何かを残す。そう語る乾の頭には、バルサ対策も描かれている。
「もちろん劣勢になるはず。ただ、ショートカウンターは効くと思う。ボールを失った直後のショートカウンターには、バルサは意外ともろい。サイドが空いているし、そこは狙いたいと思っています」
バルサが苦手とするのは、乾が分析するように、サイドの裏のスペースだ。ウイングはもちろんサイドバックも積極的に敵陣深くまで進入するため、格下相手でも1試合に何度かは必ずカウンターからピンチを招いている。
王者に潜む、一瞬の危うさ――。押し込むバルサにあって、右サイドバックのダニエウ・アウベスの裏にできるスペースを、同サイドの乾は突くことができるか。
「やってみないと分からない。やって肌で感じて、何かを吸収したいなと思います」
夢だったカンプ・ノウでのバルサ戦。待ちきれない様子で、目を輝かせた。
文:豊福晋
【著者プロフィール】
豊福晋/1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。

